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マネジメントを学ぶ理由 エピソード9

 楽しい目標面談⁈

 新部署の起ち上げの為に、僕はメンバー一人ひとりと面談をする事にした――マネジメントの実践である。もちろん、顔も名前も外から見た性格的な所は知っている。会社になじまない異端児たちとも言えるかも知れないが、一人ずつ話していくと、それは偏見であることに気がつく。僕が作った簡単な個人の目標管理シートをあらかじめ配り、面談日までに記入してもらった。会社の正式な目標管理ではなく、趣味や本当に好きなことを前提に書いてもらい、それを実現するためにどうするかを話し合った。僕はこれも評価対象に含めると約束した。上司には自己啓発の目標(管理資料)として説明し、承諾を得ていた。震災の数日前までにメンバー全員の個人的な目標と方向性を知ることができた。「こんな楽しい目標ならどんどんクリアしたい!」と言っていたのは、このチームで一番やんちゃなメンバーだった。

 噂と大震災

 新部署発足の話は会議の場でしか話されていなかったが、どこかで洩れて噂が広まった。「寄せ集め」などと陰で揶揄されていた。その新部署の所属長が僕なので、尚更に遠慮は皆無であったようだ。僕はそれをバロメーターと捉えていた。「人の噂も75日」と言われている。むしろ、その間に実力と結果を示せば良いだけだ。そう考えていたので、とくに立腹することもなかった。僕が新部署の発足準備と、現職の引継ぎ資料作成に勤しんでいた時、あの未曽有の大震災(3.11)は起こった――。僕はその時、品川近辺に居た――。

 直後に繋がった携帯電話

 最初の大きな揺れをやり過ごして間もなく、僕個人の携帯電話が鳴った――家内からだった。いくつかの確認とやり取りをして、まずは小学校へ行く様にお願いした。おそらくだったが、娘(小1)は校庭に居るはずだと直感したからだ。そして、今日は帰れない・この後の電話も繋がらないだろうと話し、最悪は自治体の避難場所で合流しようと電話を切った。その直後に余震が続き、足がすくんでしまっている後輩を引っ張って社外へ一時避難した。外に出ると、他の社員たちや近所の住民の方々も居合わせた。後輩はそこでへたり込んでしまった。軽いショック症状だと思った。後輩を他の先輩社員に委ねると、今度は会社から支給されている携帯電話が鳴った――大阪の上司からだった。電話をとり話しながら、僕は咄嗟に駆け出し本部長のもとへ急いだ。大阪の本部と繋がる貴重な機会だったからだ――。不思議とこの携帯電話だけはその後も比較的よく繋がり、通信網が復旧する数日間の繋ぎを担ってくれた――。

つづく

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