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ある日突然、縁が切れた話②

私にとって2021年はたくさんのご縁があった年だったが、2022年はその反動か縁が切れた1年だった

自分の記憶を留めておくためにも、noteに文章として残そうと思う。
ちなみに前回はボランティアでの縁の切れ目について書いてみたので、宜しければまずは下記よりご覧頂きたい。

さて、今回はとある自治体との縁が切れた話を書いてみたいと思う。

とある山奥の小さな自治体との縁の切れ目

その自治体とのご縁は不思議なものだ。ご縁ってこうやってつながるのかと自分でも驚くほどに。
遡ると2021年。終わりの見えないコロナ禍で、私は会社に一つの提案をした。

それは「地方に居住しながらリモートワークをする」ということ。

私の会社はそこそこの知名度がある一方で、体質は昭和そのもの。転職でやってきたので、見かけと中身のギャップに戸惑うことが多々あった。

そんな中、それなりに自分の仕事を認めてくれている役員もおり、その役員に直談判する機会をもらったのだ。

「きっとこの会社は無理だろう」

そんな気持ちを胸に抱きながらダメ元で提案したのだが、あっさりOK。
早速候補となる自治体探しに取り掛かった。そして、とある友人を介してとある山奥の小さな自治体を紹介してもらったのだった。

どこまでも続く山々

聞いたこともない地名。地図で探してもどこだか見つからない。
知らなければ知らないほど、ワクワク、ドキドキしていたことが今でも昨日のことのように覚えている。

1日1便しかないバスに乗って、3時間。既に自宅を出てから半日が経っていた。
やっとのことでたどり着いた小さな町は、自分の理想郷だった。

すぐに地域の方々とも打ち解け、連日お酒を酌み交わして親交を深めた。

地元の食材を使った料理の数々

すっかりその町にハマり、その後何回も訪れた。

少しずつ感じる違和感

その町はワーケーションの利用者を増やそうと熱心に取り組まれていた。
ただ、物理的な距離というハードルからそこまで利用者は増えていなかった。

きれいなコワーキングスペースもあったし、ワーケーション利用者向けに提供してくれる宿泊施設があり、そこを利用させてもらった。

元々古民家だったところをリノベして、とても居心地の良い一軒家。
1人で泊まるには広すぎるくらいだが、1泊2000円で利用でき10泊以上したら更に安くなる。これには驚きだ。

初めて宿泊した時は、利用してみての改善点をレポートすることを条件に無料にして頂いたのだが、その宿泊施設を気に入り、それ以降は利用料を支払い1度訪れたら最大で1ヶ月ほど滞在したこともあった。

地元の木材をふんだんに使われている居心地の良い空間

2階建ての広い一軒家。退去時の清掃について役場の方に尋ねたところ「清掃が入るのでそこまでしっかりしなくて良い」とのことだったが、出来る限り現状復帰を心がけたつもりだった。

だが、その施設に戻る度に違和感があるのだ。

食器棚に「利用後は必ず元に合った場所に戻して下さい」
風呂場に「利用後は必ず換気扇をまわして下さい」
炊飯器に「利用後は必ず毎回洗って下さい」
コンロに「利用後は油跳ねを拭いて下さい」
洗濯機に「利用後は必ず糸くずフィルターを清掃して下さい」

至る所に注意書きがあるのである。

「いやいや、別にあなたのこと言ってるわけじゃないでしょ」

と思われる方もいるかもしれない。
そうだ。確かにそうかもしれない。ただ、地元の人に話を聞くとあまり知られていない施設で、そこまで利用者は多くなく何度もリピートするのは私くらいとのことだ。

なので、どうしても自分に対するメッセージなのか?
と勘ぐってしまうのだった。

そしてその内容に納得できるものもあれば、できないものもあるのだ。
例えば糸くずフィルター。そこを利用者に求めるのだろうか??
何のために清掃の人がいるのだろう。

宿泊施設のコンセプトとして「基本的に原状復帰。来た時と同様にして帰ってくれ」ということが前提であるならまだ分かる。だが、役場の人の最初のコメントと現状が異なるのである。

