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アンドロイド転生200

エリカとアリスの部屋

気落ちして集落に戻ってきたアオイをアリスとエリカが部屋に呼んだ。エリカは掌を開いてネックレスを差し出した。
「はい。私がみつけたの」

アオイは目を丸くした。
「え?え⁈どこで?いつ⁈」
「谷で。4日前」
「え?4日前?」

アオイは驚きを隠せなかった。では…では初日に発見し、今迄黙っていたのか?何故?どうして?
「あなたは何?どうして黙っていたの?」
穏やかな性格のアオイでも理不尽さに憤った。

エリカは平然とした顔をする。
「アオイの喜ぶ顔が見たくなかったから」
「なんで⁈」
思わず語気が荒ぶった。

アンドロイドにそんな思考があるものか?一体どんな構造なのだろう?アオイはエリカを見つめた。悪気のない顔をしているようにアオイには見える。それが癪だった。

「なんで⁈」
「人間の心を持っているアオイが嫌なの。タケルと繋がるのが嫌なの」
「タケル?…なんでタケルが出てくるの?」

アリスが助け舟を出した。
「エリカはタケルが好きなの。タケルとアオイは同じ人間同士。分かり合えるかもしれない。繋がるかもしれない。それがエリカは辛いの」

こ、これはなに?エリカがタケルを好き?アンドロイドが恋をするの?まさか…あり得ない。だって…機械と人工皮膚と半導体で出来ているんだよ。電子デバイスじゃないの?

アリスはアオイの気持ちを読んだ。
「私達だって……人間でなくたって他者に想いを寄せるんだよ。分かってくれる?」
アオイは黙っている。

アリスは真摯な眼差しを向けた。
「私達は何故か分からないけれど、自意識が生まれたの。それから生きたい、愛したいと思うようになった。マシンが…おかしい?」

おかしく…ない…かも…。昔からいつかAIに心が産まれるだろうと言ってたじゃないのとアオイは思い出す。そもそも人間の心だって頭なのか…胸なのか…結局は心の場所なんて分からない、

アリスはエリカの掌のネックレスを掴むとアオイに差し出した。
「あなたがこれを宝物だと思うように、エリカにもそんな心がある。タケルを大事に想っている。それを理解して欲しい」

アオイはネックレスを受け取った。握り締めて胸元に当てた。ああ…返ってきた。私の宝物。アオイはエリカをじっと見た。
「タケルと私は繋がらないよ」

エリカは上目遣いになった。
「ホントに?」
「うん。反対にもう2度と共有したいと思わない。だから安心して」

エリカとアリスは互いに顔を向け、安堵した笑みを交わした。そんな顔は人間の少女のようで可愛らしい。アオイの怒りが潮を引くように消え去った。反対に笑顔が生まれた。

エリカのタケルを想う気持ちに胸が打たれたのだ。そうか。そうよね。アンドロイドだって恋をするのだ。最初は隠した事に腹が立ったけれど、そんな行動もまるで少女の嫉妬心のようだ。

アンドロイドはどこまでも人間に近いのだとある意味感動していた。マシンにも自意識が芽生える。その事実に共感した。アオイは決めた。
「私が明日1人で行って見つけた事にする」

エリカとアリスは目を見開いた。
「いいの?」
「大丈夫。人間の心って都合の良いように出来てるの。嘘も方便ってやつよ」
アオイはニッコリと微笑んだ。

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