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小澤メモ|NOSTALGIBLUE|思い出は青色くくり。

4 マイアイドル、グラント・ヒル。

そんなWOWOWで出会えたグラント・ヒル。
30年以上前になるWOWOWのNCAAの無料放送。グラント・ヒルは、このときまだフレッシュマン(1年生)で、線が細く、鼻の下に生やしたヒゲにも貫禄がなかった。父はアメフトの有名選手、母はヒラリー・クリントンと大学時代にルームメイトだったというサラブレッド。お育ちのよさがトラッシュトークしないプレイにも出ていた。言いかえれば、当時NBAで席巻していたアイザイア・トーマス率いるピストンズ(フィジカル系のロッドマンもレインビアもリック・マホーンもいた)や、カレッジでいえば、いかにもって感じのラリー・ジョンソンが大活躍していたUNLVのようなバッドボーイズな感じがまったくしなかった。品行方正をブリスターパックにした感じだった。言いかえずにそのまま評すれば、余分なフェイクもハンドルもしないで、クイックネスという身体能力だけでダンクにまで持ち込むスマートさ。現在主流のアスリートタイプのはしりだったと思う。

踏み込んでからが速い。
当時のゲストが、悪気なく(今なら問題になっていると思うけど、ほんとに悪意ないくリップサービスしてしまった感じだった)、「すごいサラブレッドなんです彼は。どこか白人みたいな黒人選手ですね」みたいなことを言っていた。グラント・ヒルを褒めたつもりだったと思うけれど、アナウンサーもうまく切りかえせていなかった。とにかく極東でのそんなミステイクは置いといて、彼は速さとしなやかさを武器にして、メキメキ頭角を顕していった。マイケル・ジョーダンのプレイ、とくに滞空時間が長いダンクがエアーなら、グラント・ヒルのそれはスリングショット(パチンコ玉のゴム拳銃みたいなやつ)のような威力だった。飛ぶというよりも、弾道って感じだった。

元祖的なミスター・エブリシング。
さらには、得点だけでなくリバウンドもアシストもうまく、空間把握能力も高かった(これを、今の言葉でいうなら、バスケIQが高いということか)。ときには200センチを超えるフォワードでありながら、ポイントガードまでこなしていた。今でこそレブロン・ジェームズなどがそのコンセプトを確立してくれたけれど、このときからミスター・エブリシングといえば、このフレッシュマンが代弁していくのだった。彼のプレイの質を見逃さないように画面に釘付けになっていたこちらはというと、182センチそこそこのくせにゴリゴリと体を当てながらシュートも肩もねじ込むゴリって青年隊タイプ。すべてにおいて雲泥の差を感じた。それは、絶望ではなく、あからさまに違いを突きつけられたからこその、爽やかな意気消沈だった。前途洋々なはずの高校時代にして、爽やかだけど果てしないほどの敗北を味わえたのだった。同年代ということもあったけれど、自分とは境遇やスタイルがまった異なるグラント・ヒルが好きになったのだった。ケニー・アンダーソン、ラリー・ジョンソン、ステイシー・オーグモン、グレッグ・アンソニー。クリス・ウェーバー、ジョワン・ハワード、ジェイレン・ローズ、そしてグラント・ヒル。彼らのNBAデビューから引退まで、もちろん見続けた。ちなみに、このうちの半分はNCAAを制したが、このうちの一人しかNBAのチャンピオンリングを持っていない。
(写真はトレーディンカードで、グラント・ヒルのインサートカードでのマイベストはHOOPS社の10ボックスに1枚のトリビュート)

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