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小澤メモ|POPCORN MOVIE|映画のこと。

14 映画とY足しな話。

映画。ではなくシャツのはなし。
大好きな映画の1本、『ザ・コンサルタント』で一見しがない田舎会計士だが裏の顔を持つ男を演じたベン・アフレック。同じシャツがズラリとクローゼットに並ぶシーンを見て、本作から遡ること30年前の『ナインハーフ』のミッキー・ロークを思い出した。アスペルガー症候群など障害や性癖的な問題にスケッチーにかかわってくるので、なんとも言えない部分はある。しかし、シャツへのこだわりはこうであってもいいくらいだと個人的には思っている。ガス・ヴァンサント監督作品『追憶の森』。自殺を考え、富士の樹海、青木ヶ原にやってきた主人公のアーサー(マシュー・マコノヒー)。“So so(まあまあとか、ほどよいとか)”な嫌味のない大人っぽさは、老舗ブランドのライトブルーのボタンダウンシャツが物語っている。樹海の不気味さ、それが不謹慎だが美しいシャツのシルエットや衣擦れをより引き立てていた。

クレリックシャツといえば、この映画。
ガイ・リッチー監督の映画『スナッチ』は、濃いーキャスト陣それぞれの個性に合わせたシャツとスタイリングを楽しむことができる。ザ・ブリティッシュ・マンって感じのチェスター・コートにクレリックシャツのターキッシュ(ジェイソン・ステイサム)や、粗野でクレイジーなミッキー(ブラッド・ピット)のギリギリ・アウトな着崩し方とか、ボリス(ラデ・シャルベッジア)のダブルのスーツとアバンギャルドな黒シャツなど、シャツ的な見どころが多い。だから、視聴2回目以降は、衣装デザインを担当しているヴェリティ・ホークスのことが気になってしまうほどだ。さらには、端役の連中も侮れない。スリーピースで決めてるフランキーに、ギャングのボスのブリックトップとその手下たちのレザー・ジャケットにシャツという、ただのオヤジなスタイルすらいい感じにみえてしまう。冬支度で、どんなシャツを着るべきか迷えるオッサンには、この映画を一度サンプリングしてもらえたらと。

映画とシャツがバチコンなそれぞれのタイトル。
『ブルース・ブラザーズ』は、オープニングのジョリエット刑務所のシーンからすでにおもしろカッコいい。出所後は、白シャツ以外は、スーツもネクタイもサングラスも何もかもが黒という出で立ちがまたいい。シャツを着た踊れる太っちょ、ジョン・ベルーシ以前以後で、そっちの体型に対する印象が180度変わってしまった。1960年代のロンドンのモッズシーンを描いた『さらば青春の光』。ロックバンド、ザ・フーの音源やロックスター、スティングのキャスティングもさることながら、主役っぽくない主役のジミーの超タイト・シルエットへのこだわりが印象的。これ以上は無理だという仕立て屋に、もっとツメれるだろと迫るジミーがいい感じ。

映画が教科書。
本が友だちだって言い切れる人間はすてきだ。仮にその人が人生で人間の友だちがすこーししかいなかったとしても、心底そう思う。それと同じで、映画が友だちだって思う。もっといえば、レディーファーストのマナーやテーブルマナー、マッチのこすり方やコイントスの投げ方などなど、映画が成長過程のこちらにいろいろなことを教えてくれた。自分のDNAの大半と、バファリンの半分は、(ママの優しさじゃなくて)映画でできているに違いない。そして、オッサン時代真っ只中の今、シャツについては、『ザ・コンサルタント』のウルフや『マイレージ、マイライフ』のライアンのように、気に入ったジャストサイズの同じシャツを同じ折り目でストックしていたい。その日が寒かろうが暑かろうが、まず着るのはシャツ。いつまでもお若いですね、って言われて喜ぶようなオッサンになる気はない。例えば、シャツをはだけさせて元嫁のマドンナに寄ってきたパパラッチをぶん殴ってしまう20代のショーン・ペンより、『クロッシングガード』でメガホンを取った、渋いオッサンな彼のシャツ姿の方がかっこいい。そんな感じ。というだけの話。14
(写真はシャツを完全に自分の肌にしてしまっている、敬愛するパリのOG/2019年)

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