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noteのUXリサーチチームが立ち上げ当初苦労したこと(RESEARCH Conferenceプレイベント資料)

こんにちは。noteでUXリサーチャーをしている仙田です。

2022年4月14日に開催された、RESEARCH Conferenceプレイベントに登壇しました🙌

イベント配信会場の様子。登壇者5名に撮影用のカメラが向けられている
メルペイの草野さん、アンカーデザインの木浦さん、メルペイの松薗さん、note CDOの宇野さんという豪華すぎるメンバーに囲まれていました

そこで、noteのUXリサーチの取り組み、立ち上げ当初の苦労やnoteだから楽できたことについて話しました。
せっかくなので、僕が話したパートの登壇資料と台本を公開しようと思います。

  • インハウスでこれからUXリサーチを始める方

  • UXリサーチの社内浸透、実施に苦労している方

  • 社内にUXリサーチチームを作りたいと考えている方

の参考になるかもしれません。

スライドだけ見たい!という方はこちら↓


イベントのアーカイブ動画はこちら!(登壇パートから再生されます)↓


0.イントロ

改めましてnote株式会社の仙田です。
2020年に新卒でnoteに入り、 UI デザイン、グラフィックデザインを中心にやっていたんですが、最近は UX リサーチチームを立ち上げ、その実施と社内浸透に取り組んでいます。

今日お話しする内容はこんな感じです。

1.noteにUXリサーチチームが生まれた背景

noteのリサーチチームの体制はこんな感じ。
基本的に4人で動いています。

  • 僕がUXリサーチャー専任

  • デザイナーがPM的にプロジェクト進行をアシスト

  • 2人のリサーチャーが業務委託で外部アドバイザー

僕以外は他のプロジェクトとかチームの面倒も見ている人々で、実務はほぼ僕1人で行っています。組織図には存在しない有志のチームです。

最近 note は人数規模、チームやプロジェクトや機能が急激に増えてきました。
そのため施策の評価指標が曖昧になってしまい、機能をたくさん出すが、何をもって成功とするのかがあやふやなことがありました。
そこでUX リサーチの需要が社内ではかなり増えていました。

しかし、現場のPMやデザイナーはリサーチをやりたくても目の前の業務が忙しい、やりたくてもどうすればいいかわからないという状態でした。
(たまに単発のユーザーインタビューが走るくらいの頻度)
そこで、リサーチ業務を請け負うチームを作って、ノウハウを蓄積して、別の業務に集中できるようにすればいいのではないかという話になりました。

僕自身UXリサーチに興味があったので、深津さんにチーム立ち上げの相談しに行きました。
「深津さん、カクカクシカジカでUXリサーチを専門でやるチームを作っておきたいんですけど‥」と相談しに行ったら「いいじゃんいいじゃん!そしたらね……」と二言目にはもう具体的なチーム運用のアドバイスみたいなのが始まる位、ぬるっとUXリサーチチームは立ち上がりました

UX リサーチチームが立ち上がった当初の目的がこちらです。
一つ目は定常的なリサーチの実施。今までやりたくてもできていなかった UXリサーチをチームで請け負い、定常的に実施しすることで、noteに常にユーザー視点の意思決定材料を提供すること。
そしてもう一つが、リサーチ文化の定着です。リサーチ結果を活用してもらえるように、そしてUXリサーチへの理解を会社全体として深めることを目標に動いていました。

2.立ち上げ時に苦労したこと、乗り越えたこと

UX リサーチチーム立ち上げ当初は苦労したことも結構ありました。
どんなことに苦労したのか、そしてそれをどう乗り越えてきたのかご紹介します。

みんな頼ってくれない

苦労その1。みんなが頼ってくれない。みんなに頼って欲しくて立ち上げたチームなのに最初はみんななかなかリサーチの依頼や相談をしてくれません。

それはそのはずで、「そもそも僕らの存在を知らない」「UXリサーチをする価値を僕らが伝えられていない」ことが原因なのではないかと考えました。
僕は深津さんに泣き付き、アドバイスを求めました。

