🏯 【最新】 明智光秀の心層と本能寺の変の真相 【後編】

■前回のおさらい■

法華寺事件の真相というのは、1582年3月の甲州征伐の所領分配で、かつて在住していた明智由緒ある明智庄が絡んでの所領を巡って、信長が武功もない森蘭丸に領地をすべて与えてしまった、その不満から信長に訴えたが逆鱗に触れて、光秀は信長に恨みを持ってしまったという背景があったという事です。また本能寺の変後、光秀と親しかった細川藤孝らを味方につけようとした、文書の内容で、"信長父子の非道は許せない"と光秀の心境を綴った光秀の心層はまさに、この法華寺で起こった事を言いたかったのです。✔︎この時、何故、信長父子に向けられたのか理由もあります。信長から家督を譲られた嫡男である織田信忠軍に森長可らが編成されていたからです。

それらが前回、前述したように所領分配後での法華寺の掟書に信長が、法華寺の定書に、✔︎所領の境界が入り✔︎所有権について論争することがあっても✔︎お互い恨みを持ってはならないと厳しく言っていました。

〜 信長公記から 所領分配後の定書

一、知行主が欲張るから家臣たちは困窮するのである。所領相続する際は自分の直轄領とせず、諸人たちにしっかりと分配し家臣を召抱えよ。

一、所領の境界が入り、時に所有権について論争することがあっても、怨恨を抱いてはならない。

〜  前編では法華寺事件の真相について、時代を遡って、当時の美濃の状況と金山城と明智城の相対関係を説明しましたが、ここからはいよいよ核心に迫りたいと思います。ですが本能寺の変の前に、信長家臣内での明智光秀と森可成は、どのような関係であったのか、その動向を、詳しく見ていかなくては、本能寺の変は始まりません。

🏯 明智光秀の心層と本能寺の変の真相 後編

1.織田家臣内での二人の派閥

１.織田家臣内での二人の派閥

■明智光秀と森一家は織田家臣内でどのような派閥(グループ)、組織に分かれていたのかまず説明します。※一部紹介

●織田信長 １５８２年３月までは全権
■明智光秀派
□細川藤孝(幽斎)、忠興と光秀娘の玉、細川(ガラシャ)、細川藤孝は幕府奉公衆で足利義昭擁立する協力者でもある。光秀とは終始親しい間柄で光秀の娘、たまと忠興の婚姻関係。

□荒木村重  (謀叛するまで村次の正室が光秀の娘)  謀叛後、村重を懐柔しようとしたのが明智光秀らで、荒木村重を討伐に派遣されたのが池田恒興らになります

□遠山友忠 恵那郡の岩村城主で明智一族とは以前から関係が深い。恵那郡の明知城は岩村城の支城である。光秀に従軍

□筒井順慶など

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●織田信忠 法華寺で家督を譲られる
■森可成、森長可派
□池田恒興  (娘が森長可の正室) 
姻戚関係もあり、森と池田は親の代から幾度もなく同陣にて協力していた。相談役でもありましたし親密さが伺えます。

□塙直政(原田直政)
  六男の森忠政が養子で入っている。

□団忠直 信忠軍では常に森長可と先鋒して戦功をたてている。または戦友。

□坂井政尚など

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明智光秀と細川藤孝らがいわば親しい間柄だとすると、森長可は池田恒興の娘との、姻戚があり森家と最も親しい関係であった人物は、"池田恒興"、に当てはまります。父の代から見てもわかるように森家は池田恒興を尊敬していました。本能寺の変の後、清須会議で家老としても出席していますが、これは後述します。

