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関友美の連載コラム「いにしえの町の姿をとどめる倉敷美観地区と酒」(リカーズ8月号)

そうだ。日本酒を飲もう。十七杯目
「いにしえの町の姿をとどめる倉敷美観地区と酒」

そろそろ夏休みですね。帰省や旅行の予定はもう決まりましたか?
少し前のことになりますが、ゴールデンウィーク最終日を利用して、倉敷に行ってきました。倉敷市は、岡山県南部にある市。本州と四国を結ぶ“瀬戸大橋”がかかり、古くからの白壁蔵が残る「美観地区」があることでも有名です。

地名は、中世に年貢米や貢納物を領主へ送るため、周辺から集めて一度置いておく場所「倉敷地」だったことに由来するそうです。今も美観地区にずらりと残された蔵は、まさに年貢を保管しておく倉庫でした。物流の拠点として栄え潤い、豪商が誕生したことで立派な蔵の町並みは現世まで維持されてきたのです。…全部大好きなブラタモリからの受け売りですがね(笑)

 また干拓地なので米ができず、塩に強い綿花が栽培され、紡績工場が建設されました。なかでも児島地区は、1960年代に日本初のジーンズが作られた「国産ジーンズ発祥の地」であり、“ジーンズの聖地”と呼ばれています。美観地区から車で30分ほどの場所にあり、美観地区内にショップや支店を持つブランドも多いようです。私も「デニム研究所」というショップで、それはそれは素敵なジーパンと出会い、お買い物!毎晩抱いて寝たいほど大切な一品になりました。

 人や富が集まり賑わった場所――とくれば、もちろん地酒は付きものです。倉敷には、森田酒造場という日本酒「萬年雪」を製造する酒蔵があります。もとは畳表の問屋でしたが、地主として大坂方面に米を売り蓄えた財で、明治42年に酒造業をスタートしました。日本の一時代を現代に伝える、風光明媚な倉敷を守ってきた立役者のひとりです。

元は酒蔵の一部だったという、蔵の向かいにある焼き鳥屋で「萬年雪 荒走り」を吞みました。派手さはないですが、丸みがあって柔らかくて美味しいお酒でした。

ホームページには蔵全体のイラストと共に、各工程のこだわりが記されています。11月下旬より3月上旬までの寒造り、麹室(こうじむろ)は「室温35度、湿度83%」とのこと。今時の甘い吟醸酒というよりは、旨味や味わいのしっかりしたお酒を造ろうとしている姿勢がわかります。それを証明するように「私共の土俵は贅沢な大吟醸などではなく お父さんが一日の終わりに楽しんで飲む晩酌用の酒なのです」と蔵からのメッセージも添えられています。数こそ少ないですが、都会で見かけなくても美味しくて、その地で愛されている名酒はあります。森田酒造場は、事前予約で蔵見学ができるそうです。旅行の際にはチェックしてみて、より日本酒を身近に感じてください。

日本酒「萬年雪」醸造元の森田酒造場
川沿いの柳並木が美しい倉敷美観地区。
白壁の蔵屋敷、なまこ壁
お兄さんがフレンドリーで親切で、素敵なジーンズを購入できた「デニム研究所」。また行きたい。


今月のピックアップ酒蔵

辻本店(岡山県)

文化元年(1804年)創業、美作勝山藩御用達の献上酒を造ってきた歴史ある酒蔵。そこから「御前酒」という現在の銘柄が付けられた。明治~昭和期に当主が文人との付き合いが盛んで、与謝野鉄幹、晶子夫妻が滞在したことも。
姉・備中杜氏の辻麻衣子氏が醸造責任者(杜氏)、弟の総一郎氏が社長を務めている。全量地元の雄町米を使用することを目指し、地元産業を守るためにも農業に目を向けた取り組みに尽力している。

以上

庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」8月号より

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