深津さんがくれたアドバイスはこんな感じ。
一つ目は、どんなに正確なリサーチでもその結果を聞いてみんなのテンションが下がるようだと定着しない
クリティカルだけど考えると気が重くなるリサーチ結果より、多少雑でもみんなが「なるほどユーザーさんてこういうこと考えていたんだ、勉強になる!」とか、「これならうちの部署で簡単に試せそう!」とか、みんなが楽しみになったり、すぐに実践できるテーマやアウトプットのほうが定着する

二つ目は、「毎日ユーザに関する情報を5個位全体チャンネルに投げると仙田がユーザに詳しい感が出る」これは例えば1ヵ月に1回ドーンとボリューミーなリサーチ結果を共有するより、毎日ちょっとずつみんなの役に立つことを共有したほうがみんなに覚えてもらえるしイメージが定着するんじゃないかというアドバイスでした。

これを踏まえて僕がやったことの1つ目が、ユーザーインタビューのライブ配信でした。

このようにYouTubeでインタビューの様子をライブ配信していました。
とにかくみんながユーザの生の声を聞く機会を増やしたく、YouTubeに辿り着きました。

YouTubeでよかったことはこんな感じ。

1.今まではインタビューの録画をGoogleドライブにあげて後から見てもらうように促していたんですが、見るまでの導線が長かったり処理が重かったりで僕自身も結構見るのがめんどくさかったです。
なのでみんなが慣れ親しんでいて、ワンクリックで視聴できるYouTubeを使ってみました。

2.ライブ配信だと「その時しか見れない感」もあるし、インタビューを聴きながら仕事もできます。ながら聞きしやすいのがいいですね。

3.意外とセキュリティー的にも大丈夫。YouTubeで動画を非公開設定にした後、特定のユーザを指定して視聴可能にできます。
万が一動画のURLが外部に漏れてもnoteの社員しか見れないように設定しています。

4.タイムスタンプで特定の秒数のところに飛べたり、プレイリストでインタビューのテーマごとに動画をまとめて管理できるのが便利です。

YouTube配信の方法については下記のnoteでもう少し詳しく触れています。


もう一つ社内認知のために意識した事は、リサーチ結果をまめにチャットに投稿することです。

ユーザインタビューやユーザーテストを実施したら、分かったことや次のアクションを全員がいるチャンネルに流すようにしていました。
その時に気をつけてることは↓

1.インタビュー1件1件ごとに速報を流していました。
同じテーマでも一人づつ共有して、細かく接触頻度をあげることを意識していました。(毎日ユーザに関する情報5個はちょっと投げれなかったんです。深津さんごめんなさい)

2.テーマによってチャンネルを出し分けることも意識してました。
全体チャンネルは情報が流れるのが早いので、見落とされる前提で投げてました。(「仙田はこんなテーマでリサーチしているんだ〜へ〜」って思ってもらえればいい)
それとは別に、関係者が活発にやりとりをしているチャンネルにも投げることで、ちゃんと届けたい人に中身も届けることを意識してました。(アプリに関するリサーチだったらアプリチームのチャンネルにも流す)

3.リサーチプロセスをみせることも大事にしています。
先程のアプリに関するリサーチだったら、リサーチの設計とか事前準備のやりとりを、リサーチチームのチャンネルではなくてアプリチームのチャンネルでするようにしていました。
そうするとまチャンネルに参加している人から「何か仙田がいろいろやっているなぁ」ということが伝わるし、リサーチの手順を自然と周知することもできるかなと思っています。

4.ユーザーから褒められた話も共有するようにしています。
ユーザヒアリングはユーザ課題を聞くのが目的なんですけど、「この機能がすごい便利ですね!」「noteのおかげでいいことがあった!」と声をかけていただくことも多いです。聞けたらできるだけ関係者が多いチャンネルに共有します。褒められたら嬉しいですからね。

↑これは、ユーザインタビューの際、クリエイターさんが「エディタの操作すごい!天才ですやん!」と言ってくれたので、それを開発したエンジニアに報告した時の様子です。

こういう地道な周知活動を積み重ねていた結果、は今ではもう1週間に1回ぐらいは必ず何かしらの相談が来るようにはなりました。
「インタビュースクリプトを作るコツを教えて」くらいの小さい相談から、「最近こういう課題があってちょっとユーザ調査したいんだけどどうすればいいですか?」のような手前の大きい相談をしてくれたりとかも増えました。
今では5件くらいもUXリサーチが並行して進んでいます。

