見出し画像

全てお見通し(小説)

アリ達の方は、彼女が自分たちをわざと避けてくれる事を既に知っていた。もちろん初めは、いきなり空から何度も足を振り下ろされて、あんまりだと思ったし、ビクビクしながら帰る事になったが、何度彼女が来ても一向に犠牲者が出ない。これは凄い事だ。偶然ではない。彼女がアリ達を避けてくれているのだ。アリ達は彼女に感謝した。そして彼女を、危険生物から鬱陶しい生物に格上げした。

 アリ達にとって本当に怖いのは人間の子どもだ。彼ら彼女らには容赦がないし、躊躇いがない。それは暴力で相手を粉砕する時に一番重要な事だ。そしてさらにタチの悪い事に、靴裏の全面を使って、何度も何度も踏み付けてくる。繰り返し執拗に踏み付けてくる。もう、恐々しながら歩くしかない。とにかくその場から離れるほかない。仲間が死んでも、構ってなどいられないのだ。全て分かっていたって、怖いヤツは怖い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?