見出し画像

<日本灯台紀行 旅日誌>2022年度版

<日本灯台紀行 旅日誌>

第14次灯台旅 能登半島編

2022年10月-12.13.14.15日

#2 一日目(2) 2022-10-12(水)曇り

道の駅氷見 車中泊

13時半過ぎになっていたようだ。8号線を富山方面へ向かう。広い道で走りやすいが、延々と続く。魚津、黒部、滑川、やっと富山市に入る。市街地にある二か所の展望台は、時間的に寄るのが無理っぽい感じ。それに、なにしろ曇り空だ。パスしよう。富山市は、車から見ただけだが、大きな町だった。さらに、高岡市を通過、ここも大きな町だ。さらにさらに行くと、道路標識に、目的地の氷見の文字が見えてきた。

ナビに従い、氷見の長いアーケード商店街を通り過ぎた。この商店街は、驚くほど長い。それに、全体的に白くて、水色のアクセントがあるのできれいだった。商店街を抜けると、海が見えた。大きな橋を渡ると、左手に、道の駅氷見が見えた。

15時半頃には、目的地に到着したようだ。まだ明るい。予定通りだ。気分がいい。駐車場は広くて、車がたくさん止まっていた。まずはトイレの下見だな。駐車場が広い割には、トイレは狭かった。もっとも、これだけ広い施設なのだから、おそらく右端の方にもあるのだろう。施設の中をぶらぶら見て回る。寿司屋もあるが、人が入っていない。フードコートじゃ食べる気がしない。土産物のほかに、鮮魚や、魚の揚げ物なども売っていたが、意外に高い。

ここで食べるのはやめにして、下調べしていた、場外市場食堂へ行く。ところが、市場に入っても、それらしい店が見当たらない。奥まで入り込むが、行き止まり。ところどころに、案内用の安っぽい幟が立っているのだが、場所が見つからない。閑散としていて、人の姿もまったくない。これは、諦めるしかないだろう。

場外市場の向かい側にファミマがあった。これも下調べしておいたのだが、あそこで夕食だな。シュウマイ弁当、おにぎり、菓子パンなどを買って、店内で食べる。腹が空いていたせいか、どれもみな、わりとうまかった。それに、髪の毛を染めた店員の愛想がよかった。パートの中年女性だが、これはちょっと意外だった。

さてと、飯は食ったし、このまま、道の駅に戻って車中泊するにはまだ早すぎる。来る時にも気になっていた、道の駅の向かい側にある<氷見公園>へ行くことにした。さほど広くもない駐車場だったが、トイレもあり、キャンピングカーなども止まっている。なるほど、ここでも車中泊ができそうだ。

外に出ると、広い芝生広場の先に、大きな見晴らし台が見える。公園は、海岸際にあり、防潮堤できっちり仕切られていた。海の中には小島<弁天島>があり、白と赤の防波堤灯台なども見える。さらに奥の方には氷見漁港が見える。広々していて、いい景色だ。

芝生広場の周囲は遊歩道になっていた。そろそろ歩いて、見晴らし台に近づいた。近くで、まじまじと見上げた。だが、なんというか、ちょっと変わった形をしている。屋根はなく、幅広の階段とその先の平らになった通路というか展望スペースが、宙に浮いている感じだ。

これは物理的には不可能な構造なので、通路のような展望スペースにも支点があるのだろう。それは、四本の鉄柱を四角錐形に組み合わせたもので、各辺の中央の四隅で、展望スペースを支えているようだ。ただ、横から見ると、四角錐の面にあたる、縦長の二等辺三角形の真ん中辺を、展望スペースが水平に横切っているだけなので、非常に不安定に見える。

登る。かなり高い。四階建てくらいの高さはある。階段が、心なし、揺れているような気がする。登り切った所は、階段幅を、そのまま延長した形の、長方形の展望スペースになっていた。海側の見晴らしはいい。だが、歩くと、確実に揺れる。看板があり、強風の際は揺れるので利用しないで下さい、とかなんとか書いてあったような気がする。やはり見た感じと同じで、構造的にも不安定なのだろう。

