見出し画像

世界最高のサッカー選手、太田吉彰

雨、等々力

2011年4月23日。僕は、TVの前にいました。

TVでは、雨の中、2つのサッカーチームが戦っていました。

ボールが空中高く舞う。相手ゴール前で、スペースが空く。そこに、白いシャツが1人走り込んできました。

僕は「空いてる!」と、とっさに叫んだ記憶があります。

白いシャツは、倒れながら、シュートを放ちます。

時が止まったのか、静寂が訪れます。

ボールは、相手DFの足にあたってゴールに入りました。

この瞬間、僕にとって、このゴールは人生でもっとも美しいゴールになりました。そして、このゴールを決めた太田吉彰は、世界で最も偉大な選手になりました。今、この瞬間においても、このゴールと彼を超える選手は、いません。

足をつりながら、座り込みながら、何度もガッツポーズをしたあたりから、僕の記憶は曖昧です。だって、画面が滲んでいたから。ただ、あれ以来僕のゴールセレブレーションは、ヨシのガッツポーズです。

サッカーで泣いたのは、初めてでした。僕は幸いにも、家が壊れたわけでも、大切なひとを失くしたりとかはありませんでした。でも、間違いなく人生でもっとも困難な時期にいました。

あの日がなければ、あの日に試合はなかっただろうし、あの雨の日に試合なんてなかっただろうし、雨が降っていなければ…

僕は、なんであのゴールが入ったのか、いまでも説明ができません。わかりません。あんな足つりながら撃ったシュートがDFにまで当たってるのに、入るわけないんです。でも、入ったんです。あの時より、サッカーの試合を見ていて分かることがほんの少しですが増えてきました。でも、まだ分からない。ありえないんです。でも、ありえるんです。サッカーには、不思議な力があるって教えてくれたゴールでした。

あの日を境に、僕のサポーター人生が始まったのだと思います。でなければ、僕は、ベガルタ仙台の戦術ブログだって書いていなかったと思います。

すべての人の思い

太田吉彰。

世界最高のサッカー選手。

もう、右サイドを駆け上がらなくていい。

もう、雨の日に試合をしなくていい。

もう、つりながらシュートをうたなくていい。

もう、休んでいいんだ。

ありがとう。

「もう自分の足は正直その前から限界きていてダメかなと思ったんですけど、すべての人の思いが乗ってくれた」

これから僕は、ヨシの思いを乗せて、スタジアムに足を運びます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?