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マイ・フェイバリット・ソングス 第28回~クイーン

(2020年8月)

QUEENは大学生の頃によく聴いていました。というかその頃に聴きすぎて、社会人になってからはあまり聴かなくなってしまったんですよね・・・。今回久しぶりに聴きなおしてみます。


『QUEEN』(1973年)

デビューアルバム。当時は酷評されていたそうですが、このバンドが花開く前の萌芽が存分に楽しめるアルバムですよね。「Great King Rat」も「Liar」も「Jesus」もフレディ・マーキュリーのただならぬ才能を既に匂わせています。このアルバムだと僕はブライアン・メイの「The Night Comes Down」が一番好きですね。ブライアンのギターもフレディのファルセットも美しい。初期作品は歌詞カードに「...and nobody played synthesizer」的なことが明記されているのですが、最初に聴いたときは信じられませんでしたね。このサウンドでシンセサイザー使ってないの!? と。ギター・オーケストレーションという手法でオーバーダブしているらしいのですが。


『QUEEN Ⅱ』(1974年)

クラシックやプログレの要素がより色濃くなった2nd。僕はこのアルバムが一番好きです。学生の頃夢中になって聴いていましたね。ブライアンの曲中心のA面(サイドホワイト)とフレディの曲のみのB面(サイドブラック)という構成でどちらも組曲的になっているんだけど、このB面を初めて聴いたときは衝撃的でした。B面最初(CDでは6曲目)の「Ogre Battle」の前奏がかかった瞬間何かとんでもないことが始まった! という感じになるんですね。そこからひとつながりで「Funny How Love Is」まで一気に持っていかれます。「The March of the Black Queen」はその一曲の中でも組曲的になっていたり、とにかく構成が素晴らしい。一拍置いてからかかるラストの「Seven Seas of Rhye」は前作に収められていたインストにボーカルを加えて仕上げた完全版。とにかくこのB面は悪魔的な美しさに満ちています。というわけで、どうしてもB面のインパクトが強くてそっちに注目してしまうんですが、A面の「Father to Son」や「White Queen(As It Began)」もカッコいいですね。


『Sheer Heart Attack』(1974年)

ここからジョン・ディーコンも作曲に加わり、四人全員が作曲者に。前作が凝った作りのコンセプトアルバムだったから、これはわりとオーソドックスな印象があったんですが、改めて聴くとけっこう攻めてますよね。ただ前作が悪魔的・耽美的だったのに比べるとこのアルバムはどこかポップな明るさが漂っているように感じます。キャッチ―で聴きやすい曲が多い。「Killer Queen」とか「Bring Back That Leroy Brown」とか楽しくなる曲ですよね。ハードな「Brighton Rock」「Stone Cold Crazy」も、フレディらしさに溢れた「Flick of the Wrist」もカッコいいですね。


『A Night At The Opera』(1975年)

クイーンの代表作のみならず、ロック史上に燦然と輝く名盤ですね。劇場をモチーフにしたコンセプトアルバム。A面は四者四様の個性が結晶し合っていて楽しく、B面はブライアンとフレディの才能が拮抗し合っていて緊迫感があります。まず冒頭フレディから元マネージャーへ罵詈雑言を投げつける「Death on Two Legs」に圧倒されます。続く「Lazing On A Sunday Afternoon」は打って変わって軽快なミュージカル調の曲。ロジャーのヘヴィな「I'm In Love With My Car」、ジョンが作ってシングルヒットとなった「My Best Friend」などバラエティに富んだ楽曲が矢継ぎ早に続く。後半は複雑なコーラスワークの「The Prophet's Song」や、フレディのピアノとブライアンのハープが印象的なバラード「Love Of My Life」や、ポール・マッカートニーが作ったんじゃないかってくらいビートルズっぽい「Good Company」などにうっとりしているうちに、化け物的な名曲「Bohemian Rhapsody」へとなだれ込む。6分に渡る(元々は16分あったらしい)壮大でドラマチックな展開の曲。メンバー三人の声をダビング技術を駆使して180人分の大コーラスにするという度肝を抜く手法が使われています。このアルバムも「No Synthesisers!」と銘打たれているけれど、クイーンのサウンドやコーラスは手間の掛け方が尋常じゃないですね。そしてラストはオペラで終幕時に演奏されるしきたりにならってイギリス国歌で締めるという構成。ちなみにジャケットはメンバー4人の星座を盛り込んでフレディが描いたものです。


『A Day At The Race』(1976年)

