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アンドロイド転生210

2114年6月

「アオイも連れて行くか」
タカオがアリスを見下ろした。今日は月に一度の新宿に出向く日だ。タウンで強奪した金品の取引と日用品の受け取りをするのだ。アリスは頷いた。

ホームから下山し、一同は車に乗って都内に向けて出発した。タカオが笑顔を見せた。
「どうだ?アオイ。気分転換になるだろう?」
「はい」

アオイは嬉しかった。ホームで暮らして3ヶ月。集落での生活は赤ん坊や幼児の世話。ナニーとしての職務を果たせるのは満足だったが、久し振りの遠出は気晴らしになった。

2時間半後。新宿のカフェに到着した。ホームとは縁戚で親子3人で営んでいるとの事だった。中年の店主とその妻。息子が出迎えてくれた。青年はリツと名乗った。笑顔は爽やかで優しげだった。

アリスはタカオ達に向かって微笑んだ。
「じゃあ、荷物を運びます」
アリスは恋人のリツと2人になりたくて、そそくさと2階に上がって行った。

タカオとアキラは強奪した金の延べ棒10本をテーブルに並べた。その様子を見てアオイは驚く。店主はひとつひとつ重さを測って満足そうに頷いた。彼の妻がアオイに顔を向けて手招きをした。

「新しいお仲間ね?次のターゲットをインストールするから首を出して」 
自分は戦力外と思ったが、後で仲間にダウンロードすれば良いと判断した。

頸に無線ケーブルが差し込まれると瞬時に情報がメモリに蓄積された。ターゲットの所在地を知って驚いた。ここは…シュウの隣の家ではないか。あの地域は裕福な街区だ。

やはり反社会的な事をして富を得ているのかと残念な気持ちになった。それよりも…シュウはどうしているだろうか。彼の年齢は…誕生日を思い出し、119歳になったと知る。

人生140年と言われる時代だがいつ何が起こるか分からない。不安になった。私も金品強奪に参加すれば…。仲間が隣の家に押し入っている間にシュウの家を訪ねる。

友人のマナミに取り次いでもらえれば会えるかもしれない。いやいや、強奪は真夜中だ。そんな時間に訪問するわけにはいかない。それとも…コッソリと忍び込む…?

柔術をインストールすれば容易いかもしれない…。ハッと我に返った。何をしようとしてるの?私は。泥棒稼業は犯罪だと言って夜の狩を拒否してるのに。

第一シュウと会って何と言うのだ?彼は輪廻転生を信じていない。アンドロイドの自分がアオイだと語ったところで一笑されるだけだ。もう諦めるのだ。彼とは自分が死んだ時に終わったのだ。

タカオが2階を見上げた。
「アオイも手伝って来てくれ」
アオイは頷いて階段を登った。扉が開いていたので覗くと男女が抱き合ってキスをしていた。

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