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2.信長家臣内での光秀と可成

2.信長家臣内での光秀と可成

では次に信長公記など一次史料のみ用いて信長が足利義昭を擁立し上洛後からの明智光秀と森可成の足取りを同時に追います。

■明智光秀と森可成の足取りを追跡■
※延暦寺の焼き討ちまで
※太字もしくは  ✔︎は特に重要な箇所

■1568年9月28日、東福寺に陣を移した。勝竜寺城の岩成友通を攻めに森可成、柴田勝家、蜂屋頼隆、坂井政尚ら。

■1568年10月、奉行として佐久間信盛、森可成、柴田勝家、蜂屋頼隆、坂井政尚らが、禁制を畿内に発給

■✔︎1569年1月4日、三好三人衆、斎藤龍興、長井隼人佐道利らが、六条御所を包囲した。この時に、信長公記で明智光秀が突如として初登場するのですが、何故、✔︎太田牛一はこの場面に明智光秀を登場させたかと言うと理由があります。長井隼人佐道利が、美濃明智城を攻め落とした事を知って✔︎光秀の宿敵は、長井だと教えてくれているのです。

■1569年、伊勢攻めでは森可成は東側、攻めで柴田勝家、山田勝盛、長谷川与次、佐々成政、佐々隼人、梶原景久、不破光治、不破直光、丸毛長照、丸毛兼利、丹羽氏勝に入っている。また斎藤新五は北から攻め参加している。

■1570年4月25日、越前朝倉攻めに森可成を先陣に柴田勝家、坂井政尚、✔︎池田恒興も続き、一気に天筒山城を攻め、その日の申の刻に落とす。また嫡男の✔︎森可隆が討ち死にしている。

■1570年5月、金ヶ崎の退き口では明智光秀は丹羽長秀と武藤から人質をとる使者として派遣。また稲葉一鉄、✔︎斎藤利三らを守山の街道に警固としておいた。

■1570年5月10日、志賀の✔︎宇佐山城に森可成を警固で備えた。

■1570年6月19日、浅井長政の小谷城を攻撃。21日森可成、坂井政尚、斎藤新五、市橋長利、塚本小大膳、不破光治、丸毛長照らが雲雀山に上がる。

■1570年8日26日、野田福島の陣、細川昭元、三好三人衆、斎藤龍興、長井隼人佐道利、が立て籠もる。

■1570年9月16日、志賀の陣で朝倉、浅井両軍三万ほど、坂本方面に攻め寄せてくる。森可成は応戦し勝利をおさめたが、9月19日にも攻められ森可成、織田信治、青地茂綱、尾藤源内、尾藤又八らが討死。

■1570年9月25日、比叡山を包囲、明智光秀は穴太村に要害を築き包囲。明智光秀、河尻秀隆、簗田広正、佐々成政、塚本小大膳、遠山友忠、村井貞勝、佐久間信盛、進藤、など16名。

■1571年、比叡山の焼き討ち前に、宇佐山城の城代として明智光秀が入れられ、村の土豪らの懐柔しています。

■1571年9月12日、比叡山延暦寺焼き討ち後に、明智光秀に志賀郡を与える。

何故、両者の事績を一次史料である信長公記で時系列で同時に見てきたかというと、こういう事です。✔︎森親子と明智光秀は、同じ信長家臣の中にあっても、まったく引き合わせていないことです。また同じ戦地で協力しあったり、同陣、援軍加勢すら史料に一切見えません。また京の政務で奉行として連判状を出したといった記録もありません。信長の起用方法はわかりやすく、美濃衆なら美濃衆とまとめて起用したり、その地理に詳しい各方面の主将らを、複数に分けて担当させたりしていますが、この光秀と森可成、は別々に行動を取らせるような処置を、信長がしているという事に気づいてしまったのです。信長は、この森家と明智家の美濃の隣接する所領を巡る争い、または因縁関係を、はじめから知っていたのではないかと思っています。何故かというと、前述した掟書にしろ信長はあらかじめ注意喚起して言っていました。また両者を史料で追えば追うほど対照的な場面、つまり別々に行動をとっている背景が、面白いほど見てとれるからです。

それらの証拠を紹介します。

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3.宇佐山城に光秀を入れた理由

3.宇佐山城に光秀を入れた理由

信長は足利義昭擁立後、京都の天下静謐するため、従わない朝倉義景の越前の討伐を図ります。しかしその途、近江と同盟であった浅井長政が叛旗をあらわにします。また本願寺も信長に対抗しようと鮮明にし、そして伊勢長島から逃れた、あの斎藤龍興や長井隼人佐道利は、その後、三好三人衆や本願寺らと内通しながら、信長包囲網を形成していきます。

