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親友へ向けて作った曲

制作秘話

今回は、親友が「俺は今から死ぬ」と電話で伝えてきた日に書いた詩を曲にした。恐らくこの一本の動画を創るのに半年ほどかかった。勿論、作曲が一番時間がかかる。その次に動画だ。動画は、北海道、神奈川、東京、山梨、千葉、熱海、沖縄と様々な場所で撮影した。この為に撮った風景はなくて、今まで撮った動画を選別し、止まらずに流れ続ける人生を表現した。

「今から死ぬ」と言われた時に、実際に感じたことは、止める手立てが少なすぎること。住んでいる場所が離れていればどうしようもない。「死なないで欲しい」と言い続けるしかなかった。そして彼はそれを勝手なエゴだと言った。ずっとそれが引っかかっていた。でもよくよく考えれば、確かにエゴだし、そこはエゴでいい。それが本心なのだから。そんな想いで詩を書いた。僕が死んで欲しくないと願っていることを伝えたかった。今もどこかで生きることを諦めようとしている人がいる。そんな人にも無責任ながら届いて欲しいと願っている。死にたい夜に、自分でもこの曲をたくさん聴こうと思う。


歌詞

A)
夢を語った君はどこか
寂しそうな顔で私を見つめて

B)
「死んでも愛して これが最後の一言」

S)
君がどこへ行っても私は探してしまう
君がいなくなったら世界はつまらない


A)
未来を悟った君はどこか
涙を溜め込んだ悲しそうな瞳で

B)
「死んでも愛して? これが最後の一言」

S)
君は君のまんまで。私はそれを愛する
君がここにいれば それでいい幸せ

C)
例え傷を負っても 
あなたを探してしまう
夢の続きを見よう
俺の隣で


親友が死んだ日 

 親友の彼が「俺は今から死ぬ」と言ったその日、彼の心は死んだ。体は生きていても、心は死んだ。それだけのことであり、それだけのことでもある。本気で死のうと思った時点で、人の心は一度死ぬ。その後、体を破壊するのかしないのかは別として。

もう数ヶ月も前の話だ。21歳の大学4年生である僕の、1番関わり深い親友から電話がかかってきた。まだ日付も跨いでいない頃。

「俺は今から死ぬ」と彼は告げてきた。

「死にたい」ではなく、「今から死ぬ」という言葉の鋭さに僕は心を刺された。言葉や形では表せない悲しさに、次言うべきセリフを忘れてしまった。しばらく黙っていた僕に、彼は人生を諦める正当な理由を壊れたビデオテープのように話し出した。全てに納得した。全問正解だった。だから僕は静かに慌てた。

 死ぬことを頭に浮かべている人と話すのは本当に難しくて、恐ろしい。自分の発言がトリガーになる可能性もあるからだ。安易に「死なないで」とも言えない。「死ねば?笑」なんてもってのほかだ。僕もまだ完璧な正解は見つけていない。そもそも死にたい人との会話に完璧な正解なんてないかもしれない。

 後ろ手を縛られ、見えない悪魔にグチャグチャにされているところを、どうにか解いて引っ張り出す必要がある。鍵がかかっているのか、縄で縛られているのかも分からない"ソレ"を素人には簡単に見つけられないだろう。あの時の僕も、ずっと探っていた。まさに取り憑かれたように、死ぬことの正当性を語っていた彼の言葉の奥深くを。

 きっと人間は誰しもが寂しさを隠し持って生きている。そう思って生活していると少しだけ他人に優しくなれる気がする。

 彼には音楽で生きていくという夢があった。ただ周りのずば抜けた才能に突かれ、萎れていた。僕は、彼から音楽の素晴らしさを教えて貰った。僕も今、音楽との関わりを心に誓って生きている。ここが彼を救う鍵だと思った。だから、紙には書かない契約を彼と交わした。その契約書が彼の為に作った曲である。出会ってから今日まで僕を見捨てなかった感謝と、勿論音楽に出会わせてくれた感謝も混ぜて、これからも共に生きるという当たり前を音楽に乗せた。歌詞は、彼が電話でひたすら死ぬ理由を呟いている時に書いた。

「お前のために曲作るからそれまで待っとけ」
確かそんなことを言って彼の言葉を聞いていた。どの言葉も尖っていたし、とても重かった。挫折も諦めも呆れも全て理解できた。結論から言えば、今も彼は生きている。

 その後、僕が死にたくなった時には「本当に死ぬなら一報くれ、止めはしないけど会いに行く」と言った。彼は僕の中で尊敬している一人。今も僕の前を走っていると思う。追い付いては越されている。これからも彼との"かけっこ"を続ける為に、僕も前を向いて今を生きている。これからも一緒に生きよう。ね。

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