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小澤メモ|NOSTALGIBLUE|思い出は青色くくり。

56 スケーターとスニーカーとスケシュー その1。

どういったものをセレクトするかでわかる趣向。
スケートにガイドラインやルールはない。例えば、思い思いのスニーカーを履いてプッシュしていい。ただ、どういったものをセレクトするかで、そのスケーターの趣向がわかるし、そこにもスタイルがあるということ。そんなスニーカーのイメージというと、ジャンカルロ・エスポジートが真っ先に浮かぶ。なんだって? 誰だって? 58歳になるニューヨーカーな俳優なんだけれども、ソールジャンキーの方なら、ピンとくるのではないだろうか。彼は、ソールジャンキーでニューヨークニックス・ヒステリアのスパイク・リー監督作品の常連。とくに印象的なのは『ドゥ・ザ・ライト・シング』のバギン・アウト役だろう。キープ・フレッシュ、真新しいキックスをブラッシングしながらブルックリンを徘徊するその姿は、あるカテゴリーにおいては、スニーカーにこだわることがもっともオシャレなもので、それこそが自らのI.Dだと言えた。通りでスニーカーをうっかり踏んでしまった相手を罵倒し、ピザ屋の壁にイタリアン・レジェンドの写真しか飾られてないことに腹を立てる。常に足元を基準にして、たぎっている感じが面白い。

スニーカー俳優・ジャンカルロ・エスポジート。
個人的には、この『ドゥ・ザ・ライト・シング』よりも、ジム・ジャームッシュ監督のオムニバス『ナイト・オン・ザ・プラネット』のニューヨーク編、ヨーヨー役でいい味出してたジャンカルロ・エスポジートがスタライク。ブロードウェイに遠征した彼がイエローキャブをつかまえてブルックリンの我が家へ帰ろうとする冒頭シーン。凍てつく真冬のニューヨークの深夜、スーツじゃなくてストリート・スタイルなアフリカン・アメリカ人のヨーヨーがオーバーリアクションで手を挙げる。やっかいごとはごめんだと、乗車拒否を決め込むドライバーたちに、彼が言い放つ。「俺は透明人間か?」。そのときのカメラワークが秀逸で、セリフに合わせて足元のフレッシュで最新スニーカーがステップを踏んでいるところを映し出す。こちらからすると、「こんなにハイプなスニーカーを履いてる俺様をスルーするってか。どうかしてるぜ」、なんて言ってるような気がするのだ。ジャンカルロ・エスポジートが演じるニューヨークのストリートを闊歩するオッサン群像が、スニーカーを愛してしまった者たちのアイコンのようで、何回観ても微笑んでしまうのだった。

この靴が目に入らぬか?!
スニーカーを見てからジャッジしろ。このスニーカーが目に入らぬか?! 狂信的と言っていいほど、スニーカーに目がない者たち(とくに男たち)を、こちらは敬愛をもって、(すごいな。マネできないエモーショナルだ)と思い、微笑んでしまうのだ。スケート・シューズ、通称、スケシュー。比較的歴史の浅いこのカテゴリーにおいても、スニーカー流のスタイルがある。現在のスケシューには、インダストリーの全力が詰め込まれたファンクションを搭載したものから、ソリッドでひたすら見た目のかっこよさだけが追求されたものまで、ローテクとハイテクが群雄割拠している。たったの30年前は、明確にスケシューと謳ったものは存在していなかった。スケートのためだけにつくられたスニーカーはなかった。だから、みんな思い思いのスニーカーを履いてプッシュしていた。だから、そのセレクト具合で、スケーターの趣向がわかった。スケートしてると、消耗は激しく、ソックスが透けて見えるほどアッパーには穴があき、ソールはすり減っていくから、なかなか高価なものには手を出しづらい。

何を履いてスケートしていたか。
高価なのも覚悟でバスケットシューズ、しかもAIR JORDAN 1を履いてくるヤツはクールだったし、NIKEのエアフォースとかadidasのスーパースターやスタンスミスを履いてるヤツは、ライフスタイルからしてストリート感が漂っていた。ルックス以上に、デッキとの相性などにこだわって、ギャングスタ・スケーター、カリーム・キャンベルよろしく、Reebokのテニスシューズだったワークアウトを履いてたスケーターもいた。VANSは、そんな時代において幅広く支持されていたスニーカー・ブランドだった。個人的にはチャッカブーツが好きで、いろいろな色を履き潰していった思い出がある。スリッポンやチェッカーフラッグのハイカットなどもよく売れた。その後、90年代に入り、VANSはサンフランシスコが生んだスーパースター(後に自身のシューズブランドLAKAIを立ち上げる)のマイク・キャロルという逸材を得て、彼の名前を冠したシグネーチャーモデルを開発する。スケビの名作と謳われる1本『マウス』では、登場ライダーがほとんど彼のシグネーチャーを履いていて、この日本でも大流行、一大旋風を巻き起こすことになる。56

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