多聞院日記 元亀元年三月二十日

「今度今道北、ワラ坂南、此の二道ヲトメテ、
信長の内森ノ三左衛門、城要害、
此ノ麓に新路コシラヘ是ヘ上下ヲトヲス。
余ノ道ハ堅クトトノウ。🏯」

森三左とは可成で宇佐山城を入れ道を整備します。

信長最大の危機はこの時でありました。浅井朝倉軍は延暦寺近くまで南下して膠着状態になる中、信長はこの場所で睨みを効かせるため、"近江の宇佐山城に森可成"を入れます。ですが、父、森可成は敢え無くここで討死してしまいます。✔︎問題はここで本来なら誰が見ても家督を継ぐはずの鬼武蔵こと森長可を宇佐山城に入れなければならないのですが、信長はなにを思ったのか✔︎明智光秀を"城代"としてこの宇佐山城に入れているのです。なぜこのような事をしたのかという理由は教科書では教えてくれません。

実はこれら、✔︎近江坂田郡の宇佐山周辺の近江は、本来なら父の"森可成"に一国の城主として、所領を与える予定だったということです。しかし信長公記にも書かれているように4月に森可成の嫡男の可隆が天筒山にて討死、また同9月に父、可成も志賀の陣で討死してしまいます。そこで信長は先の金山城に、隣接する土岐明智家と因縁のある森可成を入れてしまっていたので、信長は明智光秀への配慮、考慮というべき編入しているのです。つまり延暦寺炎上後、光秀に、この"近江"と"丹波"の所領を与えたことです。これは、✔︎本来は近江の所領を得るはずだった、家督を継いだ、森長可にして見ればこの時の心境は、相次いで家族らを失った心境もあり落ち込んだ事は言うまでもありません。しかし一方で不満もあったことは明らかで、ここから長可は家臣内の競争で負けまいと武功を重ね、甲州征伐では信濃四郡もの所領を得られるまでの信頼厚い関係になれたのです。

ですが、この話には続きはあります。

明智光秀にとって因縁のライバルの森氏が、城主であった、✔︎この宇佐山城に城代として入れられて、居心地が悪かったことが見えます。光秀は、近江・丹波の領地を得たあと、一国の主になるべきすぐに✔︎"坂本城への築城"に取り掛かり、かつて✔︎"森可成が入っていた宇佐山城を取り壊して廃城にしているということです！"。そして光秀の本拠をこの坂本城に移したことで、一国の城主として明智光秀のプライドが見てとれます。この時点で信長家臣内の競争でも光秀が一歩リードし、信長の信頼を得たことは言うまでもありません。

こうした両者の立場が、顕著として見られるのは、足利義昭上洛後から始まっていました。京の政務にしてもグループとなり、禁税など連判状も出したりしていますが、両者が一緒に出した文書そのものが、まったく見つかっていないのです。

■信長は永禄11〜永禄13年あたりまで、京都の政務を、二手に分けています。

森可成は柴田勝家、佐久間信盛、蜂屋頼隆、坂井政尚らのグループをAチームとしますと、一方、明智光秀はというと木下秀吉、丹羽長秀、中川重政らのBチームのグループと行動して天下の政務を担当しています。このように森可成と明智光秀は、信長により明らかに距離をとっていることが伺えます。先程も言いましたが織田信長は、森家と明智家の美濃内の関係を知っていて、このような処置を家臣内でとっていたと言うことです。

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4.本能寺の変の討死リストを見る

4.本能寺の変の討死リストを見る

本能寺の変、当日の光秀の動向は皆々ご存知の通りですのでここでは省略します。
まだ誰もまだ知らないような真実を、究明するのが私の仕事ですので、ここでは本能寺の襲撃事件で討死した人物に注目した。

