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「君たちはどう生きるか」を観た

心に残ったシーンをただただ書き連ねてます。
ネタバレありの勝手な感想です。映画を観た人だけ読んでください。



私が知っていたのは、ポスタービジュアルと主題歌が米津玄師さんの地球儀であるということ。こんなに事前情報なしでうてる映画って今後もうないんじゃないか、パンフレットが発売され情報解禁になる前に体験したかったのだ。舞台がどこで時代はいつなのか、そもそも人間が出てくるのかもわからない。どこに連れて行かれるのかミステリーツアーに参加する気分だった。


まず火事のシーンすごくなかったですか?熱で歪む視界、鼓膜が押しつぶされそうな感じ。私は「母と息子」の設定に問答無用に弱いので冒頭でもう泣いてます。

眞人のお父さんの再婚相手がお母さんの妹だということは「その人はお母さんにそっくりな人だった」という眞人の言い方から大人ならピンとくるだろう。ヒミ様のこともキリコのこともわざわざ説明されるわけでもなく「もしかしてそうなの?」とじわじわ自分で気づいていく気持ちよさがあった。読み解いていくという方がいいかもしれない。なんとなく児童文学を読んでいるような、世界に没頭する感じがあった。ふしぎの国のアリスみたいに。次々場面が切り替わって不思議な生き物がいて残酷に見えてもそれぞれ自分の正義があり、妙に納得する。

私は夢と現実の狭間みたいな世界が好きなので、夏子さんが遠矢を射って眞人が水の中に倒れるシーンがめちゃくちゃ好きだ。あのどこから夢だったの?みたいな、なんなら起きた時に夢がはみ出てベッドに水を連れてきてる表現はゾクゾクした。


眞人が喧嘩をして家に帰る途中で石を手に取った時、たぶん映画館中の人が「まさか…やめろ!!!」って心の中で叫んだんじゃないだろうか。あれは何のためだったんだろうって観終わったあとも考えてた。最初は完全な被害者となることで喧嘩相手に一矢報いようとしたのかと思ったが違うだろう。喧嘩相手にではなく父と夏子さんに責めを負ってほしかったのかもしれない。実際夏子さんは「姉さんに申し訳ない」と心を痛めていた。だから夏子さんを探して産屋に入った時「あんたなんか嫌いよ!」と言われて眞人はガツンときたのではないか。当然享受できると思っていた愛情がそうではなかった。夏子さん側も努力して愛そうとしてくれていた。それまで「父さんの好きな人」だったのが初めて「夏子母さん」になった。


大叔父が石の積み木を「3日にひとつ積みなさい」と言ったのもずっと心に残ってる。どういう意味なんだろう、何の比喩なんだろう。でもわからないままでもいいとも思う。不思議なシーンも夢みたいなシーンも残酷なシーンもわかるもわからないもまるごと受け取って心にしまっておきたい。そういう映画体験だった。


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