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開閉音の謎

S.T.デュポンのライターもまた、その心地よい開閉音がトレードマークである。面白いのが同社は開閉によって生じる音はあくまで偶然の産物、としていることである。音がよく鳴ると言われているモデルは上蓋の内側に「化粧板(反響板とも)」と呼ばれる金属板が付いている。この金属板が蓋の開閉とともに振動して音が鳴るというのだ。ただ化粧板の名前が示す通り、本来は蓋内側の加工痕を隠すための装飾であり、音を出すために付けれれたものではないため、音の保証はしかねるのであろう。

個体差によって音の高低が生じるというのは、考えようによっては当たり外れがあるような、自分がハズレを引いたら損だな。。のようなネガティブな側面もあるかもしれない。ただ、私にとってはその個体差がある中で自分の気に入ったものに出会えるだろうか?という偶発性のところにとても面白みを感じるのである。一つだけでなくいくつか持ちたくなる、コレクター心をくすぐる、とても良いストーリーを持っているなぁとつくづく感心させられる。

さて、では開閉音の仕組みを練り香水ケースに使えるだろうか?と検討したのだが、答えはNOであった。前述の通り、化粧板が震えるという物理現象だけ考えると音が鳴ることは理論的には可能だと思いつつも、音を鳴ることを目的とした試作や、品質の安定化を図るにはいささか荷が勝ちすぎた。

閉じるときは拍子木のように時に蓋と本体がぶつかって音が出る。これはケースの素材、厚みが関係するだろうが、実現可能だろう。問題は蓋を開けた時の音。ジッポライターは、ひょうたん型の金属のパーツ(カムと呼ぶ)が板バネによって固定されており、開くときは板バネで弾かれたカムが蓋にあたって音が出る。素人の考えではあるものの、化粧板と違ってカムが蓋を売って音がでる、というのは試作でも挑戦可能な気がした。

私の練り香水ケースは開閉音の心地よさに価値をおきたいと思っていたので、以上のことからデュポン式を諦めてジッポ式のギミックを採用することにしたのである。

音の構造として親指ピアノと呼ばれるカリンバも夢想してみた。あんな夢のある音が鳴るケースができたら面白いだろうにと思うのだが、それはいつかの挑戦に置いておきたいと思う。

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