■本能寺討死リスト  ※一部
※太字で書かれた討死人物は森家となんらかの縁、関係があったのではないかと思われる人物。✔︎は最も重要な人物。

✔︎織田信長、✔︎森長定(森蘭丸)・✔︎長氏(力丸)・✔︎長隆(坊丸)の兄弟三人、小河愛兵、高橋虎松、金森義入、菅屋角蔵、魚住勝七、武田喜太郎、大塚又一郎、狩野又九郎、薄田弓五郎、今川孫二郎、落合小八郎、伊藤彦作、✔︎久々利亀、種田亀、山田弥太郎、飯河宮松、祖父江孫、柏原鍋兄弟、一雲斎針阿弥、平尾久助、大塚孫三、  ✔︎湯浅直宗、小倉松寿、

✔︎青木秀重、矢代勝助、伴太郎座衛門、伴正林、村田吉五、

■二条新御所 討死者  ※一部 

 ✔︎織田信忠、村井貞勝、✔︎団忠直、✔︎斎藤新五、猪子高就、福富秀勝、野々村正成、篠川兵庫頭、下石頼重、毛利良勝、赤座長兼、✔︎坂井越中守、桜木伝七、逆川甚五郎、服部小藤太、服部六兵衛、小沢六郎三郎、✔︎塙伝三郎

その他一部除く

✔︎上の討死リストから何がわかるかというと、太田牛一は、信長公記でまず一番はじめの欄に、森蘭丸らが討ち死にした事を真っ先に挙げています。続いて、力丸坊丸らを書き綴ります。また信長馬廻衆、小姓のほかにも、森可成や兄弟と縁のある家臣ら、親類たち大勢が、本能寺の襲撃で、一緒に討ち死にしてるという証拠です。

ん？

この中に、一人聞いたことのある名前が、討死リストにあるのがお気づきだろうか。

団忠直(団忠正)です。

先の1582年3月で法華寺事件で所領分配を思い返して下さい。甲州征伐の働きで恵那郡岩村城を得た人物である。信長から一国の主とし岩村城を団忠直に与えられました。ですが問題はここではなく、日本史は教科書に載っている表の歴史ばかり見ていては何も気づきません。裏を追究しなければ真実は見えてこないというです。


では、あの法華寺事件直前まで、この岩村城主として入っていた人は誰でしょう？

かなり難問なのでもう答えを言います。

遠山友忠という人物です。

つまり法華寺事件で米田城の肥田忠政、同様に岩村城の領地を失った人です。遠山友忠は岩村から退城し恵那郡の支城の苗木城へと降下してしまいました。因みに肥田忠政も所領を失ってからは森可成の与力へと組み込まれ、後で反旗を翻す事になります


つまりこれは「お前は今日から、岩村城主の団忠直に従え」という意味を持ちます。

荒木村重、松永久秀のような国持ち大名のお偉いさんが、重臣の配下へと格下げされて今日から従えと言われたら、いつ反旗を翻して謀叛を起こしかねないような危険な状況を所領分配にしろ家臣編成にしろ信長はいくつも作っているということです。

■森蘭丸の経歴を紹介しておきます■

蘭丸が信長の小姓として見えるのは、信長の小姓をしていた万見重元が1578年、荒木村重討伐の際に討ち死にした後、代わりの寵臣としてだった。当時は15、16歳の蘭丸は森兄弟では三男。可隆、長可の兄がいたが、可隆は1570年4月天筒山攻めの際に討ち死にします。また同9月には父可成も志賀の陣で討ち死にします。この森蘭が信長公記に初登場するのは、1579年4月18日摂津塩河長満への使者として派遣されたときである。

