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アンドロイド転生188
白水村:リペア室
男性はアオイの上半身を持ち上げた。女性がアオイの首の頸椎と頭を慎重に連結させ、次いで空いた胸に手を入れ首から多数伸びているコードを引っ張り内部のコードと接続した。
心臓部に蓋をして人工皮膚をなめす。首の部分も皮膚にたるみがないように掌で押さえつけた。女性は満足して頷いた。頸の電源をオンにするとアオイは自分自身の身体を取り戻した。
女性からTシャツとショーツ。そしてハーフパンツを渡されアオイは服を着た。アンドロイドと言えど、裸体でいるのは恥ずかしい。漸く安堵してホッと溜息をついた。
2人を見る事ができた。40歳前後の白衣を着た女性。意志の強そうな顔をした美しい人だった。男性は彼女と同年代に見えた。髭を生やしていた。着古した服を着ていたが爽やかで清潔感があった。
アオイは自然に胸元に手が動いた。ネックレスがない…!モネから貰った宝物。修理中にどこかに置いたのだろうか。途端に不安になった。
「あ!あの!ネックレスは?」
女性は首を傾けた。
「ネックレス?…なかったよ?」
アオイは冷水を浴びたような恐怖を覚えた。
「そ、そんな…!」
彼女は眉を上げて男性に顔を向けた。
「ねぇ?知ってる?」
「知らん」
男性は首を横に振った。
「お、お願いします!大切な物なのです…!もう一度手にしたいです!どうか!どうか…!」
「じゃあ…川にでも落ちてるのかもな。よし。後で俺と一緒に探しに行こう」
アオイは驚いた。初期化するアンドロイドとネックレスを探しに行くのか?それは大変嬉しい事だが、そこまで譲歩してくれるのか?
「一緒にって…私も宜しいのですか?」
男性は微笑んだ。優しい笑みだった。
「だってどこらへんで失くしたか分からんから」
アオイは決意する。よし。善は急げだ。
「いつ行きますか?今すぐでもお願いします!」
男性は両手で制した。
「まぁ待って。落ち着いて。夜だから見えないよ。明日の朝イチで行こう」
「で、では…初期化を待ってくれるのですね?」
「初期化?」
男性は不思議そうな顔をした。初期化とはアオイの12年間の記憶を消すという事だ。新しい派遣先では過去の記憶など必要がないのだ。
アオイは頭を下げた。
「先程、別の職員の方に言われました。怖くて逃げ出してすみません。でもネックレスを見つける迄は待ってくれるんですね?有難う御座います」
女性は指を鳴らした。
「ああ!ここがラボだと思ってるんだ!なんか話が変だと思った。そうか。そうか。違うよ。ここはホーム。私はキリ。この人は旦那のタカオ」
ラボじゃない…?アオイは目を丸くした。
「それと叔父のケンジと従兄弟のリョウ」
アオイは奥にいる男性2人に気が付いた。2人は柔かに微笑んで手を振った。
キリの瞳がキラキラと輝く。
「断崖から飛び降りたあなたを回収して修理したの。で?名前は?なんて言うの?」
「サヤカ…。いえ。アオイ…アオイです…!」
「ホームにようこそ。宜しくね。アオイ」
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