こんな感じです↑

ただこれを乗り越えた結果また別の課題が生まれてきました。

手が足りない

いろいろな人に頼ってもらえるようになったおかげで、僕一人ではリサーチが回らなくなってきました。(設計からレポーティングまで主に一人でやっていた)
自分1人で全てこなすのは物理的に無理です。
これまで取り組みで、noteのみんなリサーチをやりたくないわけではなく、やってみたいけど進め方が分からない、大変そうで腰が重いだけなのではと感じていたため、みんなにリサーチを主体的にやってもらうために、最初の一歩を軽くする取り組みを始めました。

まずやったのはノウハウのドキュメント化です。

例えばこれはリサーチのステートメントシートです。
普段リサーチを始める前に必ずステートメントを明文化するようにしています。
リサーチの目的は何で、結果をどう活用するのか。そもそも適してる手法はインタビューなのかアンケートなのか、もしくはリサーチでは明らかにならないことかもしれない。これらを最初にじっくり練って文章にするようにしているんですが、それをフォーマット化しています。
(noteのステートメントシート文化については、同僚の松下さんの記事で触れています。)

空欄のフォーマットと、過去の事例をお手本としてセットで誰でも見れるようにしています。

これはリクルーティングメールの文面のフォーマットです。社内で必要な手続き一覧化して、それを擦っていけば一応みんなできるよみたいな感じにしてます。

これはインタビューの導入のテンプレートです。最初は自分用に作ったんですが、これもみんなが見れるようにしております。
他にもインタビューのコツとか議事録やスクリプトのフォーマットとか分析のフォーマットとかもフォーマットとお手本事例をセットで保管するようにしています。

その結果、思ったより多くの人にドキュメントを活用してもらうことができています。
先程のステートメントシートを埋めた状態でリサーチの相談に来てくれる方が増えたり。これまではステートメント作成の説明のために僕がミーティングを組んだりしていたのですが、埋めてもらったたたき台を僕がレビューするだけで済んだり

また、副次的なメリットで、「どうやってリサーチ設計ってやればいいですか?」と相談されたときに、ストックしたドキュメントを共有するだけで済み、説明の手間が省けるようになりました。(これまではチャットで説明したり、ミーティングを組んでいた)
チーム立ち上げ初期から自分のノウハウ蓄積のためにドキュメント化してたのが役に立ったなと思っています。

僕がインタビューのコツをまとめた資料などを、僕がお願いするまでもなく「あれ読んでます」と言ってくれる方がすごい増えました。

 3. noteだからできたこと、楽だったこと

今までは苦労した事を結構話してきたんですが、逆にnoteだからこそできたこと、楽できたこともありました!

ユーザーとの距離が近い、リクルート手段が多い

noteでよかったことその1。
ユーザーとの距離が近い、リクルート手段が多いということです。
メールリクルーティングもするんですが、それ以外にも例えば↓

DMでユーザーに直接連絡が取ったりします。(noteというかtoCならでは)

実際のDMなんですが、noteの公式記事を引用してくれたり、直接noteの機能とかに言及しているツイートとかnoteが結構あります。検索したら出てくるので。
そこにDM突撃をするという方法です。
この方法のいいところは、noteについてわざわざ言及してくれている方は、サービスのファンか、何か運営に言いたいことがある人なので、温度感がかなり高いこと。なのでインタビューを引き受けてくれる方がかなり多いです。
プロフィール文や記事の内容でその人の詳しい属性や、noteの利用目的とかも推察できますし、一種のスクリーニングができるのが助かっています。

また、ユーザーテストを実施したクリエイターさんが、継続的に僕のTwitterのDMにフィードバックを送ってくれたり、特にお願いしてないのに事前に操作の様子を録画をして送ってくれたりする方もいらっしゃいます。クリエイターさんがこここまでやってくれるのはファンの多いnoteというサービスだからなのかなと思っています。

アクセシビリティのプロジェクトでnoteに関わっているfreeeのmagiさんもこう言ってます。

有志チームを立ち上げていい雰囲気

noteでよかったことその2は有志チームを立ち上げていい雰囲気です。

↑宇野さんがnoteに来て初めて行ったデザイナー振り返りの付箋です。

個々のワーキンググループのようなチームがここまで機能している組織は珍しいぞ!すごい!