通路というか展望スペースは、もちろん階段も、柵で囲われていた。行き止まりの柵まで行って、周りを見回した。磁石でをたしかめると、真東に向かっている。ということは、正面の水平線から陽が昇るということだ。明日の朝、朝日を撮りに来ようと思った。しかし、あとでわかったことだが、正面は立山連峰だった。したがって、朝日は水平線からではなく、山の上から出てくるわけだ。この時は、曇っていたせいで、よく見えなかったのだ。

17時半、道の駅に戻る。夕暮れ時だった。西の空が、真っ赤に燃えている。夕焼けがきれい、という感じではない。家並みが黒いシルエットになっていたからだろうか、即座に、空襲を想起した。空襲に遭遇したこともないのにね。やや興奮して、最初は車の中から、さらには、外に出て写真を撮った。

ひと段落して、さてと、寝る準備をしよう。車の窓に、日除けシェードを張り巡らし、スウェットに着替えた。そのあと歯磨きをして、すすぎ水を二重にした薄いビニール袋に吐き出した。漏れないようにぎゅっと縛って、ごみ入れ用のレジ袋に入れた。車の中は、わりと暑かった。それに、まだ寝るには早すぎる。掛け布団の上に寝転がり、ノートパソコンから音楽を流した。今日の出来事を手帳にメモ書きした。

おっと、その前に、へんなオヤジに、話しかけられたのだ。燃える空を撮ったあとだったと思う。馴れ馴れしく、にこにこしながら、まるで知り合いかのような感じで話しかけてきた。大きな声で、圏央道がどうのこうの、北関東道路がどうのこうの、大宮の交通博物館に行くとか、湘南方面へは、圏央道を使った方がいいのだろうか、などと何を聞きたいのか、ちょっと訳が分からない。もっとも、こちらも忙しいというわけではない。好意的な人間を、無碍に扱うわけにもいかず、話を聞く。十分くらい話したかもしれない。

そのあと、再度車の中に戻り、ためしにと、携帯で車をロックした。メモ書きの続きを書いたのかもしれない。少したって、今度は、車のロックノブを内側から手でひっぱって、あけようとした。すると、いきなり、クラクションが鳴り始めた。これは、冷や汗ものだった。すぐに車の外に飛び出した。無我夢中で、ドアを開閉したら、何とか鳴り止んだ。あたりをそっと見まわした。文句を言ってくる人間はいなかった。そのあと、携帯で車を操作するのが怖くなった…携帯でロックしたのだから、携帯で開けるべきなのだ。

そのうち、メモ書きも終えて、眠ったのだろう。夜の八時頃、目が覚めた。小腹が空いた感じで、菓子パンなどを食べた。そのあとは、またすぐ寝たようだ。消燈後は、一時間おきに小用で起きた。その都度、おしっこ缶からペットボトルへと、飴色の液体を移しかえた。めんどくさいとは思わなかった。かなり慣れてきて、膝立ちしながら、手際良く処理した。

夜中の十二時過ぎに、また目がさめた。と、どこかで、アイドリング音が聞こえる。気になって、耳栓をする。だが、微かなので、そのうち止めるだろうと思ってすぐに耳栓を取る。耳栓はうっとうしいのだ。ところが、一向に、エンジンを切る気配がない。どこのどいつだ!斜め後ろに止まっている、黒い軽バンで、計器類の明かりが微かに見える。

結局、一晩中、エンジンをかけっぱなしだった。そして、なぜか、夜が明けると、早々に引き上げていった。空っぽになった空間の路面に黒いしみができている。しらけてしまった。朝の駐車場にクーラントの匂いが充満しているではないか。常識のない、ガキめ!窓越しに、ちらっと、二十歳前後の若造の姿が見えたのだ。車の中にまで、クーラントの匂いが入ってきた。駐車場は広いのに、なんで、俺のそばに来たんだ!まったくもって、運が悪い。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?