タイトルやジャケットが示しているように前作と対になったアルバム。ただこちらはコンセプト性があまり強くなく、サウンドもクイーンにしてはかなりシンプル。前作を絶賛しておいてなんですが、僕はこのアルバムの方が好きです。完成度は前作の方が高いとは思うけど、こっちの方が個人的に好きな曲が多いんですよね。まずフレディのピアノと歌声が美しい「You Take My Breath Away」。歌詞もメロディもなんて切ない曲でしょう。フレディの個性溢れる軽快なワルツ「The Millionaire Waltz」。お洒落で上品なメロディですね。代表曲の中でも僕が特に好きな「Somebody To Love」。フレディの歌の上手さにしびれます。そしてロジャーが作曲して自ら歌う「Drowse」。地味だけど僕はこの曲大好きです。ロジャー・テイラーはビートルズで言えばジョージ・ハリスンみたいに作曲家としては3番手的な存在だと思うんだけど、彼の作る曲はことごとくいいですよ。そして、ロジャーの曲はロジャーが歌ってこそなんですよね。フレディが歌ったらこの良さは出ないと思う。中でもこの「Drowse」はロジャーの最高傑作じゃないかと個人的には思います。ラストの「Teo Toriatte(Let Us Cling Together)」は、サビを「手ヲ取リアッテ~」と日本語で歌っていて、親日家のクイーンが日本に捧げてくれたような曲ですね。


『News Of The World』(1977年)

全体的にシンプルなサウンドで、これまでのクイーンに比べるとかなりオーソドックスな曲が中心。従来の狂気じみた感じを期待しているとやや肩透かしをくらうかもしれません。(「No Synthesisers!」」の表記もこのアルバムからなくなります。)その後の多くのアーティストに影響を与えた「We Will Rock You」はブライアン・メイの功績ですね。「ドンドンダッ」のリズムはドラムもベースも使わず、足踏みと手拍子をオーバーダブしています。この曲は次の「We Are The Champions」とワンセットになっている感じがありますね。ライブなどでもラストにこの二曲を続けて大団円を迎えることが多いので。4人の曲がほぼ均等に配されていて、バンドとしての平均値の高さを示しているアルバムとも言えます。



『JAZZ』(1978年)

独特な曲を作るフレディの中でも特に変わり種の二曲が入っています。まず冒頭の「Mustapha」。これは「アラビア風のロックをやったらどうだろう」と思いついたフレディが響きの気に入ったアラビア語を羅列して作ったというメチャクチャな曲なんですが、とんでもなくカッコイイんですよね。一度聴いたら忘れないインパクト。こんな曲他に誰が作れるだろう。フレディのボーカルも素晴らしいけど、途中から入るブライアンのギターにも痺れます。もう一つは「Bicycle Race」。これもすごく変な曲だけど、最高に楽しいですね。詞はビートルズの「Hello,Goodbye」を意識して書いたのかな。「ジョーズ」「スターウォーズ」「ピーターパン」「フランケンシュタイン」「スーパーマン」などが出てくる面白い歌詞。他に「Let Me Entertain You」や「Don't Stop Me Now」もいいけど、僕はなんといっても「Jealousy」が好き。フレディの作るバラードはことごとく美しいですね。


『The Game』(1980年)

初めて本格的にシンセサイザーを導入し、ひとつの転換点となったアルバムですね。初期のクイーンは大作主義で、重厚なコーラスで、複雑な曲展開で、ノー・シンセサイザーで・・・だったのが、このあたりにくるとだいぶ変わってきていますよね。このアルバムはフレディの名バラード「Play The Game」で始まり、ブライアンの名バラード「Save Me」で終わるという構成。僕はこの二曲が好きです。マイケル・ジャクソンに提供するために作られたディスコ風の「Another One Bites the Dust」は、マイケルは気に入っていたもののクインシー・ジョーンズが渋ったため実現せず、結局クイーンのシングルとしてリリースされ初の全米No.1を獲得しています。この曲はフレディがマイケル・ジャクソンっぽい歌い方をしてるように聞こえますね。あと「Crazy Little Thing Called Love」は曲調も歌い方も完全にエルヴィス・プレスリーを意識していますよね。この二曲が全米No.1となり(いかにもアメリカ人が好きそう)、アルバムもアメリカにおいてはバンド最大のヒットとなりました。


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『Hot Space』(1982年)

