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アンドロイド転生201

翌日のこと

雨が止み陽光が射した。アンドロイド達がそれぞれの仕事を始めた頃にアオイはタカオに近づいた。
「1人で探しに行ってきます」
「俺も行くよ。ルイも行くか?」

ルイは唇を尖らせた。
「うーん。本当に見つかるの?」
「もしかしたら、崖にあるかもしれないの」
ルイは悩んでいたが首を縦に振った。
「分かった。行く」

3人はアオイが飛び降りた断崖にやってきた。アオイはポケットからネックレスを取り出すと地面に落とした。間もなくルイが叫んだ。
「あ!これじゃない?ほら!見て!」

アオイは来た道を戻ってしゃがみ込んだ。
「あった!」
アオイは喜びの声を上げ、ネックレスを拾った。
「間違いない!これよ!ルイ!有難う…!」

ルイは瞳を輝かせた。
「え!ま、まじかよ!と、父ちゃん!俺が見つけた!俺が見つけたんだぞ!」
「偉いぞ。ルイ」
タカオは息子の頭を強く撫でた。

集落に戻るとリペア室に行き、切れたチェーンの修復をキリに頼んだ。ルイは自慢げに胸を反らせた。
「母ちゃん!俺が見つけたんだからな!」
「さすがキノコ採りの名人!」

間もなく修理が済んだ。ほんの少し短くなったネックレスはアオイの胸元で輝きを取り戻した。アオイは口元に笑みを浮かべて小石に触れた。
「モネ様。戻ってきましたね」

エリカはアオイをじっと見つめた。アオイの嘘が皆を幸せにする。誰も傷ついていない。ルイなどはジャンプしている。タケルを見た。微笑んでいる。ネックレスが見つかった事が嬉しいのか。

もし、私が隠したと知ったらどうするだろう。どう思うだろう?エリカはタケルに近づいた。
「タケルも嬉しいの?」
「ん?良かったんじゃないの」

エリカは息を吸い込んだ。
「実はね…」
「エリカ、ちょっと来て」
アリスがエリカをその場から連れ出した。

廊下に行くとアリスが振り返った。
「ダメよ。言っても誰も幸せにならない。このままで良い。黙っている事は罪じゃない」
「ホントに…?」

アリスはエリカの頬を包んだ。
「アオイがあれで良いと判断したの。それで全て上手くいった。あなたが正直に話したら、ルイは見つけた事にならなくなる。ルイが悲しむ。そしたら親も悲しむ。人間を不幸にしてはダメ」

「分かった…」
エリカは頷いた。アリスの考えの深さを理解した。アリスの方が私よりも賢い。だからリツに愛されるのだ。人間に…。

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