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小澤メモ|HELLO PANDA|パンダのこと?

19 彩浜2歳おめでとう。

あかちゃん、ハチミツ、あかちゃん。
パンダはひとつのことしか考えられないといわれる。そして野生のパンダは双子を出産した場合、1頭しか育てないともいわれている。これは長きにわたる生存競争の過程で、パンダなりに編み出した命を紡ぐためのものだったのかもしれない。それで、現在の飼育下のパンダにおいては、その特性を考慮して、双子を交互に授乳させている。その取り替えには、お母さんパンダにスペシャルフードのハチミツを与えて、それに夢中になっている(ひとつのことに夢中になっている)すきに行うという、匠の技を編み出したのだった。例えば、アドベンチャーワールドの桜浜と桃浜もそうやって、交互に良浜の母乳を飲んで、その度に良浜はハチミツかリンゴかをもらって夢中になったのかな。そんなことを想像すると、ニヤけてしまう。

映画『メメント』の上をいくパンダメンタル。
たしかに、そんな姿はかわいいのだけれど、たまにアングルを変えてみる。主人公が前向性健忘になってしまう映画『メメント』を見たときのゾッとした怖さ。映画では、主人公のレナードは、目の前で起きたことの記憶が10分しか保たない。だから、彼は大事なメモはポライド写真に撮ったり、刺青で残したりして、なんとか自分の正気を維持しようとする。それでも、どんどんパニックというか現実と感情が乖離していってしまうのだった。誤解しないでほしいのは、パンダがそういった症状とか、以前にも(かわいいという意味で)何度か書いてきているアスペに似たところがあるというような、そんなふうにパンダを決めつけたいんじゃない。それにパンダは、スタッフの声やあかちゃんのことを忘れてしまうことはないし、アドベンチャーワールドでおこなれていたパンダラブ・ツアーというアトラクションでは記念撮影やエサやりの順序をちゃんと覚えてる。永明などは、高度な採血にだってちゃんと応じたりと学習能力が高い。なにより、「これ、おいしくない」と一度放った竹のことを忘れて、今度はそれをムシャムシャ食べはじめることがないほど、舌の記憶?が確かで、グルメだったりする。(あ、桜浜は結局食べてしまうときもあるね。マイペースで食いしん坊だから。かわいいな)。

やっぱりすごいな、パンダ。
とにかく、自分だったらパニックになるなと思った。10分前の記憶がなくなってしまうなんて、どうしたらいいのかわからない。前向性健忘とはまた違うのだけれど、例えば、それぞれが別々になった日、昨日まで外に出たら寄ってきてくれたはずの桃浜がいない桜浜のこと。だけど目の前の竹を食べていたら、いつのまのかそれが日常になった。そして、さっきまで小さな小さな彩浜を抱きしめていたはずなのに、ハチミツなめてたら……。あれ、あかちゃんは?ってなる良浜のこと。のんびりしているように見えて、環境や周囲の変化が突然にあって、それでも適応していくパンダたち。それは、映画『メメント』を見ただけで、ゾッとしてパニックになる自分よりもよっぽどたくましいというかすごい。とても小さかった彩浜もまた、2020年8月14日に2歳になる間に、お母さんからの独立、ブリーディングセンターからパンダラブへの引っ越し、そして抱っこしてくれたスタッフたちからの独立など、いろいろな変化があった。

彩浜、誕生日おめでとう。
記憶に残っていることも、何かに夢中になっている間に霧散してしまったことも、すべてが自分の知らないところで変化していっても、元気に立派に大きくなっている。14日、アドベンチャーワールドが催してくれた『彩浜のオンライン誕生会』を眺めながら思った。スタッフ特製の(氷と竹でつくった)バースデーケーキを夢中になって破壊して(堪能して)、それから散らかったケーキのことを放ったまま、新しい竹をムシャムシャしていた彩浜。その姿は、みんから社長と呼ばれるにふさわしい堂々としたものだった。立派なパンダだった。いろいろと大変な時代で、ほんといろいろ考えてしまう日々だけれども、パンダのかわいいたくましさ(やさしいサバイブ力)を改めて見習っていこうと思った。そして、とても小さかった彩浜が立派になって、本当に嬉しかった。おめでとう、彩浜。19
(写真は独り立ち前のあかちゃんからキッズへ成長中だった彩浜/2019年)


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