組織にはびこる複雑な問題がなぜ発生するのか、解決のアプローチまでをナラティヴ・アプローチの観点からまとめてみた

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組織で残っている問題は厄介なものばかり

 組織で発生する問題は既存の方法で解決できるもののことを「技術的問題」といい既存の方法で解決できない問題を「適応課題」と定義されています。

 適応課題についてはハウツーで解決できることが多いため、社内に知見を持っている人がいれば勝手に解決してくれます。そのため、組織に残された問題は社内の知見では解決できない厄介な適応課題ばかりということになります。

 では適応課題を解決するにはどうすればよいのでしょうか?それは「対話」で解決するしかありません。組織というのはそもそも関係性の集まりです。しかし、当然にお互い分かり合うことはありません、というのも個々の生い立ちや育ってきた環境、価値観、置かれた状況の異なるナラティヴを生きているからです。私たちは分かり合えることが無いということを前提に考える必要があります。しかし、私たちは「普通」「常識」「一般的に」「当たり前」と分かり合えていることを前提に考える傾向があります。そこに落とし穴があるということです。

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組織の問題はどうやって発生する?

人間同士の関係性についてある哲学者は2種類あるといっています。

「私とそれ」の関係は人を道具的に捉えた関係性です。例えば、妻は旦那をたてて、家事はそつなくこなし、穏やかで子供にも優しく.....といったように私の中の「妻とは」という概念を作り上げ期待してしまうというものです

「私とあなた」の関係は代わりのいないあなたと捉えた関係性です。例えば、妻がいつも子供に怒っているのはなぜだろうか?理由を知ってその問題を解決するサポートができないかなどといった具合で私の中の「妻とは」はいったんおいておいて、妻がいつも笑顔で暮らせるために私は何ができるだろうかと考えるといったものです。

適応課題の種類

適応課題の種類は以下のものが考えられます。すべての問題に共通しているのはどちらか一方もしくはどちらとも自身のナラティヴの中では正論だということです。

①ギャップ型:現実と理想のギャップを埋めるための課題

②対立型:どちらも立場上の論理では正論だが、相手にとっては不都合な課題

③抑圧型:言いにくいことを言わない

④回避型:恐れや厄介ごとに巻き込まれないために問題をすり替えたり逃げたりする

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対話のプロセス

対話は決して相手を打ち負かすものではありません。お互いのナラティヴを理解し、どうすれば分かり合えるのか、お互いの正論を守ることができるのかを見つける行為です。例えば桃太郎の物語においてはサルはきび団子が好物で喜んで食べて鬼退治に行くのですが、さるかに合戦ではサルはかきをたべお母さんがにに悪さをし、最後は仕返しされてしまいます。ナラティヴが異なるもの同士が正論をかざして話をするというのは内容の異なる物語同士の正論を振りかざしあうようなものです。だから、お互いの知る必要があるということです。

①準備する:自分と相手のナラティヴが異なり、適応課題があることに気づく

②観察する:相手の言動や状況を見聞きし、相手のナラティヴを確かめる

③解釈:相手にとって自分のナラティヴはどう映るか、どんなアプローチが適切かを探る

④介入:実際にアプローチしてみる。うまくいかない場合はまた観察してみる

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対話を阻むもの

対話は簡単にできるものではありません。例えば権力がある方から「自由に意見を言ってもいいよ」と言われても、本心を聞き出すことは難しいでしょう。権力がある方はそういう悲しい現実(どれだけフランクでも敷居を下げても部下は本音を話してくれないなど)を受け入れたうえで対話をしなければ相手のナラティヴを知ることはできないでしょう。

①迎合型:自分の考えを主張することをあきらめ、相手の考えの通りに自分の考えや行動を変えること

②押しつけ型:ポジションパワーが強い人が弱い人に対して一生懸命になる行為など

③なれ合い型:お互いが分かり合え、良い関係性を築いたときにこの関係性を維持しようとし言いたいことを言わないケースなど

④孤立型:熱量やノリの違いに対して背を向けて関わろうとしない行為

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まとめ

結局のところ組織で残っている問題はほとんどが適応課題であり、その原因の多くは関係性の改善によって解決できる多くの問題がある。関係性改善のためには自分自身のナラティヴは偏りがあることを自覚し、相手のナラティヴを知る必要があるのであるが、それは簡単に知ることはできないのでじっくりと取り組む必要がある。そして、知ることができたならば相互にとっての正論を探す行為こそが、適応課題を解決することができる試みの一つであるといえる。


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