日本特殊陶業、MI 手法を活用して新規無鉛圧電材料の開発に成功
発表日:2024年6月13日
概要
日本特殊陶業株式会社は、2024年6月13日に、同社初となるマテリアルズ・インフォマティクス(MI:Materials Informatics)手法を活用して、高性能かつ量産可能な新規無鉛圧電材料の開発に成功したことを発表しました。この開発は、名古屋市東区の本社で行われました。
MI手法の導入背景
圧電材料は、電圧をかけると振動し、圧力をかけると電気が発生する特徴があります。このため、ブザー、センサー、アクチュエーターなどに広く使用されています。
しかし、従来の圧電材料には鉛が含まれており、環境と健康へのリスクが指摘されています。鉛は環境中に放出されると生態系に悪影響を与え、人間の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。特に、鉛中毒は深刻な健康問題を引き起こすことが知られています。これに対し、無鉛圧電材料の開発が進められています。
日本特殊陶業は2000年ごろからニオブ酸アルカリ系無鉛圧電材料の研究開発を行ってきました。しかし、従来の開発方法では材料の組成とプロセス条件の組み合わせが非常に多く、開発には多くの時間を要していました。この問題を解決するために、同社はデータサイエンスを用いたMI手法を導入し、材料開発の効率化を図りました。
新規材料開発の具体的な手法
今回の開発では、マテリアルズ・インフォマティクス技術と電子実験ノートを活用しました。電子実験ノートは、実験記録をデジタル化し、従来、個人管理であったデータの一元管理および可視化を容易にするツールです。これにより、過去と現在のデータを一元的に集約し、材料の組成とプロセス条件の最適化を図りました。その結果、126万通りの組み合わせパターンを550通りに短縮し、半年という短期間で目標性能を持つ無鉛圧電材料の開発に成功しました。
この手法の導入により、データサイエンティストと熟練技術者が緊密に連携することが可能となり、材料データと現場のノウハウを数値化することができました。
さらに、小規模量産設備による試作実験により、短期間での量産移行が容易な材料の開発が実現しました。MI手法を活用することで、実験データの解析が迅速に行われ、材料の組成やプロセス条件の調整が効率化されました。
これにより、従来の方法では数年かかる開発期間を大幅に短縮することが可能となりました。
新規無鉛圧電材料の特徴
新たに開発された無鉛圧電材料には以下の特徴があります:
圧電定数:d33 = 400pC/N
この圧電定数は、材料が電圧をかけた際にどれだけの振動を生じるかを示す指標です。d33の値が高いほど、材料の圧電性能が優れていることを意味します。耐熱性:キュリー温度(Tc)= 200°C
キュリー温度は、材料が圧電特性を失う温度を指します。この新規材料は200°Cまでの高温に耐えることができるため、高温環境下でも安定した性能を発揮します。固相反応法で量産可能
固相反応法は、一般的なセラミックス合成法であり、大量生産に適しています。この方法を用いることで、コスト効率の高い量産が可能となります。作製工程で有機溶媒を不使用
有機溶媒は環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、その不使用は環境保護の観点から重要です。新規材料の製造プロセスでは有機溶媒を使用しないため、環境負荷を大幅に低減することができます。高信頼性(耐環境性、再現性)
新規材料は、厳しい環境条件下でも安定した性能を維持し、高い再現性を持つことが確認されています。これにより、様々な応用分野での信頼性が確保されます。
今後の展望
日本特殊陶業は、先進的な材料開発を通じて産業界に新たな価値を提供し、顧客の期待を超える製品とソリューションを提供することを目指しています。
確立したMI手法を駆使し、今後は無鉛圧電材料だけでなく、さまざまな次世代の革新的な材料開発を加速していく計画です。これには、エネルギー効率の向上、環境負荷の低減、さらには新しい機能性材料の開発が含まれます。
具体的には、以下のような分野での応用が期待されています:
エネルギーハーベスティング
圧電材料を用いて環境中の振動や圧力から電力を生成する技術です。これにより、持続可能なエネルギー源としての活用が期待されます。医療デバイス
圧電材料を使用したセンサーやアクチュエーターは、医療機器の高精度化や小型化に寄与します。特に、インプラントやウェアラブルデバイスにおいて、無鉛材料は安全性の面でも重要です。自動車産業
圧電材料は、車両のセンサーやアクチュエーターに使用され、車両の性能や安全性を向上させます。無鉛材料の使用により、環境負荷を低減しつつ高性能を維持することが可能です。
まとめ
日本特殊陶業はMI手法を活用し、高性能な無鉛圧電材料を開発。
圧電材料は電圧や圧力に応じて振動や電気を発生する。
従来の開発方法では時間がかかる問題があったが、MI手法で効率化。
新材料は高性能で環境負荷が低く、量産可能。
未来の材料開発にもMI手法を活用し、革新を目指す。
エネルギーハーベスティング、医療デバイス、自動車産業などでの応用が期待される。
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参考文献
https://www.ngkntk.co.jp/news/upload/ae64157fe5735398f4f5e264a4ddb487.pdf