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アンドロイド転生212

平家カフェ

『私達は家族だよ』
アオイはキリの言葉を思い出して不満になる。まさか。本当は違うでしょう?だって…家族に罪を犯させる?どうせ下に見ているのでしょう…?と。

そうよ。所詮はマシンなのだ。自意識が芽生えたとしても人間とアンドロイドには大きな隔たりがある。もし強奪に失敗して万が一誰かが捕まっても心は痛まない。そんな存在。

リツはニッコリとした。
「盗んで得た資金の半分は世界の難民に寄付しているんだよ。僕はアリスが誇らしいよ」
寄付をしているのか…。でも泥棒に変わりない。

アリスが柔かに微笑んだ。
「誰かにとっての悪が誰かにとっては正義になるの。私は自分のしている事が誰かを救うことになるなら幸せよ」

物事には違う側面があると言う事だ。だが…しかし…とアオイは思う。アリスはアオイの表情を読んだのだろう。優しく微笑んだ。
「良いのよ。アオイがしたくないなら」

アオイが頷く。アリスは続けた。
「キリだって自由にしろと言うでしょう?ホームには人間とアンドロイドの垣根はないの」
そんな事はない…!アリスは何故分からないの?

アオイは腹立たしくなった。
「垣根がないなら何故2人の事を黙っているの?恋人だと公言しても良いじゃない?」
思わず出た言葉に直ぐに失敗したと思った。2人の付き合いに口を出す権利はない。

ああ…。自分は…こんな…人様にあれこれと言う人間ではなかったのに。一体どうしちゃったの?ホームに来てから私は何だか意地悪だ。恥ずかしい。
「あ…ごめんなさい」

リツは微笑んだ。
「本当にそうだね。内緒にしてるなんておかしいな。ちゃんと言うよ。親に」
アリスはリツの腕を掴んだ。
「ダメよ!私は誰も不幸にしたくないの!」

「アリスと付き合って息子が幸せなんだ。親は喜ぶに決まってる。今晩、じっくり話す。信じろ」
2人は見つめ合った。自分が放った言葉で流れが変わった事にアオイは慄いた。大丈夫だろうか。

リツは段ボールを眺めた。
「よし!荷物を運ぼう。アオイも手伝ってくれるのか?」
その為に来た事を思い出した。
「う、うん」

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