■1580年、８月、吉田兼見が和菓子を持って信長に尋ねた際、森蘭丸が接待している。

■1581年7月安土にて信長からの品を信忠らに届ける使者

■1582年1月岐阜の信忠に事伝えの使者

■1582年2月雑賀の土橋攻めで敵、千職坊を打ち取った斎藤六丈夫の褒美を届ける使者。

■1582年3月先の甲州征伐での小笠原信嶺に安堵を伝える使者。

これは名将言行録に載る話ではあるが載せておきます。森蘭丸は明智光秀が会食する際に、何かお考えがある様子を見て、光秀には謀叛の疑いがあると感じて、安土城の信長に報告したといった話があります。

●本能寺と二条御新造で討死した人物と
森家と接点がある人物を一部紹介します

■青木秀重は、森可成元家臣であり通称次郎左衛門。室は森可成の娘。蘭丸の義兄にあたる人物。
■久々利亀、出身は中濃の久々利城で土岐悪五郎こと久々利頼照は斎藤大納言正義の配下にいたが、1565年信長に降伏しその軍門に下った際には、可成に仕えた人物で久々利亀はその一族にあたる。
■湯浅直宗は通称、甚介（じんすけ）。妻は中島主水正の娘。その一族の湯浅通称助左衛門は後に、六男の森忠政に仕えた。
■伴惟安(塙、原田)は、森家と縁があり本能寺の変後、妙向禅尼と共に安土から脱出を手引きし甲賀に匿われた。


●二条御新造で討ち死に人物  織田信忠
■団忠直(忠正)は甲州征伐において、森長可と共に先鋒部隊で活躍。甲州征伐後、岩村の一群与えられていた人物。
本能寺の変後、岩村城は信濃海津より撤退してきた森長可が接収した。一見、森長可が奪ったような感じに見えますが、これは逆で明智光秀に与する前岩村城の遠山友忠に奪われる前に確保したのです。

■落合小八郎、信長小姓、父は落合藤右衛門直治か？直治は森可成の与力だった■山田弥太郎は、森家臣であった山田右衛門の子か？

■また明智光秀は、本能寺を襲撃した際松野というものの命を助けようとした、記述があります。

〜  信長公記から
先年、安藤守就に落ち度があって追放されたが、その時、安藤の家来に松野平助というものがいた。武勇に優れ才知ある者なので、信長は松野を召抱えていた。この度、松野平助は遠方にいて妙顕寺に駆けつけてきた。明智方の斎藤利三が松野と知り合いなので、出頭したら命だけは助け仲間になるよう言った。しかし松野は信長には召抱えられた時のご恩があり、明智に味方するのは無念であると言い腹を切った。

ここでわかることは、本能寺の襲撃の際に明智光秀や斎藤利三の知り合いもしくは、親しい人物を見つけた際、助命したら無理には、命は取らないような処置を明智光秀が取っていたということです。

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5.変後の光秀の次なる目的とは？

5.変後の光秀の次なる目的とは？

ここで重要な証拠を出します。

明智光秀は本能寺の変後、味方につけようと細川藤孝をはじめ多くの文書を出していますが、それより真っ先に、密使を送り込んで、河隅忠清が信濃上杉景勝の家臣・須田満親宛へ宛てた史料が見つかっています

  一昨日、須田相模守方より召仕の者罷り越し、
才覚申す分は、明智の所より魚津迄使者指し越し
御当方無二の御馳走申し上ぐべき由申し来り候と
承り候、実儀候はば、定めて須田方より直に使を
上げ申さるべく候、将又推参し至極申す事御座候
へども、そこ元の儀大方御仕置仰せ付けられ候はば
早速御馬を納められ、能・越両州御仕置これを成さ
れ御尤もの由存じ奉り候

この旨よろしくご披露に預かるべく候
恐惶謹言

六月三日
直江与六殿

河隅越中守忠清

日付は6月3日付で本能寺の次の日ですがこれは誤字です。問題はそれではなく、

明智光秀は何故、遥々、上杉景勝に馳走(協力)するように密使を送り、求めたのかと言うとこれには重要な秘密があります。

つまり本能寺の変後の
光秀の次なる目的はこういう事です。


光秀は、本能寺の変後、

兵を京に返し、すぐさま、

森長可を美濃で"挟撃"することであった。

何故かというと、本能寺の変の時、方面軍として信濃に生き残りとも言える森長可が居たことです。森長可は本能寺の変が起こった時、上杉景勝の追い込みを計っていましたが、それより明智光秀は密使をただちに送りこみ、上杉景勝に協力を求め✔︎この森長可また柴田勝家らを美濃あたりで挟撃しようと計画していたということです。

