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ジョージ・オーウェルを手軽に楽しめる 『動物農場』

動物農場〔新訳版〕(ジョージ・オーウェル)

とある農園では、人間からの圧政にあえぐ豚や馬、羊、鶏、犬、それにネコなどの動物たちが劣悪な環境で暮らし、不満を溜めていた。ある日、聡明なる老豚の教えに従い動物たちが蜂起、人間から農園を取り戻す。勝利した動物たちは、自らで農園の運営を始めるが、権力と情報が豚たちに集中してしまったことで、歪みが生まれ、諍いが生まれ、結局は豚達による独裁に立ち戻っていく。

全ての動物は平等である。だが一部の動物は他よりもっと平等である

有名な話なのでネタバレじゃないよね、この寓話は、旧ソ連がモチーフになっている。老豚はレーニン、その下にトロツキー豚とスターリン豚が居たが、トロツキー豚は追い出され、スターリン豚が圧政を敷いていく。

スターリン豚ととりまきの豚により、農園内に全体主義が巧みに構築され、動物たちは疑問を感じながらも、豚の圧政に従わざるを得ない状況に追いやられていく。

本作、日本人である私達が読むと、どことなく北朝鮮の話にも見えてくるのが面白い。

さて、なぜいまさら『動物農園』かというと、早川書房から新訳が出ていると知り購入をしてみたのです。翻訳は山形浩生さん。ちょっと苦手な翻訳家さんなんだけど、今回は最後まで読み通せた。

とりあえず最初の一文から過去読んだことのある翻訳と雰囲気が大きく違うように感じる。冒頭の書き出しはこんな感じで、まるで童話のようなのだ。

メイナー農場のジョーンズさんは、夜に向けてニワトリ小屋に鍵をかけましたが、酔っぱらいすぎていて通り抜け用の穴を閉じるのを忘れてしまいました。

これはこれでとても読みやすいし、とっつきやすいのではないかしら。

他の翻訳と比べてみようと思ったけど、残念ながら見つからなかったので比較読みは出来なかった。

恐らくは、本書が成功したことで小説『1984』は生まれているのだろうと思うと、とても重要な作品。

読みやすいので、ジョージ・オーウェル入門としても最適。これを読んだら『1984』も是非。

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