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小澤メモ|SENTIMENTAL JOURNEYMAN|おっさんの旅。

2 おっさんの旅  辺境編 羅臼。

おいホタルまだ寝てろ。
中標津空港に着いて、急ぎTシャツの上に、コーチジャケットを羽織ったオッサン。いや、まだ足りない。その上にダウンジャケットを重ね着した。レンタカーをピックし、まずは世界自然遺産の知床国立公園のとっつき、羅臼へ向かった。中標津町から標津町と来て、根室とは逆の方角になる。オッサンに、さらに2人のオッサンが加わり、まさにオッ3という、こさぶいオッサンギャグも飛び出る3人組だ。根室と言っておきながら、羅臼を目指す。それもまた良しだった。3月下旬だが、まだまだ雪深い羅臼町には、羅臼漁港があった。漂う流氷が港の中まで入り込んでいて、そこに太陽が照射していた。美しかった。そして、とても冷たい色をしていた。ここが、あの映画『アフリカの光』やドラマ『北の国から 2002遺言』の舞台にもなった、スケトウダラやイカの水揚げを誇った漁港。付近には、吉岡秀隆さん演じるジュンくんがいた番屋も残っていた。

田中邦衛の話になってしまう。
そう考えると、『アフリカの光』や『北の国から 2002遺言』、どちらにも主演している田中邦衛さんの残り香というかその存在の影が羅臼のどこかに永久凍土となっているような気がした。果たして、田中邦衛さんのようなオッサンになれるだろうか。顔は少し似ていると思った。60年代の映画『若大将』シリーズ。主人公の加山雄三扮する若大将ばっかりモテて、田中邦衛さんのアオダイショウがいつもいつも引き立て役だったのが解せなかった。若大将と一緒になって、ヒロインだけでなくその他大勢までアオダイショウをバカにするのを見てイラッとした。60年代はまだ生まれてなかった。でも小学生の頃に見て、スポーツカーを乗り回して、なんでも持ってるアオダイショウがなぜ蛇のごとく忌み嫌われるのか。条件でいったら、かなりハイスペック学生だったのに。

アフリカの光。
その後の世相は、まさにアオダイショウのような男がもてはやされるようになるのだけど、田中邦衛さんは早すぎたということか。こちらオッサンは、アオダイショウどころか若大将(あくまでもアオダイショウが上位)にもなれないレスザンゼロだけど、とにかく、田中邦衛さんの素晴らしい演技と天然物のモミアゲに1票だった。話は逸れたが、真冬の羅臼のイカ漁はとてつもなく厳しかった。3日間続けて船に乗れば、若者だろうがその冷さで体を壊すほどだった。アフリカの光とは、文字通りに強い太陽光がまばゆい希望峰の先の海のことだったか。同時に羅臼の凍てつく海の先。そこに浮かぶようにして乱反射する陽だまりの暖かさを思い描いた青年の気持ちだったか。流氷が押し寄せ、青空を投影するどころかさらに冷たい鉛のような色に沈む羅臼の海。オッサンたちはその色の厳しさと美しさを体感した。ここに来たから、なぜ日本の北で、なぜアフリカの光というかがわかった。オッサン3人、長い時間ひたすらシャッターを切ったのだった。2
(写真は漁港を見下ろす高台にある羅臼国後展望塔にて/2019)

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