つまり光秀の心層は本能寺の変で、信長父子の行い(美濃の領地分配と没収)は非道であるから謀叛を決意した。また信長の小姓で優遇されていた三兄弟ら因縁の森家をも討った。森長可は弟らが殺害されたと聞いたら間違いなく、明智光秀に弔い合戦を挑むため、森長可は信濃から戻ってくるだろうと、明智光秀という人物はここまで計算していたということです。

ですが、歴史は一人の人物によって、この計算が狂い始めます。

もう、おわかりのとおり
中国地方備中から大返ししてきた

羽柴秀吉により脆くも崩れさられます。

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6.天王山、山崎の戦いと代理戦争

6.天王山、山崎の戦いと代理戦争

天正10年（1582）6月13日明智光秀は、中国大返しを強行した羽柴秀吉と、摂津国と山城国の境で激突した。いわゆる天王山の戦い、山崎合戦である。

申の刻、午後4時ごろ戦闘がはじまったことがわかる。光秀軍の最前線の一つ、天王山東に布陣していた並河易家・松田左近隊が、中川清秀・黒田孝高・神子田正治ら秀吉軍の先鋒に攻撃を仕懸けたのが開戦の合図となり、両軍の本格的な戦闘となった。

ところが戦いがはじまって光秀軍の最前線の斎藤利三隊が秀吉軍の池田恒興、加藤光泰に包囲され孤立状態となり、斎藤隊が崩れはじめ敗走したのが決め手となった。

この時の決戦となった布陣を見てもお分かりのとおり、先手(前線)で任されたのは高山右近、中川清秀、そして池田恒興が布陣しています。池田恒興は(娘が長可の正室)であるのでこの時、森長可に変わって代理として本能寺の襲撃で討たれた、森兄弟の弔い合戦に挑んでいたのである。池田恒興はこのような覚悟で決戦に挑んでいたという、事実はまったく知られていないのですが、学校で教えるべきだと思うのです。

とはいえ光秀は本能寺の変の際、羽柴秀吉の動向より柴田勝家や森長可の動きに注意して、把握していたという事になります。

弟を失った、森長可の変後の行動を見ればそれは一目瞭然です！

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7.本能寺の変前と変後の森長可

7.本能寺の変前と変後の森長可

ここからは森長可の本能寺の変前と変後の動向を、注意深く追って見ましょう。

■1582年4月、先の所領分配で信長の命令を下され、海津城に入り森長可は上杉景勝の勢力と戦いながら北上します。

■1582年5月、春日山城からほど近い二本木を守る上条景春を破り同地に陣を張った。

■1582年5月27日、上杉景勝は森長可が北上していることを聞き天神山城の陣を引き払い、春日山城へと兵を返す事となる。

■1582年6月2日、本能寺の変が起こる

■1582年6月6日？、森長可が本能寺の変を知ったのはいつであろうか。柴田勝家は魚津城を落城させた3日の際は変あった事をまだ知らない。6日に変の情報を知り撤退しています。また関東の滝川一益は、6月7日に変の情報を聞いて撤退しているので、森長可はその中間辺りにいますので、従って森長可は6月6日以降に本能寺の変を聞いた事になります。

■1582年6月8日、森長可は二本木の陣を払って美濃金山を目指して撤退するが、外敵に阻まれる。また長可は一旦、海津城の戻り人質を連れて撤退した。途中一揆勢が前に立ちふさがり長可の家臣大塚次右衛門が一揆と交渉したが、長可は無謀にも合戦を仕掛けた勝利した。森長可は松本に到着するとその人質を処刑して木曽谷方面へと撤退した。

