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組織全体でマーケティングができるようになるまでの取り組み

複数の社内関係者と良好な関係を築いてSEOを含めたマーケティングに取り組む事は大切です。
SEOをデジタル関連の部署や1人の担当者とだけ進めるよりも、営業、広報、生産管理、CSなど複数の部署関係者と一緒に推進した方が成果も大きくなりますし企業としてのメッセージに一貫性も出ます。

見てもらったり使ってもらえる機会も増えるので顧客からのフィードバックや意見、データも蓄積されるので何をしたら良いか?がより明確になる、というスパイラルにも入れます。

今の僕の1日のスケジュールを見ると1日に平均5つのミーティングが入っています。

2022年7月のミーティングスケジュール

現状のような状況になったのは直近3年くらいで、それまでは関わる担当者はマーケティング、デジタル、コンテンツのどれかだけでした。

SEOであれば、それが得意な人、担当された方とだけやり取りをして質問に答えたり、コンテンツのレビューをしたり、といった事がメインで、事業のお話をする、といった事もありません。

さて、冒頭のお話に戻りますとSEOにしろマーケティングにしろ成果を出すために重要なのは多くの方々と一緒に取り組むことです。
4年以上前までは全くできていませんでした。

マーケティング以外の部署と険悪になってしまいクライアント企業の組織を壊しかけた事もあります。

今回は理想的なマーケティングを行うために複数部署の方々とプロジェクトに取り組む方法について解説します。
複数の担当者が関わってデジタルマーケティングに取り組めるようになるまで、何をしてどんな苦労をしたのか?について振り返ってみようと思います。

お盆明けの記事なので、日記っぽい記事になっております。
あまりTipsは出てきません。
部署間の連携が上手くいかない、といった悩みのある方は共感していただけると嬉しいです。

SEOの成果が安定した次に起こること

僕の状況について簡単に説明しますと、2013年4月にフリーランスとして独立しました。
ありがたいことに2022年時点で9年もやれているのですけれども、9年近い年数のお付き合いがあるクライアントも複数社あります。

SEOに長い期間取り組んでいるので、クライアント社内の知見はそれなりにある状況になっています。
また、大きなアップデートも何度も経験しているのでクライアントも慣れたものです。

複数の集客チャネルも育っているので自然検索からの流入に依存する割合も相対的に減ってきます。
理想的に見えますよね?

さて、こういった状況になったあと何が起こるでしょうか。

ある時、クライアント企業の代表から「SEOは上手くいっているんだけれども、ここ最近、検索順位が上がっても下がっても売上に影響ないんだよね」と言われました。

恐らく僕に気を使ってくれたのだと思いますが「検索順位が上がっても下がっても影響ないってことはSEO意味ないんじゃないの?」と言われているようなものです。

自然検索以外のチャネルでも集客ができていたのもあって指名検索がかなり大きな割合になっており、それ以外のキーワードが高順位であっても低順位であってもあまり事業収益に影響しない状況になっていました。

補足しておくと、検索順位は事業にガッツリ関係するキーワードで、それなりの検索数がある単一ワードだったりします。
それらのキーワードの順位が上がっても下がっても収益にほぼ影響しない(めっちゃ軽微)な状況です。
理想的に見えますよね?

大事なことなので2回言いましたが、僕はモヤモヤしていました。
SEOである程度の成果は出せたとして、そこから先、事業貢献するための施策やビジョンを何も準備していなかったから、です。

事業収益に貢献しないSEOに、このまま投資し続けて良いものだろうか?という経営者の疑問はよく分かりますし、僕か経営者でも疑問に感じる可能性があります。

企業としての売上を上げるために力を貸して欲しい

SEOとして事業収益に貢献する割合は非常に軽微でしたが、集客が不安定な頃を支えてくれていた、という実績もありました。
それもあって変動費であるはずの外部パートナーの僕のコストが削られる事はありませんでした。

「もうちょっと色々と見てくれないか?」と言われたことで、ちょっとずつ役割が変わっていきました。
職域的にSEOに収まらない仕事になりますが、ありがたい申し出でしたので(未経験だったのに)2つ返事でOKしました。