UXリサーチだけではなく、アクセシビリティやデザインシステムも。
これは具体的にどういうところを見てそう感じたのか宇野さん聞きました。

(リサーチチームなどは)あくまで有志で始めたもの。誰かの命令で始めたものではない。
始める時は気持ちで行けるが、難しいのは継続。
やはり気持ちが途切れてしまったり、会社がそれを応援してくれない、「何の役に立つんだ」と言われたりとか。なので兼務している状態だと続けられなくなる。
そこを周りが応援してくれるし、やろうとしてくれる人たちの気持ちが強い。
結果的に何もサポートしなきくてもそのまま続いている。これは良い会社だと思った。

宇野さんの発言から抜粋、一部編集

4.今後の展望

最後にUXリサーチチームの今後の展望について。

1.今は現場で役に立つユーザビリティテストやインタビューをすることが多いですが、これからは経営層やPMの役に立つ、「事業戦略に影響を与える中長期目線のリサーチ」をしたいです。攻めのリサーチ的な。

2.そして、まだまだリサーチにかかるカロリーは高いです。うまく仕組み化してコスパ良くしたい。

3.社内でリサーチできる人を増やしたいと考えています。僕1人で回すのは限界が来ているので、みんながまずリサーチをやりたいと思ってくれるようにする。そしてノウハウを分配してみんなができるようになるといいなと思っています。今は勉強会とかも計画しています。

これにてnoteの取り組み紹介を終わります。ありがとうございました〜!




この後、イベントとしては全員でのパネルディスカッションやQ&Aコーナーが始まります。
現場ならではのリアルな悩みや、組織や会社のカルチャー、規模、自社サービスからクライアントワークによるリサーチの違いまで、本当に面白い話の連続なので、ぜひみてみてください。

当日のトークテーマチラ見せ↓

イベント動画のYouTubeのスクリーンショット。草野さんと事前質問が記載されたスライドが表示されいてる。事前質問。・noteでUXリサーチを始めた経緯は? • 社内で他職種にUXリサーチの重要性を啓蒙するためにしたこと ● 社外に伝える際に意識した点、発信するに至った経緯は? ・ どのくらいのリソースをリサーチに割いているの? • UXリサーチの経営的な効果を求められた際どうしてる? • 創業期のCXOやUXリサーチの重要性はどう説明したらいい? ・ UXリサーチを仕組み化していくにはどうしたらいいか?

イベントをちょい振り返り

アンカーデザインの木浦さん、メルペイの松薗さんと草野さんと、note CDOの宇野さんという豪華すぎるメンバーに囲まれたこのプレイベント。
開催が決まった時からプレッシャーで吐きそうになりながら準備していたのですが、いざ始まると自分自身が心から楽しめたイベントでした。

noteのロゴをバックにした集合写真。アンカーデザインの木浦さん、メルペイの松薗さんと草野さんと、note CDOの宇野さんと筆者
イベント終了後の一枚(撮影の時だけマスクを外しています)

イベント後のmihozonoさんの嬉しすぎるお言葉。mihozonoさんが忘れかけていた何かを思い出させることができたようでした。

そして、イベント後に図々しくも皆さんのみなさんの著書にサインをいただきました。控えめに言って最高すぎました。

イベント会場で著書にサインをしている木浦さんと、それを見ている筆者
サインを書いてもらった上に、さらに図々しく「仙田さんへ」って書いてください!とお願いしてる様子
木浦さんと、木浦さんの著書を手にもった筆者がこちらを見て笑っている写真
写真撮影にも応じてくださる木浦さんの神対応
草野さんと松薗さん、2人のサイン入り著書を手にもった筆者がこちらを見て笑っている写真
mihozonoさんからはメッセージも頂けました。これは家宝にします。
もしリサーチしていて辛くなったらこのサインを見返して元気を出します。


そして改めて周りの方々、noteのみんなやクリエイターさんに支えられているなあと実感したイベントでした。
視聴してくださった方、noteを読んでくださったみなさま、ありがとうございました。

本イベントはこちら!2022/5/28 開催です!申し込みはconnpassから!

noteのUXリサーチ関連の発信はこちらに溜まっていますので、よければ読んでみてください↓


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