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アンドロイド転生96
2105年10月
老人施設
アオイはヒナノにゆっくりと近付いた。嬉しさのあまり感激して涙が溢れそうになる。ああ。あなたにまた逢えるなんて…!アオイは声を掛けた。
「こ、こんにちは」
みだりに話し掛けるなとアオイの内側から警告音が鳴る。ヒナノは目を上げ応えた。
「こんにちは」
懐かしい声。確かに老齢だがその短い口調でもヒナノだと分かる。
アオイは息を吸い込んだ。 「ご一緒しても宜しいですか?」
ヒナノは一瞬考えたが微笑んだ。
「どうぞ」
ヒナノが応対してくれた事でアオイの音が止む。ホッとした。アオイは相向かいに腰掛けた。ヒナノは繁々とアオイを見つめた。軽く小首を傾けた。
「あなたは入所者さんのお身内かしら?」
アオイは首を横に振った。
「アンドロイドです。サヤカと申します。でも心の名前もあります。アオイです」
「アオイ…」
慌てるな。アオイは自分に言い聞かせる。ヒナノもシュウ同様に高齢なのだ。突拍子もない事をいきなり言って、体調に異変でも来したら困る。アオイはヒナノを驚かせないように優しく微笑んだ。
「ニカイドウアオイさんをご存知ですか?」
ヒナノは応えなかった。一体何を言い出すのだろうと訝しんでいる様子だ。
「私はニカイドウ家と懇意にしている者です」
「そう。…アオイは若くして亡くなったのよね。もう随分昔の話。…それで?何しにあなたは来たの?」
アオイは話題を変えた。
「…先日、カノミドウシュウ様とお会いしました」
ヒナノは少し驚いてすぐに微笑んだ。
「シュウちゃん?懐かしい。元気だった?」
「はい」
妻は倒れてしまったけれど本人は元気そうだ。
アオイは唇を舐めた。
「あなた様は、今お身体で具合の悪いところはないのですか?」
「…血圧が高いのと膝くらいかしら?どうして?そんな事を聞くの?」
高血圧か…。突拍子もない話で血圧が上がってしまうだろうか。大丈夫だろうか。慎重にならなくてはならない。本当に年寄りと話すというのは大変なのだなと実感した。
※ヒナノとの想い出のシーンの抜粋です
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