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義父母との関係と離婚

義父母との不仲や過干渉によって離婚が認められる場合について、実際の裁判で問題にされた事例と併せて紹介します。


1 婚姻により、「姻族関係」が発生する

結婚をすると、夫婦2人の関係だけでなく、配偶者の父母とも親族関係が発生します。
法律上、その関係を「姻族(いんぞく)」と言います。

実際の結婚生活においても、一般的に、夫や妻の父母とも交流する機会が増え、時にそれが夫婦関係に良くない影響を及ぼしてしまうことも現実には少なくありません。


2.義父母との不仲や過干渉など

◆ 親が子離れできていないケース
子どもが結婚しても親がいつまでも子離れできず、何かと世話を焼きたがることがあります。
親自身は、子どもにとってもそれが良いことと信じている面があるため、配偶者が内心では嫌だと感じていても全く気が付きません。

◆ 配偶者と義父母の関係がうまくいかないケース
いわゆる嫁姑問題のように、何かにつけて衝突が起きてしまう場合があります。
例えば、親が過度に夫婦の家庭に干渉し、あれこれと自分の価値観を押し付けてくるような場合は、配偶者にとっては大きなストレスになります。
 

3.親との不仲や過干渉が離婚原因になるか

親との不仲や過干渉は、それだけでは直ちに離婚原因とはなりません。

法的に離婚原因となるか否かはあくまで夫婦間の問題であり、舅姑との関係は直接には関係しないからです。

ただ、例えば、夫の両親の過干渉により婚姻生活に重大な支障が生じているのに、夫がこれに全く無関心だったり、親に絶対服従の態度だったりして、そのせいで夫婦間の信頼関係が崩れて修復の余地がなかったりするような場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として離婚原因となる可能性があります。
 

以上の通り、配偶者の親との関係で悩んでいる場合には、まずは配偶者に協力してもらってその改善を試みるべきでしょう。
それに対して、配偶者が全く協力しないような場合には、その配偶者との問題として、法的な離婚原因の存否の問題となります。


4 実際の裁判例

(1) 妻と夫の両親との不仲につき、妻がどんなに努力しても、夫が従前の無関心な態度を改め、積極的に家庭内の円満を取り戻すよう努力しない限り、家庭内の融和を取り戻し、これを維持することは不可能である状態になっており、それにも関わらず夫がそのような努力をする態度が見られず、婚姻関係を維持する意思すらないとして、妻の離婚請求を認容した事案
(名古屋地岡崎支判昭43.1.29)。


(2) 実質上婿入りした夫が、妻の両親の平素の言動、評価は極めて当を得ていないものであり、妻の両親との軋轢に対しての認識の程度、その態度は妻として条規に欠けていた状態で、夫が妻との婚姻継続意思を喪失し別居し、その後4年を経て他の女性と同居した事例で、夫の離婚請求を認容
(山形地判昭45.11.10)。

 
(3) 婚姻生活は結婚当初の短期間を除いて言い争いが多く、時には激しい対立があったが、この主原因は母に絶対服従する妻の態度に対する夫の不満との衝突という外在的要因によると認定。しかし、妻は反省して婚姻継続を希望していた。これに対し、夫は、円満な夫婦関係の実現にさしたる努力もしないで妻を非難、嫌悪するに走りすぎており、有責性も高いとして夫の離婚請求を棄却した事案
(東京高判昭56.12.17)。

 

(4) 同居している夫の姉の節度のない男性との交際が原因で、夫婦仲まで険悪となり、約7年間別居生活が続いていた。もともと夫婦間に固有の紛争があったわけではなく、夫において姉と別居するなどして良好な婚姻関係を取り戻し得る可能性があり、またそのような決意もしているとして、妻からの離婚請求を棄却した事案
(東京高判昭60.12.24)。

 
以上ご紹介したように、実際の裁判例では、義父母との不仲などがどのような状態であるかを詳細に検討し、さらに周辺事実をも加味したうえで離婚原因があるか否かを総合的に判断しています。


調布・府中の離婚に強い女性弁護士|仙川総合法律事務所 (sengawa-law.com)


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