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アンドロイド転生206

リペア室

キリはアンドロイド達に柔術などをインストールして半月に一度ターゲットの家を襲い金品を奪うのだと楽しそうに語った。人間に対し暴力行為は一切行わず迅速にかつ平和的に強奪すると言う。

被害者はそもそも正当な手順で得た資産ではないので被害届も出せない。アンドロイドが奪った品はブラックマーケットで取引される。その莫大な利益がホームの資金になるのだ。

キリの悪びれない様子にアオイは不満だった。
「犯罪よ…!それとこれとは話が違う…!」
「どう違うの?」
キリの揺るぎない瞳に怖気付いた。

だって…だって窃盗は犯罪だ。いくら悪人から奪うと言えど、行っている事は大手を振って自慢出来るものではない。犯罪者から奪えば良いというのは程の良い欺瞞だ。

それに…それにホームの人達は悪人を成敗しているのだという大義名分を掲げてアンドロイドを使ってる。我々の服従性を利用しているのだ。それは卑怯ではないか。

タケル…。タケルはどう思っているのだろう?自分と同じ人間の心を持つ彼は。
「タケルは…?」
「タケル?アイツはリーダーだよ」

アオイはショックだった。生前の彼の父親は職場から横領して逃亡したのだ。彼はいわば犯罪を憎む立場ではないか。アオイは裁判官だった自分の父親を思い出す。尊敬していた。

「わ、私は…そんな事はしたくない…!」
「構わないよ。私は命令はしない。アオイの好きな様に生きればいい」
私は参加しなくて良いのだ。ホッとした。

だが直ぐに不安になった。
「ホームにいる資格はある?」
「当たり前だよ。うちらは家族なんだから」
キリは満面の笑みを見せた。アオイは胸を撫で下ろした。

キリはアオイをじっと見て笑った。
「心が変わったら教えて」
「変わることはないと思う」
そう。たとえどんな事があろうとも犯罪の片棒を担ぐのは嫌だった。


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