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【為政者の心得5】答えは、「管子」にあり。「礼」の次は、さらに「社会的責務(法)」に続く。

「管子」の主人公である管仲が斉の宰相となったのは紀元前701年のことです。「論語」で有名な孔子が誕生するよりもさらに前に、管仲の言葉は現代の政治や企業統治にも影響を与えています。

(今までの続き)古代中国の思想家である管子は、統治において「義」を重んじ、人民には「礼」をわきまえるように説きました。管仲の統治方法には批判もありますが、多くの人々がその思想に魅了されています。

今から紹介する「社会的責務(法)」は、それぞれの立場(身分)に応じた理にかなったものであり、2700年前に実行され、今もなお語り継がれていることは驚異的です。管仲は、「礼」の次に社会的責務を明確にするため、次の「五務」を提唱しました。

君主は、すぐれた臣下を選び出して政府の役職につかせ、
重臣は政府の役職を担当して事務を分割し、
官庁の長官は事務を担当して職務を全うし、
士は身を修めて才能を身につけ、
庶民は農耕や栽培に従事することである。

新釈漢文体系 第42巻 管子(上)、遠藤哲夫著、株式会社明治書院、平成元年、177ページ

いかがでしょう。
この「五務」は、現代の社会的責務とほぼ変わっていません。私は、これが2700年前に実行されていたことに驚きを感じます。

まず、君主(現代のリーダー)は、優れた部下を選び出して要職につけることが求められます。これは当たり前のことですが、実行は難しいものです。「中庸」には「賢を尊ぶなり」という言葉があります。友人や血縁で臣下を選ぶのではなく、能力を認めた人を臣下に選ぶことで、管仲は政治や組織の混乱や破綻を防ぐとしています。

次に、重臣は政府の役職を担当し事務を分担します。これは、物事の処理を遅延させないためです。管仲の時代において、すでに組織論の基本が確立されていたことに驚かされます。君主一人での決断では業務量が多すぎるため、権限を委譲し、効率を高めるべきだと述べています。

さらに、官庁の長官は事務を担当し職務を全うします。これは、全てが円滑に処理されることを意味します。

次に、士は身を修めて才能を身につけるとあります。現代社会には武士という身分制度はありませんが、ここでは行政職員やビジネスマンに置き換えられます。身を修めて能力を高めることで、優秀な人材を多く輩出できます。現代ではリスキリングという言葉が使われ、新しい職業や現在の職業で必要なスキルを再教育することが重要視されています。これは、新しい職業に就くため、または現在の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルや知識を獲得するプロセスを指します。

最後に、庶民は農耕や栽培に従事します。管仲は経済政策にも力を入れ、重農主義に近い考え方を持っていましたが、現代においてはSociety 5.0に即した産業育成と考えられます。経済的に豊かな社会が持続可能になり、人民の幸福と社会の持続的発展につながるとしています。この考え方は現代でも変わりません。

皆さんもご自身の組織を振り返り、この五務がしっかり果たされているかを考えてみてはいかがでしょう。このような古代の知恵が、現代においても通用することに驚きと感動を覚えます。

管仲の教えは、私たちに大きな示唆を与えてくれるのです。

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