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思い出は「名前を付けて保存」

 学生時代。あのときのわたしは、長距離を徒歩や自転車で移動することに至極の喜びを感じる少し変わった女子大生でした。

 兵庫県(須磨海岸~京都・舞鶴)徒歩から始まり、
城崎温泉~鳥取砂丘徒歩、
姫路城〜有馬温泉〜実家(神戸市の北の外れ)、
実家~祖母の家(大阪の南の外れ)徒歩、
韓国(釜山~ソウル)自転車など、
様々な場所で移動をしては喜びと幸せを嚙み締めていました。


 そんなわたしが卒業旅行に、と思いついたのが「沖縄県徒歩縦断」。このときは4人の友だちが興味を持ち、参加してくれました。いやーいい友だちを持ったものです。

 那覇空港から名護までバスで移動し、ターミナル前でヒッチハイク(初)。テレビでみたように親指を立て道行く車にアピールを続けたのですが、なかなかテレビでみたようにうまくはいきません。
 しばらくしてわたしたちの前に停まったのは、ガスボンベを積んだ中型トラック。「辺戸岬(本島最北端)まで行きたいんですが・・・」と説明すると、ミヤザトさんというその男性は快く荷台にわたしたちを載せてくれました。

 ガスボンベの隙間からチラチラ見える友だちの顔が自分と同じく笑顔でいっぱいだったのがまたうれしくて、拍動までもドッキドッキとスキップしているように感じました。



 辺戸岬から南へ向かって歩く道のりでは、景色や人との出会いはさることながら、それはもういろんなことが起きました。


 宿がなくて困っていたら、もう閉業した宿の一部屋をおばちゃんが貸してくれたり、空腹で飛び込んだお菓子御殿で大量の紅芋タルトを恵んで(?)もらったり、突然の雨でずぶぬれになったわたしたちに屋台のおじちゃんが香ばしい焼き鳥を焼いてくれたり、コインランドリーの防犯カメラで遊んだり、急遽止まることになった薄暗いトレーラーハウスの中でランタンを灯して夜な夜なしゃべったり、ふくらはぎが爆発しそうなほど疲弊して小一時間沈黙が続いたり、体力と気力がすり減った仲間にサプライズをしかけたり、ちょっと勇気を出して入ってみた居酒屋で飲んだ熱いお茶がやけにおいしかったり、縦断の実況の手紙をポストに投函したり、ゆで卵で乾杯したり、おばちゃんが「元気つけてよ」と朝一で天ぷらを持たせてくれたり、じゃんけんで負けた人が謎の木の実を食べてみたり、縦断?!これもってって!とローソンの店員さんがカメセンをもたせてくれたり、仲間の携帯がなったと思ったら内定の連絡でみんなで大騒ぎしたり、応援メッセージを紙芝居にして伝えてしたりしたり、社会人になる不安や楽しみを話したり、あとで食べなとおじちゃんが畑からにんじんをいっぱい抜いて差し出してくれたり。

仲間の書いた思い出がギッシリのハガキ

 ゴール地点とした当時の喜屋武岬はサトウキビ畑が広がっていて、そこを抜けて岬の縁に立った時の高揚感は今思い出すだけでも、また心臓がスキップをし始めるほど。

 その夜みんなで作った料理をこたつ机に並べて、1回はしてみたかった贅沢を一人一つして(わたしは、クランキー板チョコに齧りついてみたかったから、齧りついた)て、そのあとはこたつに潜り全員で爆睡しました。


 本当に、いい旅だったなぁ、といつも思います。特に確認はしたことないけど、あの時のメンバーはみんな、今も同じ気持ちだろうと思います。

わたしたちのゴール@喜屋武岬


 あのときのわたしは、まさかその後の人生で、わたしが沖縄に住むことになるとは微塵も予想していませんでした。

 そして今わたしは、“閉業した宿の一部屋を貸してくれた”おばちゃんの隣の家に住んでいます。

 いやー人生って何が起こるか分かりませんね。


 あの沖縄縦断徒歩旅からはもう15年近く時は経ちました。

 今日の出張授業で仕事もひと段落し、次のスタートまで10日ほど時間があるので、もう一回沖縄を回ろうかな、と昨日思いつきました。同じ日程、2月24日~3月2日がいいかも知れない。15年経ったわたしは、今度はどんなことに心が動かされ、どんなことを考えるかな?

 ただし今回はバイク旅です。去年神戸から三重に旅した以来なので久しぶりです。せっかくなのでタイミングが合えば離島などもいくつか攻めたいなぁと思います。



 あの時の旅を超えよう、なんて思いません。それは絶対に不可能なので、上書き保存はせずは沖縄縦断徒歩旅は「名前を付けて保存」をし、新しく用意したメモリーカードに思い出を書き込んでいこうと思います。


 沖縄を赤いバイクが超低速で走行しているのを見かけたら、ぜひお声がけください。

 直接の知り合いの方とはタイミングが合えばごはんでも食べながら共にひと時を過ごせればおもしろいなぁと思います。

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