見出し画像

#109 イナバウアーの真実

こんにちは。3児の母さん、仙台凛です。
年長、年少、1才の子育て真っ最中。


\フィギュアスケートマガジンへようこそ/

このマガジンでは、「にわかファンを本物のファンにしよう!」をモットーに、スケート未経験&自称玄人ファンの私が、大好きなフィギュアスケートのことを熱く語っています!




2006年、トリノオリンピックで金メダルをとった荒川静香さんをご存知でしょうか。

荒川さんの代名詞と言えば、上半身を大きく後ろに反らせたまま滑る「イナバウアー」。


画像1


足の向きが実際と違ってやや変ですが(笑)、こんな感じのやつです。今回はそのお話。



本当は足技です

荒川さんの場合、あまりにも上半身の反り具合が素晴らしいので、イナバウアーは後ろに反り返る技だと思われがちです。

しかし!!イナバウアーは、足技の1つなのです。

昔、ドイツの選手がやり始めたのが始まりで、足を前後に開き、つま先を180度開いて真横に滑る技です。

つまり上半身をあんなに反らせなくても、立派なイナバウアーなんですね!!

ちなみに、そのドイツの選手の名前をとって「イナバウアー」と名付けられました。

荒川さんのイナバウアーは、これをさらに進化させたもので、個人的には「シズカ・アラカワ」など、新しい技として認定しても良いのではないかと思っています。

体操の白井健三選手も、国際大会で初めて成功させた技のいくつかに「シライ」という自身の名前が含まれた技を持っていますよね。


封印されていたイナバウアー

荒川さんは以前よりこのイナバウアーを得意としており、よく演技に組み込んでいたと記憶しています。

しかし一時期、イナバウアーを封印していたことがあるのです。

これを語るには、まず、フィギアスケートの採点方式について説明しなければなりません。


トリノオリンピックの少し前、フィギアスケートの採点方式が大きく変更されました。

それまでの採点方式は、乱暴に言ってしまうと、「審査員の感覚」で点数がつけられていました。


皆さん、お笑いのM-1グランプリを見たことはありますか?!

勝ち残った10組のお笑いグループが順にネタを披露していき、数人の審査員が点数をつけて、その合計点で優勝者が決まります。

あれって、ネタを披露する順番が点数に影響していると思いませんか?!

トップバッターのグループがものすごく面白いネタをやったとしても、審査員はおそらく100点満点はつけないでしょう。

はじめから満点をつけてしまうと、もしこの後でもっと面白いグループが出てきた場合、それ以上の点数をつけられないからです。

そのため、トップバッターで面白いネタを披露したグループには、100点満点をつけたい気持ちがありつつも、97点くらいに抑えられてしまうことがあると思います。

もしそのグループが10番目にネタ披露であったら、同じネタでも満点をつけられた可能性があるということです。


フィギュアスケートの採点も似たような感じで、審査員がなんとなくでつけていた部分があるので(あくまで個人的見解ですが)、演技をする順番も、少なからず点数に影響していました。



それが、トリノオリンピックの前に大幅に変更されたというわけです!!

技のひとつひとつに細かく点数が決められ、加点方式というルールになりました。

例えば、
2回転ジャンプ +10点
3回転ジャンプ +15点
4回転ジャンプ +20点
転倒したら   −5点
といったイメージです。(数字は私が適当に書いています)


ここでイナバウアーに話を戻します。

実は、あれだけ華麗な技にもかかわらず、この時の改正では、なんとイナバウアーには点数がつけられませんでした。

つまり、「イナバウアーをやっても0点」という採点ルールになってしまったのです。

非常に大きなルール改正だったため、多くの選手が、どうすればより点数を稼げるのかということを、実際の試合を通して研究していました。

荒川さんも同様に、新しい採点ルールに対応した演技の構成となり、この時期イナバウアーをしなくなっていたのです。


イナバウアーへのこだわり

フィギュアスケートは、技の難易度や完成度を競う競技である一方、美しさなど芸術面での評価も大切な種目です。

実は荒川さん、どうしてもイナバウアーを演技に組み込みたい!という強い思いを持っていました。

イナバウアーを封印したのは、点数がつかないからではありません。

「ジャンプなどの技でなるべく多くの点数を稼ぎ、イナバウアーを入れても、他の選手と競えるようにするにはどうすれば良いか?」

この課題解決のため、一時的にイナバウアーを封印し、他の技に磨きをかけていました。

研究を兼ねた試合だったため、オリンピックシーズンの荒川さんは、連戦連勝というわけではありませんでした。

しかし、地道な努力と研究の積み重ねにより、最終的には、限られた演技時間の中でイナバウアーを組み込めるだけの完成度の高いプログラムを作り上げたというわけです。


もしかすると、荒川さんの金メダルを、「ポッと出てきた選手がとれた」とか「棚からぼた餅」的に思っている方もいるかもしれません。

しかし、当時、優勝候補と言われていたロシアの選手(スルツカヤ)は、試合直前の練習のリンクで、荒川さんのことをじーーっと見ていたそうですよ。

本番で、イナバウアーの入った演技を見た時、私は本当に感動しました!!


今シーズンについて

新たなシーズンが開幕している中、今さらイナバウアー?!という感じもあったかもしれませんが、実はこのイナバウアー、今でもやっている選手がちょこちょこいます。

点数にならないのになぜ?!と思うかもしれませんね。

荒川さんのように、イナバウアーそのものを見せ場の1つとして構成している選手はあまりいません。

けれども、「ジャンプの直前に短めのイナバウアーをやってそのままスムーズにジャンプを跳ぶ」という取り入れ方をしている選手は割と多い印象です。

あの羽生結弦選手もやっています。

こうすることで、ただジャンプを跳ぶよりも難易度が上がるため、加点(ボーナス点のようなもの)がつきます。

テレビ放送の解説でも「イナバウアーからの〜3回転ジャンプ!」などと説明が入ることもありますので、ぜひ注目してみて下さい!


直流、玄人ファンの定義

選手の名前がついた技で印象深いものといえば、キャンデローロスピンでしょ!!と思った方は、勝手ながら玄人ファン認定です(^^)笑


フィギュアスケートの益々の発展を願って!!





さて、明日は何の話にしようかな。


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?