図1.本能寺の変後を巡る森長可の動向

図1

6月9日以降
途上木曾義昌が長可暗殺を画策しているという話を聞いて長可は、福島城を迂回しないで、福島城に到着する日付を書いた書状を木曽義昌に送って油断させる。だが長可は到着日より前に城門を破壊して木曽福島城に押し入った。義昌の息子の岩松丸の身柄を拘束し企みを封じた。翌日森長可は福島城を後にし岩松丸を人質として連れ出す。そのまま帰路を無事に往く為の人質として利用しています。

注:詳しくは図1を参考に
東濃入りした後も苗木の遠山友忠は遠山氏の本領であった岩村城を奪還すべく海津城から帰還する途上の森長可を殺害しようとした。友忠はかつて明智光秀にも従軍していており、遠山氏は明智一族と長年の懇意もあり本能寺の変で団忠直が討ち死にしたのを知ると森長可の帰路を妨害しようと光秀の手助けしています。森長可は人質の岩松丸を盾に木曾家から手を出さぬようにと懇願された事で、森長可は金山城への街道を無事通過した。

■1582年6月13日、山崎の天王山の戦いで破れ、明智光秀は坂本城に撤退する途上で農民に討たれる。

■1582年6月15日、（織田信孝の）伊勢神戸家から、京都にて信孝・丹羽長秀・池田恒興(娘が森長可の正室)が明智を討ち取ったと報せが入る。

■1582年6月24日、金山城に帰還した森長可は領地を確保。翌日には岐阜城に赴き、池田恒興、織田信雄、信孝らに挨拶し弔辞を述べたという。また森長可は、池田恒興から本能寺の変、山崎天王山の合戦の話を詳しく聞いたという。

■1582年6月27日、清須会議始まる
集まった織田家家臣は柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興、堀久太郎秀政

■1582年7月2日？、加治田城主の●●利堯が首謀者となり(苗字は後ほど記述)、美濃金山城の森長可の排斥を企む。また同じ中濃にいた長可の与力だった肥田忠政(前米田城主)・久々利頼興らが離叛し反旗をあらわにする。更に東濃の小里光明・妻木頼忠(明智光秀の正室煕子の親族)・遠山友忠(前遠山城主)、美濃国衆らも反発し反森勢力を形成する。

🏯 明智光秀の心層と本能寺の変の真相 後編

8.変の真相に迫る最後のピース🧩

8.変の真相に迫る最後のピース

光秀は本能寺の変後、森長可らをまず美濃辺りで討つことであったと前述しましたが、この後、話にはまだ続きがあります。本能寺の変の真相に迫る、最後の証拠は、

本能寺の変の後の"美濃国中濃地域"を巡る、加治田・兼山合戦が示しています。

この加治田・兼山合戦は、教科書はもちろん一般書でも、ほとんど知られてないのですが、7月に勃発した

美濃国中濃地域"の領地を巡り、

✔︎"森長可と斎藤利堯"が争ったものである

ではこの、森長可と領地を争った首謀者である、✔︎斎藤利堯なる人物は一体何者なのか紹介しましょう。

■ 斎藤利堯      通称 玄蕃
一説 父：斎藤道三、母：お見のお方
二説 父：斎藤道三、母：深芳野  (稲葉一鉄の姉)

実父は斎藤道三。四男。五男説あり。
末子の利治に代わり加治田城主になる
利治は通称 新五 諱は 長龍、長竜、利興とも使い分ける。

斎藤利治は斎藤道三の五男とも伝わる。だが名前を見てもお分かりだが兄の義龍、嫡男龍興の龍と興の一字を拝領していることから、五男、斎藤利治は、斎藤道三に味方せず、斎藤義龍についていたのではないかと思われる。信長が堂洞城攻めで佐藤忠能の子・忠康が討ち死にしたため、忠能の養子となり、永禄10年1567年に忠能が隠居すると加治田城主となる利治は加治田城主を任されていたが、四男の利堯が信長に降った後、兄の利堯を、加治田城に入れ替えて城主になったのである。

