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戦略の失敗は戦術(SEO)で取り返せないどころか逆効果になる

SEOの依頼が社内で決定するタイミングはどの辺りでしょうか?
色々とタイミングや必要と感じる瞬間はあるとは思います。

今回は以下のような順序で色々と決まってから戦術を成功させるためにSEOが必要となった状況を考察しようと思います。

マーケティングの戦略が決まり方向性も固まった。
自然検索からの流入が得られなければせっかくのメッセージが伝わらなくなる可能性が高い。
よし、専門家に依頼してSEOも本格的に行っていこう。

SEO専門家への依頼が決まるパターン

ここまで明確ではなくても、オウンドメディアをすることになった。
メディアのテーマや方向性もある程度決まっている。
SEOも頑張ろう、みたいな状況になって専門家へ依頼、といったパターンもありそうですね。
どちらも似たような状況なのかな、と思います。

今回はこのパターンで依頼されたSEO依頼の失敗について解説します。
また、SEOレベルでは覆すことができない戦略レベルの失敗についても解説しますので、その辺りも参考にしていただけたら嬉しいです。
記事の最後に、戦略と戦術(SEO)の関係性を四象限マトリクスも記載してみました。

SEOの依頼をされたら最初に何をするか?

冒頭に書いた事例だと、既にメディアで伝えたいことは決まっている状態です。
その伝えたいものを届ける手段の1つとしてSEOが選ばれた、という事になります。

SEOについて依頼された専門家は以下のような調査と計画を立てます。
ユーザーニーズについて調査する
どういったキーワードで流入が見込めるか調べる
どういったコンテンツを発信するのが良いか調べる
運用するための体制やリソースの概算を出す
成果が出ると思われる期間を予想する
その他、技術的な要素としてクリアすべき部分を洗い出す

クライアントが伝えたいメッセージが伝えられるために最大限の努力をします。
そこに向かってのリソースや現実的な成果が出るまでの期間、アウトプット方法や報告方法についてのすり合わせ、関係者と円滑に業務を進めるためのやり取りもしていたりします。

ここまで読んでみた感じだとSEOを行う側としては任されたことをクリアするために丁寧に計画と調査をしているように感じませんか?

私も新規のプロジェクトを依頼された際は上記のような流れで仕事を進めることが多いです。
企業の収益構造など、お金がどうやって生まれるのかも事前に理解したりもします。

いずれにしても準備はしっかりと行って1つ1つの施策を積み上げられる状況を作ります。
現実的な成果が出るまでの期間を伝えているのは「ある程度の期間は我慢が続くぞ」という事を最初に伝えておくことでSEOの特性も理解してもらう狙いがあります。

はじめてSEOにしっかり取り組む場合は、成果が出るまでの時間が気になったりする可能性もありますからね。
コミュニケーションや期待値のすり合わせ はものすごく大切です。

今のところSEO側に特に問題がないように感じませんか?

戦略が間違っていて戦術で成果が出た場合、何が起こるのか?

ここからは架空のストーリーでお話します。
実際の事例が使えたら良いのですけれども、なかなか難しいので私が経験したあるSEOのプロジェクトの中身を変えてお伝えします。

ある柔軟剤のSEOの依頼をされました
依頼される前に以下のようなやり取りがあった様子です。
柔軟剤の価値を最大限に伝えるために何が必要か?

社内で色々と検討されました。
・フワフワ感
・肌触り
・赤ちゃんにも安心
・香り

色々と検討されましたが、調査の結果「香り」こそが柔軟剤を選ぶ際の最も重要な要素である、と予想されました。

柔軟剤の価値を伝えるために最も重要な要素としてどうやら「香り」が大切な様子なので、自分たちがいかに「香りにこだわっているか?」が伝わるメディアを運用したい、という事になりました。

「香り」という目に見えないものを伝えていくのは難しそうだがチャレンジする価値はありそうだ。
愛される商品になるためにもSEOに取り組んで売り込み以外の要素も伝えていこう。

架空の柔軟剤のSEO依頼までの経緯

ここでSEOの専門家への依頼が決まり、実際にメディアとして取り組むことになりました。
香りアピールはSEO以外にも行っているので商品の価値を伝える方向性としても一貫して香り推ししました。

SEOである程度の成果が出た
香りについて深く考察するコンテンツ
香りと心理に関連するコンテンツ
香りと他者との好感度に関するコンテンツ

など、とにかく香りの価値を伝え、自分たちがどれほど香りについて考えて商品づくりを徹底しているか?を伝えていきました。

コンテンツも評価され、ある程度の認知がされるようになってきました。
香りが良い柔軟剤、というイメージも定着してきたので「良い香り」を求めていたユーザーから支持され、ジワジワ売上へのインパクトも出てきました。

ただ、自然検索からのトラフィックとは裏腹に意外と商品の売上は伸びませんでした。
すぐに伸び止まってしまったのです。

事業収益へのインパクトが薄い

オウンドメディアの方向性が、直接的な売上に貢献するものではなかったのでSEOの成果=事業収益ではありません。
ただ、「香り」に関する良いイメージが徐々に定着してきているのに売上へのインパクトがない、という状況は気になりました。

この辺りでマーケティングの方向性への疑問が出てきます。

商品の価値を伝えるためのメッセージは本当に正しいのか?

