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アンドロイド転生211

平家カフェ

タカオからアリスを手伝うように言われて2階にやってきたアオイ。扉が開いており覗くとなんとキスをしている。え?キ、キス…?アオイは驚いて男女を呆然と見つめ続けた。

アリスと店主の息子だ。恋人同士なのか。アンドロイドと付き合う人間。最近台頭してきたニュージェネレーションという若者だ。2人はアオイに気付いた。キスを見られても平気な様子で微笑んだ。

アオイは気詰まりで階下に戻りたかったが、今更消えるのもバツが悪い。どうすれば良いのだろう。まるで邪魔をしたようで自分の方が気恥ずかしかった。アリスは人差し指を唇に当てた。

「アオイ。内緒にしてて。タカオも彼の両親も知らない事なの」
そうか。秘密の恋なのか。そうだろうな。大手を振って人にも親にも告白できないだろうな。

アオイはが頷くとアリスはニッコリとする。美しかった。マシンも恋をすれば輝くのだろうか。アオイは青年を見た。アンドロイドを恋人にするってどんな気持ち?本気なの?遊びなの?

「こんにちは。リツです」
笑顔が自信に溢れていた。ニュージェネレーションだからって何の問題もないという顔つきだった。でも…結局は両親に内緒なんでしょう?

アオイはもどかしい気持ちになったが頭を下げた。
「アオイです。宜しくお願い致します」
リツが親しげな笑顔を見せた。
「アオイも夜の狩は楽しんでる?」

アオイは慌てた。
「わ、私は…強奪はしません…!」
「どうして?」
「いくら悪人とは言え、その人達から盗むなんて自分は罪を犯すことになる。それをしたくないの」

リツは目を見開いた。
「へえ!皆んな楽しんでるのかと思った」
アオイは憮然となった。
「あなたは…恋人に…強奪させても平気なの?」

所詮はマシンだと思っているのだろう。結局は人間にとって都合の良い相手なのだ。アオイはホームにやって来てアンドロイドの立場と人間の心の間で揺れている。

タウンにいた頃は自分と人間に明確な差があった。私は使われる存在。それに納得をしていた。それで良かったのだ。だが、ホームの人達のアンドロイドを尊重しながらも悪事をさせている。

そんな相反する行為に疑問と憤りを感じていた。家族だと言いながらも我々の服従性を利用しているのだ。不服でならなかった。アオイは人間とマシンの差を実感して悲しいのだ。

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