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宮崎駿の読書遍歴 『本へのとびら』

私と妻が読書好きということもあり、二人の子どもたちも本が好きになると良いなと、つい思ってしまう。

本が好きになったところで特別良いことがあるかというと、特別子どもたちがやる気になるような良いことは無いのだけど。

何か本を、となると、つい自分で知っている児童書を与えたくなるのだけど、頭のどこかで「どうせ押し付けようが何をしようが、読む子は自分で見つけて勝手に読むし、読まない子は報酬で釣ったとしても頑として読まないだろうな」と考えてしまい、なかなかレコメンドをする事が出来ない。

一つ採用している作戦は「ほしいと思った本にケチをつけない作戦」で、子どもたちが選んできた本を頭ごなしに拒否しないようにしているのだけど、そうすると家の中に「おしりたんてい」や「残念な生き物辞典」みたいな本が充実してきてしまい「思ってたのと違うっ」てなりはじめている。

でも、書店でたまにみかける、子どもには自分の思い通りの本を読ませたい病にかかっている方を見かけると、うちの子どもたちはそれなりに幸せな読書人生を過ごしているのだろうなとは思えるので、まぁいいかとなる。

『本へのとびら』(宮崎駿)

あるイベントで、宮崎駿が岩波少年文庫から刊行されている400冊超の中から3ヶ月かけて50冊を選び冊子を作った。

その冊子を元にしたのが本書の第一部で、1作品につき1ページから2ページで、おそらく子どもが読むことを想定した解説を行っている。この解説がなんというか、実直で嘘がなくてとてもいい感じなので、このために買っても損は無いと思う。

紹介されている中には、スタジオジブリ作品の原作になっているものや、宮崎駿が若い頃に手がけていたTVアニメ「アルプスの少女ハイジ」の原作も含まれているのだけど、『ハイジ』の紹介は面白いなぁ。

続く二部では、自身の読書遍歴を紹介しつつ、自身の仕事にもつながる、挿絵の魅力にも触れている。宮崎駿がいかにして児童文学とその挿絵の世界に魅了されていったのかがよく分かる。

このパートは阿川佐和子との対談がベースになっているそうで、なるほど聞き出し方が上手い。文面からもわかる機嫌の良さで、普段から別のメディアでみかける宮崎駿に比べたら、明らかに饒舌だし楽しそう。

本書は、大人にとっても十分に興味深い&使えるブックガイドになっている。私も乗せられて、まんまと数冊買ってしまった。

そういえば、ハイジのアニメをちゃかした学習塾のCMがありますが、私、アレ嫌いだな。作品へのリスペクトが無いパロディは好きになれない。

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