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<灯台紀行・旅日誌>2020年度版

<灯台紀行・旅日誌>2020福島・茨城編#9
ホテルに宿泊

辺りはうす暗くなっていた。車に乗り込んで、ナビを、今晩泊まるホテルにセットしたと思う。小名浜の市街地だ。走りだして、燃料メーターが、短くなっていることに気づいた。たしかに、昨日今日だけで400キロ以上走っている。帰宅する前に、どこかで給油しないわけにはいかない。それに、コンビニで食料の調達だ。

塩屋埼灯台や海辺からも遠ざかって、小名浜へと向かう広い道路に入った。ガソリンスタンドがあれば、値段的なことは考慮しないで、入れるつもりだった。むろん、地元の埼玉より高いのは決まっている。だが、高速のスタンドよりはましだろう。と、長い下りの坂道だ。フロントガラスの向こうには、市街地の明かりが見える。うまいことに、左手にスタンドが見えた。リッター¥139の看板も出ている。

すっと車をスタンドの中に入れた。給油位置に寄せると、日に焼けた短髪のあんちゃんが、誘導してくれた。<セルフ>ではないのだ。窓を開けて、ちょっと考えて、満タンで、と言った。そのあと、何となく車の外に出た。アンちゃんが、窓を拭いてもいいですかと言いながら、室内拭きを渡してくれた。ニコニコしている。バンパーにくっついている虫の死骸などを拭いていると、高速走って来たんですか、と気安く声をかけてきた。そのあと、少し会話した。

自分が車で観光していることを知ると、あんちゃんは、羨ましそうに、いいですね~と言った。その顔に、まだあどけなさが残っていた。この先にコンビニはあるかと聞くと、丁寧に教えてくれた。純朴で、親切だ。最近は、めったに出会うことのなくなった若者のタイプで、気持ちが和んだ。

坂を下り終わると、小名浜の市街地に入った。なるほど、コンビニが目の前にあった。車を止めて中に入った。弁当や菓子パンなどを買って、レジに行った。レジ袋は、と言われたので、車から取ってくるといって、その場を離れた。その際、お弁当はあたためますか、とレジの女の子がきいてきた。どことなく伏目勝ちの、まじめそうな、額の秀でた、大柄な女の子だった。言葉遣いには、優しさがあり、親切な感じがした。

そういえば、昨日のコンビニの女の子もそうだった。一見愛想がないように見えるが、そうではなく、奥ゆかしさというか、東北人特有の、いや、それに加えて、若い女性にありがちな<はにかみ>なのではないのだろうか。なんとも言えない上質な色気=エロスを感じる。幾つになっても、スケベな爺さんだ!何となく得をしたような気分になって、店を出た。

ホテルには暗くなる前に着いた。片側二車線の広い道路に面していて、出入り口前に、車が数台止められるようになっている。幸い、空いていたので、何回が切り返しして駐車した。外に出て、なんとなく見まわすと、隣が平場の駐車場になっているような感じ。それに、道路のはす向かいに、コンビニがあった。

車の中に身をかがめ、ぐずぐずと、部屋へ持っていく荷物などを整理した。疲れているのだろうか、行動が遅い、動作が鈍い。よいしょとカメラバックを背負い、受付へ行った。狭いロビーで、受付カウンターも小さめ。黒い服を着た若い女性が二人いて、そのうちの一人が応対してくれた。ま、ビジネスライクで、一通りの説明だ。コロナ関連の書面に署名して、支払いをした。その際、車はどこに止めたのかと聞かれた。出入り口の向こうを指さした。すると、駐車代が¥500かかりますと言われた。ええっと思ったが、<Goto割り>で、それでも一泊¥4434だった。

駅に近いビジネスホテルでは、立地の関係なのだろう、駐車料金を取ることがよくある。だが、ここは駅前ではないし、解せぬことではあるが、楽天トラベルでのネット予約の際、その旨記載されていた。文句を言う筋合いではない。はいはいと言って、鍵だったか、カードだったか忘れたが、受け取って、受付を済ませた。最後に、受付の横の棚を示され、パジャマを持って部屋へ上がるように言われた。

実を言うと、昨日応対してくれたホテルの受付の女の子と、今日の受付の女の子の顔が、というか印象がごちゃごちゃになっていて、分別できない。どちらも、黒い服を着て、アクリル板の向こうに居たし、口調も似通っていて、説明内容もほぼ同じだった。共通項が多すぎるということもあるが、この時間帯、こっちは疲労の限界にあり、注意が散漫になっていたのだろう。ま、それにしても、双方ともに、そっけない応対ではあったが、嫌な感じは全然しなかった。

部屋に入った。狭苦しい感じだ。サンダルを脱いで、アメニティーの、使い捨ての白いふにゃふにゃスリッパを探した。あるはずだと思い込んでいる。たが、ない。ないわけはないのだからと、少し考えた。そうか、パジャマ置き場の棚だ。自分で持ってこなければならなかったわけだ。ま、取りに行くのも面倒だな。靴下を脱いだ後は、はだしのままでいた。

その後は、着替え、荷物整理、弁当を食べ、風呂。ノンアルビールを飲みながら、ノートにメモ書き。撮影写真のモニター。それから、明日の予定をちょっと考えた。六時起床、七時出発。高速に乗って、日立灯台へ向かう。ここから、一時間くらいだろう。…何か、忘れ物をしたような感じだった。はっと、思い出した。そうだ、小名浜にもう一つ撮るべき予定をしていた灯台があったのだ。

とっさに、名前が出てこなかった。スマホでガチャガチャ調べだした。小名浜港の北東に岬があり、その一帯が公園になっていて、<いわきマリンタワー>などもある。その三崎公園の中に、<番所灯台>がある。そうだ、思い出した、番所(ばんどころ)灯台だ!

とはいえ、日程的に調整できるのか?明日の午前中は、<番所灯台>を撮って、移動、午後からは日立灯台を撮る。そして、翌日の帰宅日に、午前の日立灯台を撮る、という手がある。こうなると家に帰るのは午後遅くになる。帰宅日は<帰るだけ>、となんとなく決めていたので、ちょっと引っかかる。あるいは、<番所灯台>はパス、明朝、即移動して、午前中から日立灯台を撮る、という手もある。

<番所灯台>?今一度スマホで、画像検索した。まあ~難しいところだ。というのも、ついでにちょこっと寄れるのならば、当然、お寄りさせていただく灯台クンだ。だが、わざわざ、あるいは、日程を変更してまで、撮りに行くべきなのか、決断がつかない。ロケーションがイマイチなのだ。それに、そもそも、当初の予定は、どうだったのだ?いや、当初から、三日目の午前中に撮る予定だったのではないか?なんだか、よくわからなくなってきた。

疲れていたんだろう、<番所灯台>は次の機会にしよう、ということに何となく決着したようだ。いや、メモ書きは<7時すぎにはねるつもり 備 小名浜 マリンブリッジ 番所灯台>で終わっている。何のための備考なのか?やはり、番所灯台へ行くつもりだったのか、今となっては、推測することさえできない。

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