このアルバムはシンセサイザー全開で、ブラックミュージックやディスコミュージックの要素が強い。80年代はどうしてもこういう音楽の傾向になりますね。初期のクイーンとはまるで別のバンドのよう。1980年に射殺されたジョン・レノンに捧げた「Life Is Real(Song For Lennon)」という曲が入っているんだけど、曲調も歌い方もレノンを真似ていますね。似せ方が巧みで、フレディはこういうところも器用だなあと感心します。デヴィッド・ボウイと共作共演した「Under Pressure」という曲もあります。このアルバムの頃はバンドメンバーの関係性があまり良くなかったみたいですね。


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『The Works』(1984年)

バンドメンバーの関係性修復のため休息をとったり各自の活動に専念したりした後、再結集して作られたアルバム。これは少し前の(『The Game』くらいの)音楽性に戻っていますね。冒頭の「Radio Ga Ga」が久々にシングルヒットしてるんだけど、僕はこの曲の良さがいまいち分からないんですよね。すごく人気のある曲なんだけど。同じくシングルの「I Want to Break Free」もいまひとつ・・・。このアルバムで僕が好きなのはフレディの「It's A Hard Life」とブライアンの「Hammer to Fall」でしょうか。ラストのアコースティックギターが美しい「Is This The World Created?」もいいですね。「Man On The Prowl」ではまたフレディがエルヴィス・プレスリーっぽく歌っていますね。


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『A Kind of Magic』(1986年)

1985年の「ライヴエイド」出演によって険悪なムードを脱出し、再びバンドの結束が固まった時期に作られたとのことですが、個人的にこのアルバムで好きなのは「Friends Will Be Friends」くらいかなあ。フレディとジョンが共作したメロディアスな曲。全体的に少しロックっぽさも戻ってきていて、冒頭の「One Vision」の出だしのギターなんかもカッコイイですね。


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『The Miracle』(1989年)

このアルバムはあまり好きな曲がないですね。残念ながら80年代のクイーンはあまり僕の好きな音楽ではありませんでした。この時期のクイーンが好きという人ももちろんいると思いますが。ちなみにフレディがエイズに感染していることをメンバーに打ち明けたのはこのアルバムのときと言われています。(映画「ボヘミアン・ラプソディ」でライヴエイド前に告白しているのは脚色だと思われます)


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『Innuendo』(1991年)

リリースして10ヶ月後にフレディ・マーキュリーが亡くなってしまったため、実質的にはこれがラストアルバム。これはすごくカッコイイです。『Hot Space』以降のクイーンはポップになりすぎてしまって、正直僕はあまり熱心に聴いてなかったんだけど、このアルバムはよく聴いていました。原点回帰的なところがあるんですよね。特に表題作の「Innuendo」は、久々に初期のプログレ感やクラシック感が盛り込まれていてシビれます。間奏で印象的なフラメンコ・ギターを弾いているのは、なんとイエスのスティーヴ・ハウ。このギターがめちゃくちゃカッコイイんだけど、そのリフを後半ブライアンがエレキギターでなぞるという展開がまた素晴らしいんですよね。そして終盤のヘヴィな「The Hitman」、ギターが美しい「Bjyou」、壮大な「The Show Must Go On」の流れも好きです。僕が好きな初期のような作品をまだまだ作れることが証明されたタイミングだっただけに、これがラストアルバムになってしまったことは残念でなりません。でも、クイーンの音楽はずっと愛され続けてますよね。2018年に映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしたこともその証のひとつじゃないでしょうか。


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『Made In Heaven』(1995年)

フレディが亡くなって4年後にリリースされたアルバム。セッション時に残された音源や過去のアウトテイクやフレディのソロ曲を元にメンバーがオーバー・ダビングして作っているんだけど、それにしては見事な出来栄えでまるでフレディが生きているみたいです。しかもここに収録されている曲はどれもいいですね。メジャー曲「I Was Born to Love You」は、1985年にフレディが発表したソロアルバム『Mr. Bad Guy』に収録されていた曲だけど、原曲が打ち込みのダンサブルな曲なのに対してこちらはバンドサウンドとしてロックテイストに仕上げられています。こちらの方がずっとカッコイイ。表題曲「Made In Heaven」も同ソロアルバムからの曲で、この二曲が僕は特に好きです。結果としてこのアルバムは全世界で2000万枚のセールスとなり、『A Night At The Opera』の1000万枚をはるかに超えて最大のヒットとなりました。フロントメンバーの死後にリリースされたアルバムが最高の売り上げになったバンドなんて他に聞いたことないですね。


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