そこで初めてSEO以外のクライアント企業の悩みが見えてきました。

部署間の連携がない。他者の仕事へリスペクトがない。社員が消極的。

よく相談される組織の悩みベストスリーです。
ただ事業のマーケティング全体を見せていただく立場になるとマーケティング以外の部署と関わらない、という訳にはいきません。
というよりマーケティングを統括するなら色々な方と関わるのが普通です。

営業、広報、CSや生産管理など色々な立場の方に少しずつお話を聞かせていただき、打ち合わせに参加してもらうようにするところからスタートしました。

どの企業もそうですが、今までやったことがない取り組みにスタッフの皆さんは消極的ですし懐疑的です。

「いきなり出てきて何だお前」的な態度をされることも頻繁にありました。

ミーティング出席率20%

ある企業での出来事ですが、営業チームの皆さんを交えてミーティングを設定しました。
皆さんの都合を聞いてスケジュールを押さえて1時間ほどミーティング時間を設定しましたが、出席率20%みたいな状況が頻繁にありました。

「急な商談が入ってしまって。また次回参加します」
こんなチャットが入ってくるようになり、全く参加してくれないメンバーもいます。

参加したくない理由があるのか、とそれなりに聞いたりフォローを入れてもらったりしていましたが、特にそんな様子もありません。
僕は企業に常駐している訳ではないので、この辺りの信頼構築は本当に大変でした。
「関わるメリットが見えない」僕のような外部の人間に協力する人は多くありませんでした。

「マーケティング嫌いなんだよね」

相手にされていないような状況が半年ほど続き「これは無理かもな」と思っていました。
せっかく頂いたご依頼でしたが結果も出せないし辞退させていただこうかと思ったりしていました。

事業全体のマーケティングを見ます!と言って半年が経過し、マーケティング以外の部署の方々がミーティングに参加すらしてくれない状況が半年続いていたので、さすがに心が折れてきていました。

そんなある時、ミーティングに参加している方から言われた一言が「マーケティング嫌いなんだよね」でした。
ムッとしたりもしましたが、それ以上に「ようやく思いを伝えてくれた」というが嬉しかったので、その発言について深く聞いてみることにしました。

以下、マーケティングに対するイメージと嫌いな理由です。
・マーケティングやデジタルのやつはアナログを馬鹿にしている
・マーケティングやデジタルばかりやっているやつは顧客と話した事もない
・自分で売上を作ることもない
・商品を開発することもない

一部、誤解もありますが、そう思われていました。
更に営業の方の怒りは続きます。

なのに何でマーケティングの奴らは偉そうなんだ?
売上を作っているのは営業の俺らだろ?

マーケティングに力を入れるとかいきなり言われて、訳の分からない横文字を覚えさせられて、営業のやっている仕事を否定するようなことを言われて協力する気にはなれない。

バズとか何とか言ってフザけた企画や変なバナーを出すだけで売上なんか増えるわけない。

ざっくり、こんな意見を言われました。
関係性が完全に壊れたかのように見えますが、この最悪のミーティング以降、関係性は大幅に改善していきます。

これだけ不満を言葉にしてもらえたら、その誤解を解くことも、やり方を変えることもできるから、です。
一番困るのは何も言ってくれないことで、そこが解消されて不満を出してくれたのは本当に助かりました。

僕らデジタルマーケティングの人間はどう見られているのか?

実際にはマーケター顧客の声も聞きますし、コミュニケーションを設計する中で、そのクリエイティブを見ると誰がどういう気持ちになっているのか?はめちゃめちゃ考えています。
どうやら、それは全く伝わっていない様子でした。
マーケターなのに社内へのアピールが下手だったのは問題です。

ぶっちゃけSEOをしている僕自身もデジタル関連の方以外に関わることはないと思っていたので、特に何も伝えておらず、それも問題でした。

マーケティング以外の部署から見ると「あんたらはマーケティング思考がないから数字が作れないし時代遅れなんだ。これからはマーケティングの時代だから頭の良い我々マーケターに従いなさい。従うチャンスをやるからな」と言われているように感じていた様子です。