柔軟剤の本当の価値は「香り」だったのでしょうか。
本当は柔らかさ、ふんわり感など繊維への良い影響や衣類が長持ちするといった要素ではなかったのでしょうか?

この点が間違えていた場合、SEOで成果が出ても事業への貢献度は大きくなりません。

戦略の失敗は戦術で取り戻せない。戦術の成功が更に最悪の事態を招くことも・・・

今回の事例の場合、SEOは上手くいったことで、自然検索を含めた流入も増えてイメージも定着しました。
ただ、それが逆効果になってしまったのです。
こちらも架空の事例で何があったのか解説します。

「最近、職場で服のニオイがきつい人が多くて不快」
「香水か?」
「何の洗剤使ってるんだよ」

検索

香り関連の検索ワードでは露出が多い

あ、この会社の柔軟剤か

この会社の柔軟剤のニオイ不快だ!
周りの迷惑考えろ!

戦略の失敗が大きなマイナスに

こんな行動が増えてしまい、香り関連のキーワードで多く露出しイメージも作り上げてしまったことが逆効果になってしまいました。

商品としては徐々に認知が広がってきても「香りがキツい」「スメハラ商品」「臭い」みたなイメージがついてしまい、むしろ強い香りの柔軟剤が徐々に世の中から嫌われるようになってしまったのです。

香り関連のキーワードで検索すると、ほぼ上位に露出している状態でした。
スメハラ商品としてメディアやブログに晒されたりレビューが荒れている状況も・・・。
「香りのキツイ柔軟剤をやめろ」方向に世論が動いている中でどうしようもない状況です。

こうなってしまうとメディアを運用するメリットはなくなり、むしろデメリットしかありません。
お金と時間をかけて悪評を広めてしまったのです。
これは最悪のパターンですが、こういった状況もたまに見かけます。

戦略の失敗は戦術では取り戻せない・・・どころか傷口を大きくしてしまう可能性すらあるのです。

SEOの専門家が戦略も学び実践する理由

今回の記事の例はあくまでも架空のお話ですが、僕自身が過去に同様の経験をしたことがありました。
その当時は「SEOで成果が出たのになぁ」くらいにしか思っていませんでしたが、それはあまりにも無責任だな、とも感じていました。

自分が関わっていないところでの失敗を、我関せず、というのは、あまりにも当事者意識がなくてダサいな、と思ったのです。

自分自身がもうちょっと戦略について理解していれば、途中で異変に気付けたら・・・
SEOだけじゃなくマーケティングの人、というイメージを持たれていれば・・・
たらればだらけですが、本当にそう感じていたのです。

その当時は色々なスキルも知識も経験も足りなかったので、自分自身の商品価値を変えるように行動していました。
クライアントにもそういったお仕事を任せてもらえるようになっていました。

割りとキツめの失敗経験から視座を上げられるように動いた、というのが理由です。
強烈な挫折経験は行動への原動力になる、というのを身をもって知りました(笑)

戦略と戦術の関係性

戦略と戦術の関係性を四象限マトリクスに落としてみました。
これは僕が言ったわけではなくマーケティング関連の書籍にはよく出てきます。

戦略と戦術(SEO)の関係性

戦術の部分をSEOにして解説します。
戦略が良くてSEOも成功した状態が最高です。
そりゃそうですよね。
事業へのインパクトも大きなものになります。

戦略が良くてSEOが悪い場合は惜しい状態です。
SEOのやり方を変えるか、もうちょっと頑張れば成果が出るはずです。

問題なのは戦略が悪い2つのパターンです。

最も悪いのは戦略が間違っていてSEOが成功したパターンです。
今回の架空のストーリーはここに相当します。
お金と時間をかけて悪目立ちしてしまっています。
その悪目立ちを片付けるためにまたお金と時間が必要だったりします。
最もやってはいけないパターンです。

戦略も悪くてSEOも悪い場合は特に知られていない状態です。
最悪、というほどではありません。
世の中に悪評が広まっていない分、まだマシです。
戦略の間違いに気づく時間もできている可能性もあるので方針変更ができる可能性もあります。

今でもたまに見かける自然検索での悪目立ち。戦略が正しいか?改めて確認を

今回のnoteで書いた通り、戦略上の失敗は戦術で取り戻せません。
それどころか戦術が良い場合は最悪の結果になってしまうことすらあります。

今でもたまに「何でこの会社がこんな記事発信してるんだよ」みたいな企業の信頼性に影響するような状況も見かけます。

今回の架空のストーリーのようにSNSに晒されたりメディアに取り上げられることもあります。
他メディアが書いた悪評は自分たちでは消すことができません。
長期間、ネット上に残ってしまいます。

広義の意味では今回の記事のような状況と同じなのかな、と感じています。
改めて自社の戦略は大丈夫かを振り返るきっかけにしていただければ嬉しいです。


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