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アンドロイド転生213

白水村:アリスの部屋

深夜。スリープ機能で横になっていたアリスは自分の内側に囁く声を聞いて覚醒した。空中に立体画像が浮かぶ。リツだった。慌てて起き上がる。リツは微笑んでいた。

『寝てた?』
「うん」
『親に言ったよ』
「ど、どうだった?」

リツは笑顔になる。
『母さんは知ってたよ』
「え?」
『俺が誰とも付き合わないし、アリスが来る日は嬉しそうだってさ』

アリスは溜息をついた。
「知ってたの…。お母さんって凄い」
『好きにしろだってさ。成人した息子にアレコレ言いたくないってさ』

アリスは呆然となる。
「ほ、ホントに…?」
『ホントだ』
「リツ…リツ。私、嬉しい」

リツはニッコリとした。
『アオイに宜しく言ってくれ。アオイの一言があったから動けたんだ』
そう。アオイがリツの背を押した。

2人の仲が恥じる事がないなら堂々とすべきだと覚悟が決まった。アリスは何度も頷いた。
「うん…!うん!」
暫く他愛もない話をして恋人達は通話を切った。

アリスは意気揚々とアオイの部屋に行った。
「有難う。私達ね。公認の仲になったの」
「え?」
「リツの両親が認めてくれたの」

アオイは目を丸くした。マシンとの交際を親が認めた?そんな事ってあるのだろうか?だが考えてみた。リツの両親は2060年代以降に生まれたのだ。既に生活の中にアンドロイドがいる時代だ。

たとえ息子がマシンに恋をしていても偏見がないのかもしれない。時代は流動的なのだ。自分が生きた時代だって他国では同性婚が認められていた。更に90年以上経てば新たな認識が生まれるのだ。

サクラコのように複数恋愛や 、精子・卵子バンクベビーが推奨され、果ては同性間の子供が誕生する世の中なのだ。1997年に生まれた自分とは世代が違う。凄い時代になったものだと実感する。

「良かったね。おめでとう。幸せになってね」
アリスの笑顔は輝いていた。
「私は皆んなが幸せになってほしい。アオイの幸せって何?シュウを愛する事?」

アオイの頬が強張った。
「シュウとは…もう逢えない…」
「なんで?時間がないんだよ。逢えば良いじゃない?後悔は良くないと思う」
「そうだけど…」

アリスはアオイの手を掴んだ。
「あなたが逢いたいなら私は協力を惜しまない」
「あ、有難う…」
シュウと逢う?本当に?アオイの心は千々に乱れた。

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