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SF作家の悪夢

火星探査機パーサヴィアランスはあと数時間後に火星に着陸するそうです。日本時間の午前4:15に。着陸の様子がオンライン配信で観られます。
昨年7月30日に打ち上げられたので、火星までの旅は7ヶ月間かかりました。そこそこの距離だと考えると、けっこう速い!ような気がします。

火星研究という分野ではとても大事な出来事で、人類にとっても大事な実績になります。2030年までには人間の探検ミッションを火星に派遣するという目標があるらしいですが、パンデミックにも関わらず進捗は予定通りのようです。
火星植民化の話はまだ早いかもしれませんが、そのうちはその可能性も現実味を帯びるようになるでしょう。

昨日、この動画を見つけました。
https://twitter.com/euronewsliving/status/1362031235527278592

人類の1%が火星に移住する様子をイメージした上で、残りの99%の人類のためには気候変動問題を解決しないといけないというオチです。

実は、まさにそのテーマをめぐる小説を書いたことがあります。
希望の色』(前編後編)での出来事は、2060年頃に展開するものです。気候変動によって枯れ果てた地球は住みにくくなってしまい、人類を火星に移住させるしかないという状況を描いています。気候変動の影響が悪化する中で、火星移住計画だけが進んでいるという設定です。

昼間に60℃まで上がる日差しから地球を守る「人工雲」という装置が出ているのですが、ガイア理論を立てたジェームズ・ラブロック氏も2020年6月のこのインタビューで、気温調整の対策として「巨大な日傘」のような装置を太陽と地球の間に置くのがいいかもしれないと話しています。
このインタビューを、ガイア理論をテーマにしたnote記事を書いていた時に見つけて、『希望の色』での設定とあまりにも似ている話で、びっくりしました。

SF小説を書いている人にとっては、自分が想像したディストピアがそのまま実現になるのは、あまり嬉しいことではありません。
小説は「予言」ではないはずです。しかも、「現実」は普段、人間の想像や期待を超えていくものです。人間が想像した通りの現実になるのは、現実らしくないですね。(笑)

小説はフィクションで、想像の産物です。エッセイや詩とは違って、小説というジャンルは、一つの真実を伝えるために作り話をするものです。
なので、特にSF小説の中では、「なってほしくない」ほうの未来を描いているものが多いです。
「なってほしい」ほうの未来は、すべて現実のほうで起こればいいからですね!笑

小説は、望ましくない展開を潰すためのツールです。ある出来事が想像上で起きたとたん、現実のほうで起こる確率が下がるはずです。フィクションとしてすでに存在しているので。

なので、気候変動という問題が十分意識されていないなかでも、パンデミックの中でも、火星への探検ミッションだけが予定通りに進んでいるのを見て、説明しがたい気持ちです。

現在書いている小説もSF系です。書きながら手が震えています。そこで描いている出来事がそのまま実現になる可能性は、あまり考えたくないです。
まあ、読み物として楽しみにしていただければ嬉しいです。

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