適応障害になって、最初に聴いたのは羊文学だった
僕は音楽に励まされるとき、目を見つめられて前向きな言葉を投げかけられるよりも、同じ方向を向いて同じ歩幅で歩いてくれるほうが好きだ。
その一歩一歩と共に、声にならない言葉が足元からぽつぽつと浮かんで、「なんであの時」とか、「あの頃は」とか、大きすぎて一口では飲み込めない思いを、少しずつ置いていける気がするからだ。
羊文学はそんな音楽にピッタリだと思う。
Vo/Gtの塩塚モエカさんの温かくも爽やかなハスキーボイス、3ピースバンドならではのシンプルなメロディーがその世界観を形作っている。
曲のテンポも散歩にちょうどいいぐらいの塩梅で、土曜日の午後がよく似合う。
そんな羊文学の基本情報をみていこう。
Band Info
Gt/Vo 塩塚モエカ、Ba/cho 河西ゆりか、Dr フクダヒロアからなる3ピースバンド。
所属レーベルはF.C.L.S.(2020~)
最初はチャットモンチーや東京事変、9mm Parabellum Bulletをコピーしたのち、オリジナルバンドとして活動を開始。
インタビュー記事などで、影響を受けたと答えているバンドは以下の通り。
・Pavement
・wet leg
・My Bloody Valentine
・Slowdive
・Ride
・Chapterhouse
・The Stone Roses
UKのオルタナティブ、シューゲイザーが多い印象。
レディオヘッドとかも好きそうだがどうだろうか。
羊文学としては初期から「メインストリームとアンダーグラウンドの両立」がテーマらしく、3ピースバンドだからこそのシンプルさを大事にしているとのこと。
最近では呪術廻戦のエンディング曲に抜擢されたり、ファーストテイクに出演したりと活躍が止まらない。
現在は初の海外ツアー「羊文学 Hitsujibungaku ASIA TOUR 2024」の真っ最中で、日本だけではなく海外にもその名を広め、ちゃんと評価されている。
個人的おすすめ曲
ここからは僕のおすすめ曲をいくつか紹介してきたい。
①Step
仕事で適応障害になり、休職をしていたころに聴いていた。
というか効いていた。
あれだけ好きだった映画は観ているようで頭に入らないし、何より外に出るのがつらい時期だったけれど、音楽だけは何となく流していて。
なんとか外に出れるようになってから、ようやく歌詞が頭に入ってくるようになったころ、ずっとこの曲を聴いていた。
メンタルクリニックの帰り道、地下鉄の長い上り階段を上っている間に、色々な人とすれ違った。
紺色のスーツで戦っているサラリーマン、腰をまげて一段一段上っているおばあちゃん、一段飛ばしながら駆け上る学ランの高校生。
すれ違いながら、当たり前のことが一緒に遠ざかっていく感覚があった。
当時の状況とこの曲の歌詞が重なって、その時の感情を思い出せる大切な曲になった。
憂いのあるメロディーから始まって、サビでは3ピースならではのシンプルで明るい一面が見え、間奏ではバチバチのシューゲイザーパートがくる。
羊文学のおいしいところをいっぱい詰めたような曲。
②あいまいでいいよ
羊文学のなかで、一番午後の昼下がりが似合う曲。
洗濯物干しが捗ってしょうがない。
YouTubeのTHE FIRST TAKEに、この曲で出ているので気になる人は確認してみてください。
英語で書かれたコメントも多くて、海外にも刺さってるんだなぁという感じ。
気になって一部訳してみた。
「このバンドとその曲を初めて聴きました。聴きながら目を閉じると、まるで日本にいるような気分になり、風を感じて新鮮な空気を吸い込むことができます。ありがとう、ファーストテイク!」
国は違っても感じることは一緒らしい。
この歌詞の部分の情景描写は本当に秀逸だと思う。
ちょっと前まではどちらかというと洋楽を聴いていて、歌詞の意味は分からないけど、その曲のメロディーだとか雰囲気、世界観を楽しんでいたけれど、日本語の歌詞を理解するってやっぱり大事だなと思うようになったきっかけの曲。
③ワンダー
個人的に外国の絵本みたいな雰囲気のする曲。
再生したら、一瞬で違う世界に引き込んできて「飲まれちゃまずい」と思うほど力がある。
空間が広がっていく音づくりや厚みのあるコーラス、スローテンポなシューゲイザーがファンタジーな世界観を作り上げている。
サビのハモリが秀逸。
この時の自分の日記を確認したら、
「この世の理不尽を受けるたびに勇気を出してみるけど、結局いつも同じところに戻ってきていしまうことを悟って、そんなことは誰にも知られず、ただひっそりと自分が解けていくような感覚」
って書いてあった。飲まれてるやん。
④more than words
「呪術廻戦~渋谷事変~」のエンディングに選ばれた曲で、このタイミングで一気にメインストリームに躍り出た気がする。
エンディングの映像の綺麗さと相まって、都会の街の無機質感と下町の感性みたいなものがにじみ出ている。
個人的には2番の入りから、ギターを刻みながらリズムを作っていく部分が好み。
この部分で、ガラッと曲の雰囲気が変わるし、「また何か始まる感」を伝えてくれる。
そしてこの曲のすごい点は使われているコードが5つだけということ。
F5/G5/Am7onC/Am7 G(多分)
サビ前に1つだけ別のコードが使われていたりするけれど、基本的にこれだけ。
あ、ギターやってる皆さん、これ1カポです。
要は使ってる部品はこれだけで、魅せ方が上手い。
シンプルなんだけど満足感が半端ないスルメ焼きみたいな曲だと思う。
最後に
羊文学にはまだまだおすすめしたい曲が山ほどあるのですが、とりとめもなく長くなってしまいそうなので、この辺にしときます。
偉そうに語ってきましたが、ワンマンライブもまだ行ってないし、CDもそろえられてないので、またその時の感想を記事にしようかと思ってます。
皆さんのおすすめの曲があったりしたらコメントで教えてください~
それでは!
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