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小澤メモ|HELLO PANDA|パンダのこと?

14 パンダのボツ写真1枚。

顔がきれてる。
たとえば、この1枚。一番の見所のつぶらな瞳が完全にぶった切れてしまっている。これはトリミングしたわけじゃない。ピントもきてない。グラビア写真としては、落第だろう。実際、拙著『HELLO PANDA』シリーズに掲載してない。最初の粗いセレクトの段階ではじいたのを覚えている。だからって、この写真が何も情報を所持していないかというとそういうわけじゃない。それにかわいくないかというと、かわいい。雑誌のエレメントになる写真や絵や文章は、受け手の好みがいろいろ分かれるもの。あと、どれくらいの濃度(思い入れとか)で手に取るかでも変わってくる。なので、100人いたら100通りの感想がある。と、大げさかもしれないけれど、思う。

この1枚でもベラベラと。
で、この100点満点で言ったら12点の写真。決してページにすることがないけれど、もし、この写真について何も話せなかったら、「この先5年はパンダに会いに行けなくなります!」と、撮影した中田くんに言われたとしたら。まあ、こちらはベラベラと喋り出すだろうな。まずは、この写真の説明をする。「このときいたのは1頭じゃなくて2頭のパンダ。それがわちゃわちゃと絡みはじめて、フゥっ、フゥっっていう息遣いが聞こえてくるほどヒートアップしてきたところ」。「その様子を見て、飼育スタッフが(パンダ用の)ビスケットを2頭に向かって投げ入れた。そうすると、クールダウン。パンダは、おやつのことで頭がいっぱいになる。それで自分の前にポトっと落ちたビスケットを手にとった」。「においを確認して、さあ、いただきますっていうときに、手前にいた1頭がそのビスケットにチャチャを入れようとしてきたのをガードしてる」。

もふもふとした頬の感じ。
ということで、この1枚に写っているのが双子の妹の桃浜で、写っていないけれどすぐ手前にいる(はず)のが姉の桜浜。写真のように、頬にファーみたいなのをつけてるような、もふもふっとをしているのが桃浜の特徴のひとつ。それに情報的には、パンダならではの手首のこぶのような骨がまるっと写っている。見れば見るほど、不思議な球体のようで興味深い。これがあるから、竹などをつかんで食べることができる。そして、この写真について、中田くんに一番言いたいこと。それは、「パンダは自分が食べているものを取られそうになるとき、食べることを続けながら、手や足をつかて、こっちにこないでとガードする。総合格闘技でマットに寝ながら足を広げて、立っている相手にマウントをとられないようにガードしている感じ。そのかわくてやさしい版というか。だから、このときの桃浜の写真には、右手に食い気というオフェンシブさを、左手に(桜浜やめて)というディフェンシブさを、あわせもったパンダならではのかわいさが写っていると思う。ピンボケより、せめて広角レンズのときに撮れたらよかったけども!」と、いうこと。そんなことを思ったら、今すぐまた会いに行きたくなる。そんなサブカットな1枚の話。14
(写真は関接飼育ながらまだ双子は一緒にいた時代の桃浜/2017年)

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