前回記述した記事を覚えているだろうか。斎藤道三が美濃守護、土岐頼芸を追放した争乱があり、そのとき森氏一族は土岐頼芸側であったが、明智光秀は斎藤道三に味方した。道三はやがて義龍にうたれ、道三勢力下であった明智城は長井隼人らによって落城し、光秀たちは越前へと落ち延びた。

その際、故、斎藤道三の四男斎藤利堯は、この戦乱の中で生き延びていたのである。そして本能寺の変を知るや明智光秀に味方して、共に美濃金山城主の森長可を排斥しようと計ったのです。ですが明智光秀は羽柴秀吉の猛スピードの中国大返しにより短期決戦を挑まれ実現しなかったのですが、

その後も、美濃の国衆が一斉に森長可に反発し、反森勢力を形成して排斥しようと、挑んだのが加治田・兼山合戦なのである。

何故、斎藤利堯は明智側に味方したのか、


その最後のピースは明智光秀に従っていた斎藤利三との関係にある。

では斎藤利三を紹介しましょう

✔︎斎藤利三の正室は"斉藤道三の娘"である

つまり、斎藤利堯と斎藤利三は義理の兄の関係にあたります。この合戦の時には、光秀も利三も秀吉に敗れ、利三は刑にかけられて、この世にいないのであるが、この加治田・兼山合戦での斎藤利堯の背景には、亡き光秀、亡き利三であり、遺恨合戦かつ、美濃領地争奪戦でもあり、また森家から見れば、弔い合戦でもあったのです。

総論

あの３月での法華寺事件に絡んだ美濃の領地分配した人物たち、つまり

岩村領の団忠直と遠山友忠
米田領の肥田忠政と森長可
兼山領の森蘭丸と明智光秀

美濃領に関与する人物がいくつも絡んで、本能寺の変、山崎の戦い、そして加治田、兼山合戦へと引き起こされたのです。

見てきたように、以上が事の結末です。

つまりこの本能寺の変を語るときは、この森家、そして蘭丸、また森長可という人物無しでは成立しないということなのです。

信長はかつて明智領に絡む因縁の森家にその可児市の領地金山を与え、明智家は旧領地に再び還り得ようと願い、信長の配下に加わり武功を重ねていた始まりは、森家と明智一族の、美濃領地争奪で終わるという皮肉な話ですが、

これが本能寺の変の真相です。

これらを見ていくと、1582年という年は老いた明智光秀に代わり、織田信長は、若い森兄弟を小姓に従え、可愛がれ、また家督を譲った信忠軍の森長可を重用し優遇していくという、方向転換の兆候があったという事です。そしてあの法華寺事件が起こり、領地を森蘭丸に与え、明智光秀はいつしか怨恨を持っていったということです。

事の始まりは、あの法華寺事件での中美濃での旧領地である明智家と森家への配分で不満分子が引き起こしたものであると確信しています。私の研究不足なこともあり、支持して頂ける方々は、今は少数でしょうが、いずれにせよ、本能寺の変の真相は、明らかにしてくれるものだと信じて、終わりにしたいと思います。

最後まで読んでくれた方々に感謝します。有難うございました

    『 ときは今、あめが下なる五月哉 』

※注訳 下知るではなく、下なるで訳した

『 ときは今、あめが下なる五月哉 』

- ときは今
答 守護土岐氏だが追放され滅んでいる。美濃国内の状況。ここでは土岐明智の意味

- あめが下なる
答 - 天が下になる、つまり地を統治する。または治めること。還る

- 五月哉
答 - いわゆる時期のこと、
また明智一族の家紋である桔梗を表している、この時代この時期に咲くことで明智の家紋と掛けたもの。ちなみに桔梗の花弁(花びら)5つの意味、おしべも五本あり、『五』という数は明智にとって縁起がいい数字だったのである。

すべて解釈して当てはめると


美濃国はいま、明智へと還されるであろう

愛宕百韻で詠んだ句の、明智光秀の心層はこのように言いたかったのでしょう、、。