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企業研究者の3スタイル : アスリート・傭兵・プロレスラー

JTC電機メーカーで研究者などしていると、色んな人間を見る。仕事の価値観というか「美学感」が異なる人同士では、なんとなくギスギスしたりすることもある。

美学=モチベーションのモデル

私の見るところ大きく分けて、
・アスリート型
・傭兵型
・プロレスラー型
みたいなタイプがある。

  • アスリート=技術命
    アスリート型は、意気のいい若手研究でよくあるタイプで、技術的に最新の潮流を捉えてバリバリとstate of art を狙っていくタイプ。格闘技で言えば、ボクサーや柔道などその競技のルールをきっちり守りつつ、その範囲内でアスリートとして強くなる事を目指す純粋タイプだ。
    純粋な分だけ技術力は非常に高い。ただし、技術にしか興味ないためノイズに弱い事も結構ある。オープンに挙げられているテストデータとかなら無類の強さを示すが、仕事の技術はアカデミックのような綺麗な要件には収まらない。
    特に顧客要件とか社内事情でバカな実装を強いられたりすると、すごくやる気をなくしてパフォーマンスを落とす事もあったりする。

  • 傭兵=顧客要求死守
    傭兵型は、中堅で仕事スタイルに染まったプレイングマネージャー層とかによくあるタイプで、まあ顧客要件満たせればなんでもあり、というスタイル。格闘技で言うと、ボディガードとか、相手が何を出してきても対応する荒事に特化した傭兵。傭兵は顧客要望を死守する事が目的なので、いかにエゴを殺して最低限の手数で要求だけを達成する。
    目の前の業務こなすにはベストな思考なのだが、要件を満たすだけのベタで古い手法を愛好するようになりがちで、技術の変化に着いていくのは遅い。気がつくと力技で効率悪くこなす悪いループに陥って重労働を買い叩かれる事も多い。
    若いアスリートからは素直に尊敬される事もあれば、ああはなりたくないと思われる場合もある。とにかく実直な業務のプロである。

  • プロレスラー=ブランドメーカー
    プロレスラーは元アスリートがたどり着くもう一つの形で、「俺が強い」というアピールで技術ブランドを構築するタイプ。これは研究職や技術企画系に特有のスタイルかもしれない。
    ブランドをマネタイズする事に主眼を置くこの形は、企業の付加価値には必要不可欠なところもあり、結構幹部受けもする。
    ただ、若手のアスリートからは「プロレスラーって本当に強いんですか?」という疑惑の目を向けられている事も覚えておかねばならない。

誰の視点がモチベーション?


この3タイプ、本質的に何が違うかと言うと「想定する評価者」が違うのだ。誰の視点を気にしているか、ということ。

アスリートが想定する評価者は「同業の技術者」だ。だから、中途半端な技術力の無さを晒して舐められたくない。強い敵に褒められたい、それがアスリートの欲望だ。

傭兵の考える評価者は言うまでも無く目の前のスポンサー。今の日銭を払ってくれる相手である。これは仕事として一番健全なのだが、一方で目の前の命令者の能力が傭兵ビジネスの成長の限界にもなる。

一方でプロレスラーは「素人視点」へのアピールを第一に考える。技を出すにしても素人受けする技を好む。流行のキーワードとか取り入れたがるのはプロレスラーの常。またアスリート視点では大した事ない基本技でもプロレスラーが名前をつけてアピールするとブランド化できることもある。ブランド化される事で技術は付加価値をもった商品になる。

名声とアピールがないままの傭兵ビジネスは、腕が良くても旨味のない仕事になりがちだ。経営者視点ではある程度「プロレスラー」を必要とするし、腕に覚えのあるアスリートがプロレスラーに惹かれて入ってくるという側面も大きい。
ただプロレスラーが調子に乗ってでかい案件を引き受けると、炎上して、傭兵が火消しに回る、なんて事もある。


まあ、色んなタイプがいるから組織は面白いとも言えるが、目の前に相性の悪い価値観のタイプが現れると、苛立ち覚えるのも人の常ではある。

ここまで読むと、技術者の方々は周囲の人物思い出して「ああ、あいつはプロレスラー」「あいつはいかにも傭兵」とか気がついたりするのだろう?
皆さんは、どのタイプなのでしょうか?

「他者の視点」というのは、人間が仕事をするモチベーションになります。
一方でそれがストレスを生むのも事実。
なんか疲れたな、とか、モチベーションが上がらないな、と思ったら
「俺は誰の視点を求めているんだろう?」
と考えてみると、自分を見直せるかもしれません。
この続きはまた今度。

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