リハビリテーションと運動学習!保持や転移(汎化)を促す方法!

最新の運動学習の考え方

最新の運動学習の研究においては、獲得相(直後効果)の後の学習効果の評価に加え、保持相(短期、長期効果)の後の学習評価、転移検査(新しい課題への汎化能力)も行う。

運動学習に関わる脳領域と学習過程

運動学習は3つの段階がある。

初期:
運動をうまく行えるように、遂行課題の特徴を理解し、それに基づき色々な戦略を用いて試す段階。

課題遂行により得られる情報をそれぞれの脳の領域で分析する。
情報をまとめるための連合野(前頭葉・側頭葉・頭頂葉)が主に関与する。
運動を言葉で表現する(運動の言語化)ために、言語領域が関与する。

学習初期は、頭頂連合野・運動前野の活動が関与する。

中期:
試してきた戦略の効果を比較検証する段階。
運動前野(運動プログラム作成)などの感覚、運動に関連する領域が関与する。

後期:
特別な調整がなくても(特に何も考えなくても)運動が遂行される(自動的)。

連合野の働きが減る。
強化学習では大脳基底核などで無意識に運動が調整される。

強化学習

そこにある環境の中で自ら行動し、得られる報酬を最大限に強化できるように、自分の選択可能な行動価値を学習していくもの。

中脳ドーパミン系とその修飾作用を受ける大脳基底核と前頭葉が関与する。

正の強化:
黒質や腹側被蓋野でドーパミン神経細胞が興奮し、側坐核とシナプス結合して快情動や意欲が生まれて行われる。

ドーパミン神経細胞は、行動を起こす時に得られる期待される報酬の量と、行動をとった結果実際に得られた報酬の量の誤差によって興奮し、興奮の度合いに応じてシナプス伝達効率を向上させる(報酬予測誤差)。

報酬が完全に予測可能(わかりきっている)で誤差が生じない場合は正の強化は行われない。
過大な予測見積もり(かなり大きな報酬が得られると思っている)により結果との誤差が負であった場合、負の強化や学習無力感となる可能性がある。

教師あり学習

自分からこうしようと目指した運動の予測に対し、実際の運動結果との誤差を修正するなかで学習するもの。

運動予測にはイメージや運動指令のコピー情報がある。
運動結果は実際の運動から得られた求心性のフィードバック情報で、これらが比較照合されながら、誤差を修正していき学習されていく。

誤差の検出には小脳(プルキンエ細胞)が深く関わる。
苔状繊維や平行繊維、登上繊維からの誤差信号を統合し、それらを調節する。

小脳では、フィードバック誤差学習と呼ばれる運動制御で比較照合が行われている。
運動開始前に運動予測を立て、予測とフィードバックシステムにより出力の誤差信号を元に最適な運動指令(内部モデル)を学習する。

内部モデルが磨き上げられることで、感覚フィードバックに頼らなくても的確でスムーズな運動が行われる。

教師なし学習

明確な基準がないままで、課題を繰り返すことで記憶がつくられ、その記憶と実際の結果を統合して学習を図る。

何にどのように注意をするか、どの記憶でシュミレーションするかといった作業記憶の過程を含む。
対象者が自ら課題を取り組むことで学習がされていく。

主に海馬、前頭前野、運動前野、補足運動野、頭頂葉が活動する。

運動学習に向けた課題設定(脳卒中の知覚課題を中心に)

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