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【書評】 21世紀初頭を生きた大したことのない人たちの民族誌 『賃貸宇宙』
ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。392冊目。
15年近く、一度もページを開かなかった本が部屋から出てきた。
都築響一の『TOKYO STYLE』が面白くて、その続編である本書を購入しいてたのだけど、なぜか一度も開かれずに書棚で眠っていた。
『TOKYO STYLE』は、東京に住む「おしゃれなインテリア本」では決して紹介されないような、普通の人の普通に駄目な部屋が沢山紹介された写真集だった。
紹介されているのは、若い頃に良く遊びに行った友人宅のような部屋といえばわかるかな。
とにかく、住人の大事な物で床も壁も埋め尽くされいて、あとは寝て起きてセックスさえ出来ればOKみたいな部屋が膨大に紹介されていた。
持っているはずなのだけど、ざっと見ただけでは見つからないので、そのうち見つけたら紹介しますね。
本書はその続編にあたる写真集で、東京を飛び出し、
関東関西の「大したこと無いひとたち」の大したライフタイル約300物件。
を、上下巻あわせて約900ページでぎっちぎちで紹介している。
基本的なノリは『TOKYO STYLE』を踏襲する。
これは風呂が欲しくなり台所に増設した方。食事は全て外食なので、これで問題無いどころか、これが良いらしい。登場する部屋の主の皆様は、良くも悪くも目的合理的だ。
押入れの上段を休の場所にした女性の部屋
とても居心地が良さそうだ。
大量の書籍と戦う方には親近感が湧く。この写真の方は、ティッシュの空箱を使って文庫サイズの本を上手く収納している。
こんなノリで300のお部屋と主の生活が紹介される。
写真の量だけでも圧巻なのだけど、その一枚一枚の写真がまたものすごい情報量なので、読んでいるせいなのか、飲んでいるせいなかわからないけど、とにかくアタマがクラクラする。
説明の文字も細かくびっちり日英で書かれているので、老眼気味な私はメガネを外して凝視する事になる。
ちなみに、私が今日発掘したのは上下巻セットが専用ボックスに入っているものだった。ボックス・セットってやつかな。
ちょっと特別感がある。
本書をながめていると、人間というのは動物なのだなとつくづく思う。紹介されている方々の住む場所は、部屋というよりも「巣」に近い。
いったいどんな価値があるのかわからないけど、当人にとっては重要な物たちが、部屋の壁を床を埋めている。狭さも古さも設備も何も関係無い、見つけた巣穴のサイズに合わせて生きている。人間なんて、寝るところ1畳分があれば、あとは好きにしてよいのだなと思う。
部屋が沢山紹介されているからといって、参考になるものは殆ど無い。ページをいくらたぐったところで「この収納参考になるわー」とか「この家具かわいいー」とはならない。出てくるのは「どうしてこうなった」とか「でも、これでいいのか」などだ。
そして、最後に気がつくのは「人間なんて寝るところさえあればあとはどうでもいいのだな」という事実だけ。
巣の主も一緒に写っているケースが多いのだけど、男女関わらずヌードの人が多くて謎。
2005年12月の刊行なので結構古いのだけど、きっと、本書で紹介されているような方々の部屋は、現代になったところでたいして変化はないのだろうなと思う。ブラウン管のテレビが薄型になっている位ではないかな。
まぁでも、それはそれで見てみたいね。
「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。