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調査報告 中心部の小学校と大学

巳口駅は、市の中心部にあり、何路線かが乗り入れているが、その周りはあまり賑わっていない。駅の一番大きい出口から続く通りは、それなりに高いビルが並んでいるけれど、はっきり言ってそのくらいで、あとは百貨店が1店と、ショッピングモールが少し。駅からの出口によっては、一軒家が見える程である。

 その、一軒家が見える出口から500メートルほど歩くと、小学校がある。とんでもなく広い小学校だ。L字型に曲がっている。そこに通ってくる小学生に、電車通学の子はいない。この曇天小学校は、普通の公立の小学校だからだ。

 ここに住む小学生は、小学生としては恵まれている。学校のグラウンドは近いし、公園も近い。でも地元に誇りを抱くのは難しいかもしれない。市内には、ここよりもっとお洒落で新しい場所がある。古びた場所で生きていくのは大変だ。

 近くには大学も存在する。風景大学。こちらにはグラウンドは1つもない。そして窮屈そうな、灰色の建物が2つあるだけ。私たちが通常想像する大学よりは、随分と古いし狭い。ここには色々な所から大学生がやってくる。そして古びた街の、古びた大学で講義を受ける。

 どちらの方が深刻だろうか。

 1つ、重要な報告。曇天小学校から風景大学に進学した生徒は1人もいない。今までに1人も。とても近いのに。そして、風景大学に進学した大学生は、曇天小学校の事を知らない。少し歩けば、存在を知れるにも関わらず。

 ここの小学生も大学生も、場所から誇りや楽しみを見出す事は出来ない。抗うには、内に籠るか外に逃げるかだ。だからあの小学校は広いのかもしれない。逃げ込んでくる沢山の小学生を、一度に寛大に受け入れられるように。

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