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山口トンボ

山口トンボくんという作家がいます。
彼は元々芸人をやっていまして、僕とは名古屋の吉本の同期になります。
その付き合いは長く、知り合ってかれこれ20年。
僕は彼のことを、昔から変わらず今もグッティと呼んでいるので、以下グッティと書かせていただきます。

グッティが芸人をやめ、東京に出てきてから今現在どんな仕事をやっているのか。というのは、ご存知の方も多いでしょうから、ここでは割愛させていただきます。
知らない方は是非検索してみてください。
なかなかの売れっ子作家です。

名古屋吉本に在籍している当時。
グッティも僕も、若くて、仕事がなくて、お金のない、絵に描いたような若手芸人でした。
ただ、そんな僕たちにも有り余るほどのものが1つだけあったんですね。
それは、

時間です。

「夢です」みたいに答えたい気持ちは少しだけありましたが、それより何より具体的にあったものが時間でございます。

ただただ時間だけはありました。
もうホント四六時中一緒にいたんじゃないかというくらい、多くの時を一緒に過ごしてきたのですが、そのほとんどが
「今日なにする?」
からスタートする暇な時間なんですね。

テレビに出てる売れっ子は、分刻みであっちこっちへと移動します。
が、
当時の僕らの1日のスケジュールはというと……
夜から始まるライブが一本。が週に2〜4という感じ。
そのライブの実働時間も大体2時間以内です。短いと1時間。
劇場に入る時間も、本番の1時間前、早くて2時間前くらいなので、トータルでも3〜4時間しか拘束されてないわけです。

それ以外の時間、ネタを作ったり打ち合わせしたりと、なんだか仕事っぽい時間もあったりはしたんですが、それでも、大河のごとく流れる時間は膨大に有り余っております。
なので、グッティと一緒にいる遊びの時間は、
「今日はなにする?」
からスタートするわけですよ。

何も予定がないけど、とりあえず一緒にいて遊ぶ。
でもお金はない。やる事は制限されてくる。
そうなると、大体やることは決まってるんですね。
そう、

ミニコント

です。

ミニコントっていうのは、何か勝手に設定を決めて、お互いキャラに入ってゆるくそのシチュエーションを演じる……
簡単に言ってしまえば、単なる"悪ふざけ"です。
今振り返ると、僕らはいつもこのミニコントをやって、時間を潰していたように思います。

ただ、悪ふざけですからね。
「よし、じゃミニコントやろう!」
なんて、掛け声で始まるもんじゃないんです。
いつのまにやら、どちらともなく、設定に入っていて、相手がそれに対応する。
そんな風にして、気づいたら時間が経っていた。これがまぁ当時の実情です。

そんな中、何度もミニコントをやっていると、お決まりのもの、みたいなのが出てくるんですよ。
悪ふざけにお決まりっていうのも変ですが。
当時よくやっていたのを思い出すと、、

デリバリーのあれのミニコントです。

ほら、あるじゃないですか。
電話をかけて、部屋に女性にきていただいて、少しやらしいことをする、あれです。

そのミニコントを、当時一人暮らしをしていたグッティの部屋で何度かやっていた記憶があります。
始まりは、僕が電話をかけるか、
グッティがシレーっとどこかに行くか、
どっちがどう行動してスタートしてたかは、もう忘れました。
まぁでも、電話からスタートするんです。

房野(以下、ボ)「もしもし」
山口(以下、山)「はい、もしもし」
ボ「あの、女の子をお願いしたいんですが」
山「あーそうですか。ありがとうございます! ではどのような子が?」
ボ「あのー、雑誌で見たんですけど、〇〇ちゃんいますか?」
山「ありがとうございます。〇〇ちゃん、今あいております。今ですと、すぐにお部屋にお伺いできるかと思います。ではご住所よろしいでしょうか?」
ボ「あ、はい。えーと名古屋市(住所言う)」
山「はい、はい……。かしこまりました。それではすぐにお伺いできるかと思いますが、少々お待ちくださいませ(電話切る)」
ボ「(待つ)」
山「(コンコン)」
ボ「早ぇーな…。はい、今開けます」
山「(帽子を目深にかぶったグッティ)」
ボ「え。〇〇ちゃんですか?」
山「はい(裏声)」
ボ「あ、そうですか…。とりあえず中、どうぞ」
山「ありがとうございます(ずっと裏声)」
ボ「どうぞ、そこ座ってください」
山「ありがとうございます」
ボ「……なんかあれですね。写真と雰囲気違いますね」
山「そうですかね」
ボ「はい」
山「帽子かぶってるからかな(終始裏声)」
ボ「いや……。帽子とかそういう次元の話じゃないというか」
山「写真のままです」
ボ「写真のままではないですよね。というか、声もなんか、作ってません?」
山「こんな声なんです」
ボ「こんな声……裏声出してません?」
山「そんなことないです」
ボ「というか、帽子とってもらってもいいですか? 写真と同じっていうなら」
山「ダメです」
ボ「ダメですってなんすか。とってくださいよ」
山「いやです」
ボ「なんでいやなんですか。いや帽子とって…(無理やり帽子取ろうとする)」
山「(抵抗)」
ボ「帽子を……帽………力強ぇーな! なんすかその力」
山「はい」
ボ「いや、はいじゃなくて。裏声だし、力強いし……あの、、男……ですよね?」
山「違います」
ボ「絶対そうでしょ。てか帽子取ったらわかるんですから(取ろうとする)」
山「(抵抗)」
ボ「帽………力強ぇーな! なんすか! ………すみません、チェンジで」
山「ムリです」
ボ「ムリってなんだよ。じゃあもういいです、帰ってください」
山「ムリです」
ボ「だからムリってなんだよ! え、男ですよね?」
山「違います」
ボ「(帽子取ろうとする)」
山「(抵抗。のちに房野を殴る)」
ボ「痛っ! なにするんすか!? え、帰ってもらえます?」
山「ムリです」
ボ「もう怖ぇーよ」

と、いうようなやり取りをやるんです。

よろしいですかみなさん。
このミニコント、ここで終わりじゃありませんよ。
このなんの盛り上がりもない不毛なやり取りを、ここから40分以上は続けますからね。
もちろん、観客はゼロ。
その場には、グッティと僕しかいません。
あの頃の僕たちには、どうやら楽しかったようです。

そんなミニコントばかりやっていたグッティですが、最近彼は、

本を出版し、


アパレルブランドを発足させ、

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プロポーズまで成功させました。

本当にすごい。

数々の活躍と幸せ、心から嬉しく思います。

どうかみなさん。
これからのグッティの動向を、SNS等でチェックしてみてください。
また、楽しくワクワクするようなことを、僕たちに提供してくれるはずです。

グッティ。
また、あのときみたいに、ミニコントやろうね。とは口が裂けても言いません。

本当にありがとうございます!! 先にお礼を言っときます!