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普遍的なスキルを習得する方法

スキル分類の代名詞的な分類にカッツモデルがあります。

カッツモデル

カッツモデルは、役職があがるとテクニカルスキル(職務に必要な技術)よりもヒューマンスキル(対人関係能力)やコンセプチュアルスキル(その物事が何であるかをとらえる能力)が必要になるという理論で、1950年代にロバート・カッツさんがアメリカで発表されて以来、あらゆる場所で引用されている考え方です。

中堅を過ぎたあたりのサラリーマンで、「あの人はできるな」と呼ばれる場合、ほとんどの場合はヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルが高い人でしょう。
このヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルは業種を問わないため、出来る人ほど転職するのも納得できます。

スキルの中でヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルは、人格によるところが大きいスキルとされ、後天的に身に着けることが難しいとされてきました。
これはロバート・カッツさん自身もその手の発言をしています。

ただ、株式会社アイ・ティ・イノベーションの横尾 誠康さんのブログに興味深いことが書いてあります。

詳しくはブログの第6回~第10回を読んで頂きたいですが、育成が難しいとされているヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルも、ディスカッションや発表などを絡めたワークショップを通じて「適度な緊張」のもと「経験」を積んで「慣れる」ことによって習得が可能なのでは? と提言されています。

これには思い当たる節があります。
私も研修やセミナー始めたころはガチガチに緊張して、事前に原稿を作ってその通り話すということしかできませんでした。
しかし、回数を重ねるごとに徐々に自然に話せるようになっていきます。

最終的には、とある地方の文学賞を頂いた時の授賞式で県知事や国会議員、テレビのカメラが入っている状態で原稿なしで5分間のスピーチができるようになっていました。

緊張という意味ではここがピークで、その後は「あれに比べたら大したことない」という気持ちですべて対応することができるようになります。
これが「慣れ」と「経験」の最終形態ということかと思います。

ただ、私の経験をそのまま誰かに研修としてスキルトランスファーすることは不可能です。
どれだけ頑張っても「へー、そんなことがあるんだ。自分も頑張ろう!」と思ってもらうのが関の山です。
このことからも、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルは座学ではあまり身につかず、自身で経験値を積んでいくしかいないと思います。

……ここで終わってしまうと、「あとは勝手に自分で頑張ってね」となってしまうので、横尾さんのブログを元にもう少し紐解いていきましょう。
出来る、出来ないは「慣れ」と「経験」だとしても、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルにも型があり、それを知識として「事前に学んで知る」ことはできます。

プレゼンテーションを例にすると、「資料作成」と「発表」の2つに分けることができます。

「資料作成」では、事象の言語化、取得できている情報の抽象化、さまざまなデータ分析、発表のストーリー作成などのコンセプチュアルスキルの方法論はある程度事前に学ぶことができます。

その後の「発表」では、発声、進行、身振り手振り、目線の使い方、質問の受け答えなどのヒューマンスキルも事前に学ぶことができます。

しかし、学ぶだけでは身につかないので、スキルを定着させるには学んでは実践、学んでは実践を繰り返す必要があります。

会社として実践的修練に取り組むには、「慣れ」と「経験」を実践できる場を提供してあげることとなります。
定期的に適度な緊張感が発生する場で、自分や組織の考え方を発表することで「経験値」と「慣れ」を手に入れてスキルを伸ばすことが可能になります。

知り合いだけじゃない不特定多数が参加する場所でライトニングトークしてもらうとか、案件の結果を分析して他部署も混ぜた状態でポストモーテム(振り返り)で共有してもらうとか、業績の表彰などで適度な緊張状態で原稿なしでスピーチしてもらうなども良いでしょう。

実践的な修練の例

特にエンジニアの方は人前に立つのが苦手な人が多いかと思いますが、ある役職以上になると必ず求められる能力なので、出来るだけ早いうちから「慣れ」と「経験」を積んでおくことをおすすめします。


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