京都府内の石造物②:為因寺宝篋印塔

名称:為因寺宝篋印塔

伝承など:なし

所在地:京都府京都市右京区梅ケ畑奥殿町 為因寺


紅葉の名所として知られる高雄や栂尾をやや下った所に為因寺と言う小さな寺があり、その庭に異様な存在感を放つ一基の宝篋印塔がある。

在銘宝篋印塔としては日本で四番目(説によっては五番目)に古く、文永二年銘を刻む。

初期の宝篋印塔は、特色や作製した石工集団によって大和地方と山城・近江地方に大きく分けられるが、この石塔は山城地方の初期宝篋印塔の代表格と言える。

まず目を引くのが異様なまでに大きな隅飾りであるが、この大型の隅飾りこそがこの地域の初期宝篋印塔の最大の特徴である。

隅飾りのことを「馬耳状突起」と言う人もいるようだが、この宝篋印塔の隅飾りはまさしくその表現がぴたりとはまるような大きさである。

この隅飾りの大きさと、基礎部分が欠損していることで、一見アンバランスにも思えるが(ちなみに相輪も後補である)、それでいて重厚感と優美さを備えた日本の石造美術の中でも屈指の傑作と言える。

私は数ある宝篋印塔の中でもこの為因寺塔が最も好きであり、それがここで古式宝篋印塔を紹介するに際し、一番ではなく敢えて四番目に古い在銘塔であるこの石塔を真っ先に上げた理由である。

ちなみに、この為因寺の宝篋印塔とほとんど同じ形式の宝篋印塔が二基、栂尾の高山寺に存在する。

地域的にも近いため、同一の石工集団によって造立されたものであろうが、そちらは無銘塔でありながらさらに遡る年代の造立と推定され、現存の宝篋印塔では最古の作例と考えられている。

ただ、高山寺塔は二基とも開山の明恵上人廟の敷地内にあって、塀越しに遠目に見られるだけであり、近づいての写真撮影は出来ない。


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