こんな事を言ってくるようなやつに協力したいとは思わないですよね。
僕なら絶対に嫌です。
そんなつもりは、もちろんありませんでしたが思いがけず関係者を傷つけてしまっていた様子でした。

「マーケティングに協力してくれ」ではなく「あなたの」知見を貸してほしい

「マーケティングに協力してくれ」だとこちらの土俵に上がってきてくれ、という事になります。

この点を変更し「顧客と向き合っている皆さまの意見が聞きたい」ので協力して欲しい、という方向へシフトしました。

用語の定義を設定する

用語の定義を設定しました。
社内で使う曖昧な用語を分かりやすい言葉へ変更し誰でも分かるようにしたのです。

厳密には世の中と定義は異なっている可能性がありますが、そんな事はどうでも良くて関係者全員が意思統一のために使えたら良いのです。
売上を上げるために関係者の中で適切なコミュニケーションを取るための理解ができるようにすることが目的です。

例えば「マーケティング」の定義は「売上か利益を上げる活動全部」としました。
ものすごいざっくりしていますが、売上や利益を上げる活動をしている方は全員マーケターとなります。

・固定費を下げるために経費を削減する活動もマーケティング
・顧客との商談もマーケティング
・カスタマーサポートもマーケティング
・商品開発もマーケティング
です。

全員マーケターとなってもらった事で「マーケティングは自分には関係ない」という状況は(無理矢理にではありますが)なくなりました。

他にも「ブランディング」の定義は「ロゴか商品名をみたら思い出してもらえる状態にすること」としました。

曖昧で人によって定義が微妙に異なる要素は全て平易な言葉へ翻訳し、全員がその意味を理解してもらえるようにしています。

共通言語を作り、全員マーケターになるように言葉の定義を決めたことで、全員が当事者意識を持って関わってくれるようになりました。

全員で発信する全ての情報のレビューを行うようになった

オウンドメディア、プレスリリース、SNS、ペイドメディアなどいくつかのメディアを徹底的に使いこなしてマーケティングをしています。
全員参加以前はマーケティング担当者のみで良し悪しを判断していました。

広報担当者が作った原稿をチェックして修正するくらいのやり取りがメインでした。

今はマーケティング関係者全員(クライアント全社員)が参加してレビューしています。
SNSの投稿のエンゲージメント率
投稿の内容
プレスリリースの内容とマスメディアからの取材
オウンドメディアの反響と営業担当者の商談時の話題率など

その上で、改善ポイントを話してもらったり良かった点を話してもらえています。

SNSのKPIが最初はフォロワー数だったのが、エンゲージメント率になったり反応率が高い投稿の型を作れるようになったりしてきました。

関係者が増えることで、各々の部署の仕事の内容から意見をもらえるようになったのでマーケティングの解像度は明らかに上がりました。

全員が「自分の仕事に良い影響が出せそうな意見はガンガン言う」という意識になってくれたので施策のアイデアも豊富に出てきています。

アイデアの数が増えたので、
8割が過去の成功体験の踏襲
2割は過去にやったことのない方向性のクリエイティブ

とルールを決めて、必ず新しいことをやるようにしていますが、今のところ上手くいっています。

自分が深く関われない現場の声はマーケティングの武器になる

部署内で出てくる問題や悩みなど部署内で消化不良になりがちな問題が、マーケティングの問題となることで解決された、という事もありました。

ある程度の人数以上の組織は、どこかで縦割りになりがちですが、共通言語を作ってしまって全員が関係者になるような仕組みにすると色々な問題が解決したりします。

僕の場合はたまたまマーケティングでしたが、他の何かでも良いのかな、と思っています。

その際、こちらのルールに合わせるような強制ではなく、向こうのルールにこちらが合わせて共通言語を作って、意味を平易化する、というのがオススメです。

全員参加してくれる状況ができるまで反発や信頼構築、崩壊なども経験したことで3年もかかってしまいました。
この経験があったから今があると思っていますし、何ができればマーケティングがより機能するか?もよく分かるようになりました。

今日もあと3つのマーケティングミーティングをしていきますw


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