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危険な国、ニッポン

冷たい雪の降りしきる今日、電車の乗り換えで数年ぶりに登戸駅に降り立った。
新宿で働いていた社会人1年目、少しでも通勤時間を短くしたくて、登戸駅周辺に引っ越したは良いものの、日々の多忙な業務と小田急線の満員電車、帰宅後も持ち帰った仕事をこなし、近所のスーパーの半額シールのついたお弁当を食べ、倒れるように眠りにつく生活。週末は遊ぶ予定をたくさん立てて、ストレス発散。月曜日が来るのが怖かった。心が疲れていた。


病気が発覚し、東京からの脱出をリアルに考え始めた。奄美大島への転職が決まり、いよいよ移住。新宿勤めの忙しい生活とは打って変わって、自然豊かなのんびりとした島暮らし。ユニークな移住者たち。美味しい食べもの。新天地に慣れるのに、時間はかからなかった。


そんなハッピームードの中で、かつて住んでいた登戸駅周辺で起こった通り魔事件をいち早く母から知らされた。身震いした。近所で起こった事件だった。子どもを狙った事件だった。子ども17人と保護者2人が刺され、そのうち2人が亡くなった。登戸駅から奄美大島へ引っ越して、2ヶ月目の出来事だった。

亡くなった方々、殺害現場を目撃し、生き残った子どもたちの心境、加害者の身勝手さ、加害者を追い込んだこの社会、、、。悲しく、恐ろしく、怒りで身震いした。胸が張り裂けそうだった。


久しぶりの登戸駅。かつて住んでいた家の周辺には近づけなかった。また身震いしたのは、雪のせいだけではない。


2021年8月には、小田急線の電車内で無差別刺傷事件が起こった。「無差別」と言われているが、明らかに女性を狙った犯行だった。私がかつて通勤で使っていた小田急小田原線の快速急行。快速であれば、逃げられないという理由で犯行に及んだそうだ。

電車に乗っている危険性は、痴漢だけではなかったのだ。少しタイミングが違えば、刺されたのは自分だったかもしれない。知り合いや家族だったかもしれない。


世界一治安の良い国、日本。それを誇りに思い、信じて疑わなかった。はたして本当だろうか?

この国は決して治安の良い国ではない。差別のない国でもない。安全な国でもない。子ども、女性、障がいがある人、いわゆる社会的弱者が、簡単に命を奪われるような、そんな国である。そして世界は、そんな国で溢れている。

痴漢被害に遭いたくなければ、そんな短いスカートを穿くな。危ない目に遭いたくなければ、女ひとりで夜道を歩くなと言われて育ってきた。私が自転車を漕ぐスピードが速いのは、そうすれば追いかけられないからだ。傘を持つ手にグッと力が入るのは、武器になるからだ。注意深く歩くのは、いきなりぶつかられないようにするためだ。スカートを履かないのは、ナメられないようにするためだ。

今日も小田急線に乗って帰路につく。胸が苦しい。悲しい。でも、この気持ちを記録しておかなければならない。そう強く思った。

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