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劇場版『ミステリと言う勿れ』は、ミステリというよりも感動的なヒューマンドラマでした

『ミステリと言う勿れ』は月9ドラマを観てあまりにも面白かったので、Kindleで全巻(ドラマON AIR当時は10巻まで)思わず大人買いしてしまった私です。

マンガを読んでいたら整くんのセリフが菅田将暉の声でそのまま耳元に聴こえてくるような錯覚を起こすほどで、あの独特のしゃべり方は相当研究され尽くしたものだったんだろうなーと感心しました。

あのしゃべり方に到達するまでに菅田くんの中でどんな葛藤があったんだろう?と本人に聞いてみたくなりました。

劇場版で描かれている【広島編】は2巻途中~4巻途中までの長いストーリーで、狩集家の「遺産相続事件」がどんな風に展開していくのかあれこれ推理しながらあっという間に読み進めた感じでした。

整くんを狩集家の「遺産相続事件」に「金と命がかかってる」と巻き込んだ張本人である汐路が起こした”自作自演”の一連の騒動については、整くんの鋭い観察力により比較的早い段階で解決に至ります。

自分の父親が居眠り運転で姉弟妹全員を死なせてしまったことへの「汚名返上」のために、どうしても「事故死」ではなく「殺人事件」として認めさせたかった汐路の切ない気持ちが痛いほど伝わってきました。

【広島編】の素晴らしいところはここからで、整くんが狩集家の人たちの写真に付けられた”バツ印”に気づき、実は「財産争い」ではなくもっと根深いところに汐路の両親たちの”死の謎”があったことに気づいてからのもうひと捻りの展開です。ここから事件を解決に導く整くんの推理力はさすがとしか言いようがありませんでした。

劇場版『ミステリと言う勿れ』は原作に非常に忠実で、まるでマンガのひとコマひとコマがそのまま実写化されたような感じでした。キャストもそれぞれ原作のイメージを崩さない雰囲気で、見事なキャスティングだったと思います。特に今回汐路を演じた原菜乃華の演技は素晴らしかった!心の傷を負っている汐路の表情と、静かに流す涙の演技が特に忘れられません。

菅田くんの整くんは今回の劇場版においても、もはや演じているというか整くんそのものにしか見えないクオリティの高さで圧倒されました。スクリーンで”どアップ”になった菅田くんの顔が頭に焼きついて離れません。

まるで「哲学書」のような『ミステリと言う勿れ』ですが、【広島編】にも心に残るいいセリフがたくさんありました。

子供って、乾く前のセメントみたいなんですって。
落としたものの形がそのまま跡になって残るんですよ。

『ミステリと言う勿れ』2巻より

自分の祖父が「殺し合う一族なんだ。自分もそうした。お前もそうなるって」と言ってたと汐路が整くんに告げると「どうしてそんなことを子供に…セメントが固まる前に。あなたは何を落とされたんだろう」と言うシーンは胸がしめつけられる想いでした。

子供時代に何気なく言われた言葉によって、子供たちのまだ固まらない心に残されてしまう傷を大人が勝手につけてしまう可能性もあり得ますよね。

それって多分あちらでは人の弱さを認めてるからなんだろうと思う。
人は弱くて壊れやすくて、病むことも倒れることもある。
それが当たり前だと。
だから修復する。治そうと思う。それができると信じてる。
翻って日本では弱さを認めない。弱い者は負けで、壊れないのが正しい。
壊れたら退場で、悩むことすら恥ずかしい。
相変わらず根性論です。
弱くて当たり前だと誰もが思えたらいい。

セメントに落とされたものがおそらくたくさんある。でも、あなたはまだ子供だから、セメントが固まりきってないから、きっと少し穴を埋めることができると思います。

『ミステリと言う勿れ』4巻より

汐路自身、自分の心が傷ついて生きてきたことを整くんに指摘されて、きっと思うところがあったように感じます。「弱くて当たり前だと誰もが思えたらいい」という整くんの言葉は汐路にはもちろん、私の心にも優しく響きました。弱い自分もきちんと認めてあげよう…と。

今回「TOHOシネマズ日本橋」で劇場版を観たのですが、『ミステリと言う勿れ』とQuizKnockコラボの「謎解きラリー」をやっていました。いい歳してなんなんですが、この手の「ラリー」というやつに弱い私だったりしまして、コレド室町付近を結構歩き回って無事に難問を攻略しました!プレゼント?のステッカーもGETしました。もう少し何かこう…というのは贅沢な話ですね(笑)。

「TOHOシネマズ日本橋」謎解きラリーの用紙とステッカー

劇場版『ミステリと言う勿れ』は、ミステリというよりも感動的なヒューマンドラマで、原作の世界観にどっぷり浸れると思います。

ただ、原作を読まずに観た方がもっともっと純粋に楽しめたかもしれない…と今さら思ったりはしています。(もう遅い…)


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