後々分かったのだが、清掃担当は最初にコメントをくれた役場の方の配偶者なのだ。

どうしても勘ぐってしまった。

決定的な出来事

たかがシールで気にしすぎかもしれない。
「自分のことではない」「自分とは関係ない」と割り切り、気にしなければ良いのかもしれない。

ただ、その宿泊施設を利用する度にシールが増えると正直不快だ。
(常識的に考えてそんなこと貼る?と思う内容だと尚更。)

そしてこの街と縁が切れる決定的な出来事があった。

昨年の春。

シールのことは気になりながら、またその町に行こうとふと役場のホームページを見た時だった。

なんと、利用条件が変更されているのである。

変更点は
①利用料金
②これまで無料で使用出来ていた公用車の有料化
③利用頻度

この3点だった。

正直なところ①と②については仕方ないとは言え、③が問題だ。

「村内でテレワークをする方(1泊から最大2週間ご利用可能※年間2回まで)」

これは私への当てつけではないか???

「全然長く使ってもらって大丈夫ですよ!」と役場の方からのコメントもあり、何度か長期利用をしていたのだが、そのような人は私くらいと聞いている。

そしてホームページにはこんな記載があった

・将来的に移住を検討している方(1泊から最大1か月までご利用可能)
・テレワークをする方(1泊から最大2週間ご利用可能 ※年間2回まで)
・地域貢献を目的に活動する大学生(1泊から最大2週間ご利用可能)

あれ?なんでテレワーク利用だけ回数制限があるのだろう?

ますます私の気持ちは乱れていく。

ここまで読まれてきた方は「この記事書いてる人は勝手だな」と思うかもしれない。自分自身、自認する部分もある。

だが、私がなぜモヤモヤするのか整理すると

■そもそも辺鄙な立地で利用者が少ない
これがたくさん利用者がいるのであれば、長期で何回も利用したら他の利用者の機会を奪ってしまうので分かる。だが、そんな稼働率も高くない。
(もちろん、将来的に増えることを見越して設定したのかもしれないが…)

■なぜワーケーション利用者だけ条件がつくのか
移住者については何となく理解が出来る。町にとっても移住して人口が増えた方が良いので、条件も緩いのだろう。
ただ、学生は利用回数制限がなく、ワーケーション利用者に回数があるのはなぜか理解できない。

そしてこれは求めすぎという自認も含め、あえて書くとしたら、シレっとホームページに書いていたことだ。

先にも触れたが、そもそもの利用者が少ない中で、これだけこの施設を複数回利用しているのは私くらいとのこと。
いわばリピーター。ビジネスで言うとロイヤルカスタマーだ。
それに役場の方々との距離も近く、LINEでやり取りをするくらいの仲だ。

求めすぎという自認があるが、せめて一言声をかけて欲しかった。

交錯する思い

ホームページで制度が変更されたことを受け、早速役場の担当に方にLINEを送った。

すると、私が期待する内容ではない回答が返ってきた。

燃料費が高騰して・・・利用者の声を反映して・・・

私の質問に、的外れな回答をのらりくらりと繰り返してきた。

これ以上やり取りしても無駄だな。

色んな感情が込み上げてきた。

ああ、もうこの町に来ることもないんだろうな。

親しくさせて頂いた地域の方々の顔を思い浮かべながら、とても寂しい気持ちになった。

冷静になって現実を受け入れ、年2回の中で利用すれば良かったという声もあるかもしれない。

実際に私自身もそうすれば良かったと思うこともある。

ただ、どうしても現実を受け入れることが出来なかったのだ。

初めてこの町を訪れた時「また第二の故郷が出来て嬉しいな。何ならここに小さな小屋でも立てて、週末通おうかな」と思うくらいの気持ちだった。

毎回何時間もかけて通う度に「おかえり!」と声をかけて下さる地元の皆さんに、また会いたいと思っていた。


こうやってあっさり縁って切れてしまうんだな。


時たまその町の風景を思い出しながら、そんな思いにふけることがある。

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