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小澤メモ|SENTIMENTAL JOURNEYMAN|おっさんの旅。

4 おっさんの旅  辺境編 北方民族博物館。

羅臼から網走へ。
羅臼に1泊後、流氷を眺めながらさらに北へ向かった。このオッサン辺境の旅の当面の目的地は根室だった。しかし、またも離れていった。網走というと、高倉健さん主演の映画『網走番外地』。それと、小学生の頃に行った愛知県犬山の博物館・明治村に展示されてた網走監獄の寒々しい記憶。それだけだったら、網走まで行かなかったかもしれない。3月下旬は、まだ羅臼方面から網走方面へ往来する道路は閉鎖されているものもある。それでも、今回、よし行ってみようと思ったのは、網走には北海道立北方民族博物館があるのを知ったからだった。そして、網走駅近くの大広民芸店でしか買えないセワポロロという福を呼ぶ木彫りのお守りを一目見たいと思ったからだった。

マサルとセワポロロ。
写真集『AINU』(丁寧に撮影を積み重ねた写真作品集だけど10年後には貴重な記録本としても評価されると思う)の著者・池田宏さんと親交が深い、オッ3のひとり田附勝は、網走市に入ると3割増しで元気になって、マシンガントークが続いた。一体全体、それまでも、彼はホッサマグマ以北がテリトリーな感じがしないでもなかった。とにかく、彼の行動力と知識力を伴う、ド直球な撮影欲が好きだった。初めて訪れた網走の空はスモーキーで雪を降らしていた。海も鉛色に深く沈んでいた。でも、とても静かで穏やかだった。高倉健さんたちの劇中のドンパチ音はまったく呼び起こされなかった。北方民族ウィルタ族が作った木彫り人形を元にしているセワポロロ。それは、この街の雰囲気と同じ静かで穏やかな表情をしていた。お店にあったいろいろセワポロロをゆっくりと全部見て(あいさつして)、一番小さいやつを買った。

ミチオさんとワタリガラス。
北方民族博物館に到着するというとき、アラスカの大自然を記録しカリブーとともに旅をした写真家の星野道夫さんのことを考えていた。彼の著書『旅をする木』は、G.O.A.T.な1冊だ。本がかけがえのない友だちになりえる。それは、まさにこのような本だと思った。そんな星野道夫さんがいたアラスカと北海道、網走や知床は、北方民族文化の見地で考えると実は近かった。オホーツク海の先、グリーンランドや北欧からアイヌを含めた北方民族文化とオホーツク文化。この間を行き来していたのは文化だけではなく、星野道夫さんも追い求めていた幻の鳥、ワタリガラスも自由に行き来していた。数多くの貴重な展示物には、ワタリガラスを象ったシルクスクリーンや仮面があって、陸続きではなくても、この北方の凍てつく大地と大地が呼応していたことを物語っていた。網走の小高い丘の上に静かに佇むようにしてある北方民族博物館は、そんなことを教えてくれるところだった。4
(写真はワタリガラスの仮面/2019)

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